セカイの周縁

世界の中心から遠く離れた縁っこで、細々と生きている―そんな日常の中でアンテナにひっかかったモノゴトを。

太宰治『皮膚と心』

2005-02-01 20:34:13 | よもやま
私が今まで、おたふく、おたふくと言って、
すべてに自信がない態を装っていたが、
けれども、やはり自分の皮膚だけを、それだけは、こっそり、いとおしみ、
それが唯一のプライドだったのだということを、いま知らされ……。

ちくま文庫「太宰治全集3」より


自分の器量がよくないことや父親を亡くしていることなど、
自分の人生の「不幸せなこと」について嘆き悲しむ28歳のヒロイン。

ある日突然、体に吹き出物ができ、それがひどくなって初めて、
自分は「すべてに自信がなかった」のではなくて、
自分の中でそれなりに愛し、誇りに思っていた部分もあったのだ
ということに気づく。この彼女の気づきが愛しい。

心のスポットライトが、
自分の持ち得ないものに当たっているか、
自分の持っているものに当たっているかで、
人生の明暗が大きく分かれるように思う。

幸い、彼女の吹き出物は、大した症状ではないという
医者の見たてであった。
この先の彼女の人生が、幸多いものであることを祈る。

そして私も、もっと「自分の持っているもの」に
スポットライトを当てて生きようよ。
それが自分を「慈しむ」ということではないだろうか。


一週間ほど前に観た「ハウルの動く城」でも、
女性の容姿コンプレックスについてふれられていて、
偶然読んだこの作品も同じようなテーマだったので、
何だか「意味のある偶然」を感じた。

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3 コメント

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現国2ですが・・・; ()
2005-03-12 15:24:57
この作品は「皮膚=プライド」でプライドの崩れやすさ等を描き作品を通してプライドなんてどうでも良いじゃんって作者が呼びかけてるようにワシは感じてましたが、見聞が広がりましたw。太宰文学は深くておもしろいww。
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コメントありがとうございます (seka-_-)
2005-03-12 16:24:48
太宰文学はおもしろいですね。

若い頃はとにかく、彼の苦悩に共振して引きずり込まれるように読んでいましたが、

その後年月を経て、あらためて、この人の文体も好きだなぁと思いつつ、また最近少しずつ読み進めています。

全作品読破にはまだまだ遠いですが、これまで読んだ中では『黄金風景』もかなり好きでした。

太宰のピュアな部分があふれているような作品でした。
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いえいえ; ()
2005-03-12 23:24:34
この頃のストーリー重視の話もおもしろいですが、ワシも色々考えさせてくれるような太宰治なんかの文学はおもしろく好きです。しかし前途のように現国2のような赤点男なので少しでも難しくなると・・・;。ってことで自分的に太宰文学は馬鹿にも解りやすい上、古本屋で手に入りやすい(ワシには大事?!w)斜陽がお勧めですw。黄金風景といえばお得意の過去を題材にした話でしたよね、色々深いモノもありワシは人間失格とかあとがきにある彼の半生を読んでやっと理解できるような作品だった記憶があります;。本を読む量と読解力は必ずしても比例しないんだなぁと思う日々・・・(爆。
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