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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

だんだん「教育基本条例案」に対する説明が混乱してきましたね。

2012-01-11 06:51:40 | ニュース

http://www.youtube.com/watch?v=JbycO-Gblc8

橋下市長や松井知事の出るテレビ番組は極力見ない、なおかつ、大阪維新の会の「広報」のようなテレビ番組や、彼らのお仲間タレントの出る番組は極力見ないということに今はしているのですが、ツイッターや電子メールなどで、私のところにもいろんな彼らのテレビでの動きに関する情報が入ってきます。

それで、上のユーチューブの動画。これは今週月曜日(2012年1月9日)の毎日放送のテレビ番組に橋下市長が出演したときの「教育基本条例案」についてのコメントです。さっそく、これだけは私も見ておくことにしました。

感想を今の時点で一言だけ言っておくと、「ああいえばこういう」という形で、アナウンサーからのさまざまな質問をはぐらかしているだけ。饒舌にいろんなことを語っていますが、質問されたことに対して、肝心のことについては何も答えていないような印象です。むしろ、答えられないがゆえに、饒舌に「ああいえばこういう」形でごまかしている、とすらうかがえます。

たとえば「条例が通ったときに、市長として教育の目標をどう設定するのか?」という話を振られたときに、具体的なことは何も答えていない。「各学校ごとに定める」と書いていると逃げているか、「国際社会でも就職できる、自立できる子ども」「大阪でメシが食える子ども」というだけ。この後者の話であれば、「あのね、わざわざ教育基本条例つくる必要がどこにあるの?」というだけのことです。

しかもこの程度のことを「首長が選挙で教育について語っているのに、何も目標設定できないのはおかしい」というべきことか。首長が教育委員会と協議して、「こういうことをやってほしい」と伝えれば済む程度でしょう。それこそ、今の学習指導要領にせよ、中教審の答申にせよ、「知識基盤社会」なる言葉を使いながら、グローバリゼーションに対応する教育をやろうとしている面があるわけですから、「あなたが首長としてあらためて言うまでもなく、日本の学校はそっちに教育をシフトしようとしてますよ」とすら言えるわけです。(もちろん、その方向性自体が「ほんとうにいいのか?」という論点もあって、私もそう思っているのですが)

もっといえば「大阪でメシが食える子ども」うんぬんの話は、それこそ、たとえば市長として橋下氏が若者の雇用政策をどうとっていくのか、さらに、雇用政策をとっていくために、中小企業の振興策をふくめた経済政策をどうとっていくのか。そこで市長としてがんばればいい、むしろ学校教育の外で子どもや若者の自立を支援する施策をとればいいわけで、なにもそれだけで学校に対する基本条例をつくる必要はありません。

公立学校の間にも学力格差があるとか、だから学校選択を導入して、という話についても同じ。彼の話は、まったく説明になっていない。なぜなら、学校施設の整備や教員加配、教育予算の重点的な投入など、条件の悪い学校の教育環境をもっと整備することによって、その格差を埋めていくという道もある。なぜ学校選択でないといけないのか、ということについては、あいまいにはぐらかしています。要は学校に、教員に財政支出をしたくない、学校の数や教員の数を減らしたいだけでしょう、と彼は突っ込まれたら、どう答えるのでしょうか。

教員評価の問題も同じ。とにかく何か教員をやめさせることができるしくみをつくりたい、それに沿って、何か合理的な根拠があるかのような形式を整えたいということが、彼のホンネのようです。なにしろ彼はこの番組のなかで、「子どもが学校で評価されるのをやめたら、教員評価もやめる」というような発言もしていますが、「だったら、東井義雄にならって通知表の改善をすれば?」とか思ってしまいますね。なにしろ朝日新聞の年明けの連載を見る限り、市長のアドバイザーで呼んでくるワタミの会長も、東井義雄の教育論が好きなようですし、府の教育委員の陰山英男氏も東井義雄の教育論を評価していますから。

http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000131201040001 (書くこと学びの礎:朝日新聞ネット配信記事2012年1月4日)

http://mytown.asahi.com/hyogo/news.php?k_id=29000131201030002 (まばたき見逃さず向き合って引き出す個性:朝日新聞ネット配信記事2012年1月3日)

このような形で、だんだん「教育基本条例案」に対する説明が混乱し始めたのではないか、そんな印象を私は受けました。「やっぱり、こんなもんいらない! 白紙撤回して一から出直したほうがいい!」と、「教育基本条例案」をごり押ししようとする人々には言いたいです。

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