できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

来年度以降のつきあい方

2006-12-24 12:03:04 | 私の「仲間」たちへ

やっと本業の大学での仕事も年末年始の休みにはいり、このブログにもいろんなことを書き込む時間的ゆとりができてきました。それではさっそく、大阪市の青少年会館の存続問題に関して、今、私が考えていることを書きたいと思います。

正直なところ、私は2007年度以降の大阪市の青少年施策、特に社会教育分野での青少年施策について、今は「全く見通しが立たない」というしかない状況にあります。それはおよそ、次の理由があるからです。

(1)市役所内及び市教委内から内部部局を再編する形で来年春設置予定の、青少年施策を統合する「子ども青少年局(仮称)」がどんな方向性を打ち出すのか、何をしようと思っているのかが、今の時点ではまだ見えない、ということ。だから、「来年度以降どうなるか、なんの見通しもないのに部局再編をするのか?」「ほんとうにうまくいくのか?」と思ってしまう。

(2)市立青少年会館12館という貴重な教育施設(=これは大阪市の貴重な「財産」です)を、「スポーツ施設」と「その他施設部分」に「解体」するのが「いい」かのような、そんな「青少年会館条例廃止」方針それ自体のおかしさに、市長以下の市政トップ層も、市会議員も、マスコミも、そして多くの大阪市民もまだ気づいていない、ということ。これもまた、「自分たちのしていることの意味に、そろそろ気づけよ」といいたくなってしまう。

(3)(2)のような問題点に気づいた地元住民やNPO団体などが声を挙げたり、子どもや若者を含めた実際の利用者などが反対の意思表明をしているにもかかわらず、その意見が市役所側には、ただ単に「そういう声もありますね」とか、単に「お聞きしました」という扱いを受けていること。それ自体、市役所側に対して、子どもを含む利用者や、地元住民やNPOを含む「市民」の立場を「ないがしろ」にする行為だと、私などは彼ら・彼女らといっしょになって怒りたい気分である。

(4)そして本当に青少年会館条例が今年度末で廃止され、また、全市的に展開する3事業以外の各種の事業が廃止されるのであれば、今までの青少年会館が取り組んできたことは事実上「解体」「終焉」というしかないこと。なにしろ、今まで青少年会館が「青少年の居場所」、特に「課題を抱えた青少年の居場所」として機能してきた背景には、例えば放課後の子どもたちの居場所づくり活動、保護者の子育て相談・学習活動、日本語の読み書き教室(いわゆる「識字」活動)、各種の人権学習・啓発活動などの取組みが長年蓄積されてきたから。たとえ「ほっとスペース事業」や「体験学習」「職業観育成」といった3事業が全市展開されて残ったとしても、今まで述べてきたような各種の長年培ってきた事業との直接・間接の連携があって、はじめてこれら3事業も効果を発揮した面があるのではないか。だとしたら、使えそうなパーツを切り出すように3事業だけ抜き出したところで、他に持っていってもうまくいくのかどうか疑問だし、そもそもこの3事業とて、もともと設置目的の異なる他の施設に移したとき、今までと同様の効果を発揮できるのかどうかすら怪しい。だからこそ、「なぜ青少年会館を当面残し続けた上で、今後の青少年施策の方向性をじっくり検討しようとしないのか?」と、私などは市役所・市教委に対して言うしかない。

このような次第ですので、私としては、来年度以降の大阪市の青少年施策には、「2006年度中に出された方針を是正する取組み」であれば関わりたいと思いますが、少なくとも「2006年度中に出された青少年施策の方向性を下支えする取組み」であれば、「ちょっともう、関わりたくないなぁ。関われば関わるほど、自分が心情的に傷つく」と思います。

というのも、自分としては今の市長方針に全く納得がいかないし、「今までよりも悪条件のなかで、今までと同様以上の結果を残せ」というような、そんな無茶なことには、「とても私の立場からは責任もった対応ができない」というしかないからです。

これに対して、「今まで青少年会館が取り組んできたことの下地の上にたって、さらなる青少年施策の発展を」というような、先月シンポジウムを開催した「市民の会」の提案のような路線であれば、私としてもすんなり協力ができます。

また、現在、市内各地区で起きているような利用者・地元住民からの青少年会館条例廃止反対の意思表示や、これからの青少年施策を建設的に提案していこうという動きに対しても、私としては協力を惜しまないつもりです。あるいは、この青少年会館条例廃止の問題について、大阪市の内外の人々に関心を持っていただくための活動であれば、これも協力したいと思います。

そして、大阪市役所や大阪市教委が、2006年度に出した各種の市長方針を軌道修正しつつ、なんとかして今後、青少年施策の中身について、利用者や地元住民、NPO側から出てくる意見との妥協点をさぐろうとする動きを示すのであれば、これも協力できる余地があります。

しかしながら、今の現状では大阪市長の出した方針には到底納得できませんので、私は来年度以降、利用者・地元住民・NPOや、青少年会館の現場職員・市教委等の末端職員の立場には協力しますが、来年度以降の施策の方向性を軌道修正するのでない限り、可能な限り「身を引く」方向に動きたいです。

もう一度繰り返しになりますが、私の立場をまとめておきます。

私は本当に大阪市の青少年施策、特に青少年会館に関する施策が、子どもを含めた利用者や地元住民にとって充実するもの、NPOにとっても現場職員にとっても、そして市教委や市役所の末端職員にとっても「やりがいを感じるもの」にするためであれば、積極的に協力したいと思っています。

なにしろ、課題はまだまだありますが、これまで青少年会館で社会教育行政の関係者やNPOのみなさん、そして現場職員や地元住民のみなさんといっしょにつくってきた「ほっとスペース事業」の路線こそ、これからの大阪市の青少年施策の目指すべき方向性だと思うし、その路線を青少年会館事業全体に、さらには他の青少年施策にも展開することに、研究者としての私自身が「やりがい」を感じていたのですから。

こういったことを「守り、さらに育てる」取組みであれば、私も協力は惜しみません。

しかし、今の市長方針に沿っていくのであれば、そういう私の考えにあわない方針や、私自身が「やりがい」を感じない方針を、私が下支えするということになりますので、私として自分の節操をまげてまで協力することは大変難しいです。できれば私に来年度以降の仕事を依頼せず、2006年に発表された市長方針に沿って、今後の大阪市の青少年施策を支えてくれるような、そんな研究者を別に探してください、といいたいです。

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