できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

結局、本来なすべきことが脇に追いやられただけ。

2013-01-21 20:31:55 | ニュース
桜宮高の体育系2科、募集中止 体罰問題受け大阪市教委(朝日新聞ネット配信記事2012年1月21日付け)
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/OSK201301210026.html

はっきりといいます。
なんですか、この結論?

「体育系の2学科の募集停止」というところでは、橋下市長の要求も通っているから、一応の顔がたつ。
その一方で、あらためて体育系2学科の定員を「普通科」で、「スポーツ中心のコース」に再編して集めるというのが、大阪市教委の方針。
で、入試は従来の体育系2学科志望の学生に不利にならないようにする。
これって、実質的には体育系2学科存続と、どう違うんですかね?
それで橋下市長も、市の教育委員さんたちも、自分らの両方の顔は立つかもしれない。
でも、本当にこんなことで、どっちも、いいんですかね?

要するに、橋下市長は「自分はこのたびの事件で、学科の募集停止という形での対策を打ったのだ」という、名前がほしかっただけですか?
「根深い問題を根っこから絶つのだ」とかいいながら、要は「自分の顔がたつようにしてほしかっただけ」なのですか?
これが遺族に真摯に謝罪し、自らの体罰肯定的な意見を批判した人の目指してきたことですか?
結局、あなたは事態を引っ掻き回すだけで、事実経過の検証作業なんてどうでもよかったのですかね?
でもそれって、事実関係の別の形での「隠ぺい」に他ならないのではないですか?

市教委も市教委です。
「これで実質的に体育系2学科も存続するし、よかったよかった」で済ませていいのですか?
特に事務方以上に、教育委員さんたち(教育長を除く)に、このこと、問いたいです。
きっと今後もこの橋下市長がいる限り、何か学校で子どもの悲しい出来事が起こるたびに、彼はまたこんな感じで何かと難癖つけて、大騒ぎして、市教委や学校への介入を強めてきますよ。それでいいんですか?
市の教育委員のなかには橋下市長の改革を積極的に後押しする人もいるようですが、こんな市長の施策を「追認」するだけの市教委に、今回の件でガッカリ来たという人もいるのではないでしょうか?

この入試停止のことで大騒ぎしている間に、もう何日、私たちは費やしたのでしょうか?
この時間があれば、どれだけの子どもや教職員への聴き取り作業ができたでしょうか?
また、この入試の停止をめぐる大騒ぎの渦中で、どれだけの大阪の子どもやその保護者や不安にさらされ、傷つき、苦しんだか。
どれだけの現場教職員が困惑し、中学校の校長さんたちがやきもきしてきたのか。
そして、教育長さんをはじめとする市教委の事務方だって、この入試停止の一件では本来やるべき業務ができず、市民からの苦情や問い合わせにどれだけ忙殺され、しんどい思いをしてきたか。
そのことの重みを、大阪市の教育委員も、橋下市長も、どう考えているのでしょうか。

橋下市長も大阪市教委も、お正月以来、こういうことに時間を費やす暇があったら、本来、なすべき事実経過の検証作業にエネルギーを費やすべきでした。
先ほどのブログの記事にも書いたとおり、今のところ、その検証作業がかなり停滞しています。
こんなことに費やした時間と、関係する人々の徒労感、傷つき、不安や苛立ち、怒りなどに対して、市長や市の教育委員さんたちは、どのように今後向き合っていくのでしょうか?

外部監察チームのみなさん。
まずは、当該の桜宮高校で起きた悲しい出来事の調査と並行して、橋下市長と市の教育委員さんたちのこの間の動きを監察して、いったい何がダメだったか、検証してください。
私としては、そちらの作業も外部監察チームにはお願いしたいです。

あと、この橋下市長の入試停止方針を積極的に後押ししようとした、いわゆすマスメディアによく出る「識者」にも言いたい。
「あなたたちはいったい、誰の側にたって、何をコメントしてきたのか?」と。



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大阪市教委と外部監察チーム、橋下市長の関係はどうなっているの?

2013-01-21 17:48:22 | ニュース

体罰の実態解明、一向に進まず 大阪・高2自殺(朝日新聞デジタル配信記事、2013年1月21日)
http://digital.asahi.com/articles/OSK201301200024.html?ref=comkiji_txt_end

朝日新聞デジタルの記事なので、登録している方しか見ることができないかもしれませんが、一応リンクは貼っておきます。

さて、この記事によりますと、桜宮高校での子どもの自殺の原因究明作業が遅れていることの背景に、大阪市教委と弁護士主体の外部監察チームとの関係の問題や、外部監察チームの協力を求めることを市教委から市長に報告したことなどが影響しているのではないかと思われます。以下、この記事の要点をおさえながら、私なりに時系列的に調査経過を整理してみます。

・(子どもが亡くなって=以後同じ)2日後に市教委の会合が開かれ、調査に客観性を持たせるために、市教委の教育委員が「弁護士5人でつくる外部監察チームと協力して調査をすすめる」と方針を固め、市長に報告。
・4日後の12月23日に、市教委は当該の部員50人を対象にアンケートを実施。ただし、これ以降の聴き取り、アンケートの集計は行わず。
・5日後、顧問教諭に1時間程度の話を聴く。これ以後、他の教員などからの聞き取りを行わず。
・1月11日まで、調査手法をめぐって、外部監察チームと市教委の協議が続く。
・この日、義家文科省政務官が市教委が調査方針を速やかに出せていないと批判。「調整に時間かかった」という市教委に、「外部監察とはまず内部で物事を明らかにしたうえで、それが適正かチェックしてもらうこと」と一蹴される。
・1月15日から、関係教員への聴き取り開始。

ちなみに、この記事の内容がまちがっていないとすると、顧問の体罰に関する遺書の記述があったとマスコミが伝えていたり、橋下市長が遺族に面談して謝罪したり、という頃には、外部監察チームも市教委も、何か調査が具体的に動いていたわけではない、ということになりますよね。
とすれば、市長は誰からの、どんな情報にもとづいて、この間、動いていたんですかね?
特に「体育科の2コースの募集停止」や「教員の総入れ替え」などのさまざまな提案について、市長は誰から入手した、どんな情報にもとづいて動いていたんでしょうか?
また、外部監察チームから市長へ、市長から外部監察チームへ、この間、どんなやりとりがあったのか。
あるいは、市教委、市長、外部監察チームの三者の関係はどうなっていたのか?
断片的にでもつかんだ情報は、この三者の間でどのように共有されたり、協議の材料として活用されたのか?
いろんな意味で、この三者の関係には、この間、疑問がわいてきます。

というような次第で、「桜宮高校で起きた子どもの悲しい出来事」の実態解明もさることながら、「市長、市教委、外部監察チーム」の調査対応のあり方に関する実態解明、これも私としては切に希望するところです。

ついでにいうと、市教委の教育委員が、子どもが亡くなってから2日目に「外部監察チームの協力を得よう」と方針を決め、市長に報告をしていたわけですよね。とすれば、市教委はそれ以来、外部監察チームと市長の両方に気兼ねしながら動いていたわけで、市教委のこの間の対応の悪さ、調査の初動の悪さはむしろ、両者への気兼ねゆえではないのか、という見方もできます。この点についても、ぜひとも調査対応のあり方に関する実態解明として、どなたかぜひ、検証していただければ幸いです。

あと、調査に関する初動対応だけでなく、学校に今、通っている子どもへのケアについても、どのような形でそれが実施されているのかという点から、どなたか、市教委や市長などの対応の問題点を明らかにしていただければ幸いです。

<追記>

この記事に書いてあることを前提にして私が推測するに・・・。

(1)大阪市教委の事務局や教育委員は、もうかなり前から市長の意向を気にして動いている。また、市長の意向を先取りするかのように動く教育委員や事務局スタッフもいる、ということ。だからこそ、市長からのさまざまな要求も効果的に効く、ということ。

(2)子どもが亡くなってから比較的早い時期に、市長はこの件に関する情報を市教委や外部監察チームなどから入手しうる位置にあったのではないか、ということ。また、それゆえに、その入手し得た情報をもとにして策を練り、自分の政治的なパフォーマンスとしてこの件を活用する手立てを講じる余地があったのではないか、ということ。

(3)しかし、今回に限っては、その政治的なパフォーマンスとして体育系各コースの募集停止や教職員の総入れ替えなどを市長があおっても、一部の識者などは賛成したが、マスメディアも市民もその多くが反対、批判の声を挙げているということ。また、これで市教委を動かし、当該の高校の体育系コースの募集停止には成功したとしても(=自己の権力誇示には成功ということ)、市民やマスメディアは徐々に彼からは離れる(=自らへの支持拡大という政治的なパフォーマンスとしては失敗)という結果に終わりそうだ、ということ。国政政党の「共同代表」就任というときにこの結果に至るのは、実は市長にとってもかなり痛手なのでは??

 


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もう少しフェアな見方が必要なのでは??

2013-01-21 08:44:33 | ニュース

おはようございます。昨夜、連続してツイッターに書いたことを、若干の字句修正をしつつこちらに書いておきます。また、フェイスブックにも以下のこと、書いています。

みんなあまり気づいていないのだけど、大阪市の桜宮高校の件。年末に子どもが亡くなったあと年が明け、遺書の存在が分かって、部活顧問の体罰等が明るみに出るまで約半月。これって他の類似の事例に比べたらまず「隠ぺい」ができなくなってるし、事後対応のスピードとしてもそう遅くはない。
むしろ今の問題は、亡くなった子どもへの体罰等の事実が明るみに出てから、きちんと調査委をつくり、事実究明をして、問題点を明らかにして再発防止策や処分などについての方針を市教委が出す前に、次々に市長サイドから余計な提案が行われて、それが大きく取り上げられている点にあるのでは?
また、桜宮高校のことについて言えば、今の状況だと、市教委や学校現場が自ら過去を検証して「自浄作用」を発揮する前に、「発揮する力なし」と外から決めつけて、自ら主体的に問題解決をしていくチャンスそれ自体を市長が奪っている、という見方も一連の経過からはできます。
だいたい年明けのある時点から、市長は自ら解決に乗り出すと称して動き始め、次々に余計な注文を出して事態をひっかきまわし、市教委や学校の主体的な問題解決の努力をやりづらくした面もあるかと。それでいて市教委や学校の努力が足りないというのは、フェアな話ではないですね。
大阪市の桜宮高校のことだって、(下記の記事にあるような)こうした大津市のような第三者委つくって、これから春先にかけてきっちり調査して原因究明をする。その結果に基づいて再発防止策などを提示していく。その再発防止策を受けて、今後の学校運営のあり方などを見直せばいい。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2013012090220152.html

<追記>

新聞やテレビなどマスメディアがいろいろ伝えてはいますが、私たちはまだ、この桜宮高校で起きた子どもの悲しい出来事について、「いったいそこで何が、どのように行われて、子どもの死に至ったのか?」という詳しい情報を知り得たわけではありません。また、子どもの死の背景に何があったのか、その背景にあることについても、わかっていないことは多々あると思います。その段階では、断片的に知り得た事柄で「当該の学校がけしからん」とか、「あの顧問は許せない」とかいう気持ちを抱くところまでは許せても、こぶしを振り上げて「体育科の入試停止」とか「顧問を含む教員の総入れ替え」とかを言うことは、明らかに行過ぎではないかと。怒りの感情をそのままこぶしにして、子どもにぶつけて殴っているのと、こうした措置を容認することとは、あまり大差ないのではないのか。少なくとも、私はそのように考えます。

冷静に今から第三者委員会を立ち上げ、数か月調査を行い、そこで明らかになった事実経過と原因、そしてそこから導き出される再発防止策の案にもとづいて、市教委や首長から今後のあるコースの募集停止や学科の再編、あるいは教職員の異動などを提案するのなら、私としてもまだわからなくもありません。「そうしなければならない」という理由・根拠が明らかだし、その調査のプロセスで当事者の言い分も聴取して、それをふまえての結論ですから、学校側も納得する部分があるでしょう。

しかし、今の時点で、市教委側においても、市長側においても、そうした冷静な検証作業は行われているのでしょうか。そういう冷静な検証作業についての情報公開や説明はそっちのけで、今すぐにでも体育科のコースなどの募集停止、教員の異動を行って、「市長としては必要な対応をして、ケリをつけた」と言いたいだけのようにしか思えません。こういうのは、とても解決策を講じたとはいえないのではないでしょうか。おまけに、すでに府教委や府知事あたりから、別の高校の体育科の定員を増やすとか、そんな話も伝えられています。これだと、前から言っている「惨事便乗型教育改革」をやるために、市長が市教委の本来やるべき仕事にまで介入し、余計な提案を次々に出して、事態をややこしくしているとみてもいいのではないでしょうか。

「首長主導の教育改革」「教育行政における首長のリーダーシップ」を、安易に持ち上げると、ロクなことはありません。こういうことだってできてしまうわけですからね。

そして、もしかしたら今、動き始めた「教育再生実行」の動き。あそこが「教育委員会制度の抜本的改革」のモデルとして、こうした大阪の一連の動きを「実験」のように考えているのであれば、まったくもって「余計なお世話だ」というしかないですね。


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