夜長姫と耳男

忌野清志郎を愛し、路上生活者支援NPO・TENOHASIの事務局長Sの日記

”メルトダウン”

2015年12月29日 | Weblog
PARCO劇場で「ツインズ」
古田新太・吉田鋼太郎・多部美華子など。

5月に起きた何かで、すべては変わってしまった。どうしようもなく汚染された世界。外に出るのも危険・海はもっと危険。
海水を飲み続ければいつか海水が身体に循環して海に戻れると言い張るその家の主・吉田鋼太郎。
汚染されていることを知りながら、海に入って魚や貝を捕る謎の召使い夫婦。
かたくなに汚染を拒み、汚れた世界に産み落とされた自分の子ども(双子=ツインズ)を抱けない青年。産み落としてしまった15歳上の妻。
そこへ、娘を安全なオーストラリアに密航させる金を無心に来た粗暴な弟・古田新太があらわれる。従順についてきた娘・多部未華子。

汚染を拒否する人は頑なで、汚染を受け入れた人は夢に逃避する。どうしようもない現実に対処する二つの道。どうしようもないことはどちらも同じ。それなのに受け入れた方が人間的にみえるのは、汚染と汚辱に満ちた世界をつくった責任の一端は自分にある・またはその構成物の一つであることを引き受けて、汚染を受け入れるからだろう。

汚染を拒否し、娘を逃がすための金を脅し取ろうとする父に対して、娘が「もういい、いい加減にして」と突然父を殴り倒して足蹴にし、なおも声を荒げる父の指を無造作にちょん切って黙らせるシーンが痛快。
娘が汚染を受け入れたら自分も腰砕けになり、拒否していた食べ物をむさぼり、酒と祭りに逃避するオヤジ。
笑えるシーンもふんだんにあって。
海に飛び込んでいった双子が半魚人になって帰ってくるところもなんとなくわかる。汚染された世界に適合しちゃったんだ。

僕は、絶対に汚染を受け入れちゃうほうだな。酒がうまけりゃそれでいい。旨いもの食べよう。
この世の甘さと苦さをこの舌で味わおう。

よくわからない、難解、という評判が多かったが、とっても腑に落ちる芝居だった。

タイトルは”Music From POWER HOUSE” 忌野清志郎&2・3'S より。
2011年の春は、ずっとこの曲が頭の中をリフレインしていた。

コメント
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