涼しくなって食欲も増した。
うれしいことである。
夏の間は何を食べてもいまいちだったから、
美味しいと思えることは幸せでもある。
かつては、
少なくとも50代までは、
カロリーを考えながら食べていたことを思うと、
感慨ひとしお、といったところ。
この間、新聞のコラムでこんな記事をみた。
(毎日新聞「余禄」から引用)
道元禅師(どうげんぜんじ)はある時、
弟子に貪欲を戒めてこういったという。
「人々みな食分あり、命分あり」
食分は人が一生に食べる物の総量。
命分は寿命の長さ。
それらはあらかじめ決まっているから、
より多く求めても無駄だというのだ。
ある僧があの世へ行くと、
閻魔(えんま)大王が
「こいつはまだ命分があるから帰せ」
という。
すると冥界(めいかい)の役人は
「命分はあるが、食分は尽きている」
といった。
閻魔大王は
「ならばハスの葉を食べさせよ」
というわけで、
生き返った僧はハスの葉で余命をつないだ
というのだ。
要は、
「衣食をむさぼるなかれ」
というわけか。
人の寿命を、食べる総量で表すのは中国からきた
発想らしいが、
必ずしも間違っていないような気もする。
ならば、
日々の食を減らすと、その分長生きする計算
だが、そううまくもいかないだろう。
ただいまの私は、
美味しいと感じる食事を貪ることなく、
ほどほどに食べたい。
美味しく食べられることに感謝しながら。