一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

青山霊園

2011-10-10 21:38:04 | 名所



     金木犀がはじめて匂った日、青山霊園を訪
     れた。
     わざわざ行ったのではなく、夜には上野の
     文化会館でコンサートの誘いを受けていた
     ので、その前の時間を利用して寄ったのだ。

     前々から、ある人の墓地を探していて青山
     霊園にあることは分かっていたのだが、な
     かなかチャンスがなくて、いまになったの
     である。

     今回は前もって管理事務所で調べていった
     ので迷わず探しあてることができた。
     以前、吉野霊園でさる人の墓地を探し歩
     いて、とうとう見つからずに帰ってきたこ
     とがあるだけに、徒労に終わらずほっとし
     た。

     この霊園はいわばブランド墓地とでもいう
     べきか、著名人が多く埋葬されている。
     ちょっと挙げただけでも尾崎紅葉、国木田
     独歩、志賀直哉、宮本百合子、芝木好子、
     …………
     最近ではペンクラブの会合でおなじみだっ
     た斎藤茂太氏も!!
  
     こうして赤の他人がお参りすることができ
     るのも、お墓のあるお陰。
     一時、亡夫のお墓の改葬で大変な思いを
     して、お墓そのものに懐疑的になったバチ
     当たりの私はちょっと考えてしまった。
   
     しかし、ここは立派なお墓ばかりである。
     維持管理するご遺族は大変だろうと同情
     しないでもない。
     実際その日、高枝ハサミで墓地の周囲の
     植木を伐採しているご夫婦もいた。
     (なかには、墓石が見えないほど草がお
      い茂っているところも)

     人は死して何を残すか。
     功なり名をとげた人はそうはいかないか
     もしれないが、平凡な人生であったなら
     いっそのこと、戒名も立派な墓石もいら
     ない。
     石ころひとつでいいような気がするの
     だが、どうだろう。

     霊園を出る私の鼻孔を金木犀の香りが
     くすぐった。霊園には金木犀が似合う。
     (まさか、よそ様のお墓を写すわけにも
      いかないので金木犀だけにした)