一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

季節を送る

2011-08-30 20:56:34 | 季節
  


    まだまだ暑さ厳しく、9月になってから夏が
    ぶり返すことがあるので油断はできないが、
    上空には秋の雲、下界を吹く風もどこか秋
    めいて、
     ♪風立ちぬ~
       い~ま~は秋~♪
    な~んて歌が思わず口から出てくる。

    確かに「盛夏」を見送って今はまさしく
    「晩夏」であることには相違ない。
    そして連想するのは小説の『挽歌』ーー

    私は長い間、『挽歌』を「晩夏」と勘違い
    していた。
    『挽歌』は昭和30年初めにベストセラー
    になった原田康子の小説である。
    
    霧に沈む北海道の街で知り合った中年の建築
    家・桂木を忘れられない怜子。
    彼女の異常な情熱は、桂木の家庭を壊し、悲
    劇的な結末をむかえる。
    細身の、ちょっと病的な少女(怜子)といい、
    霧の北海道といい……
    そう、狂うように燃えた夏の終わり(晩夏)
    ならこんなことあっても不思議ではない、と
    思っていたのだ。

    そういえば「コキュ」という言葉を覚えたの
    もこの小説だった。

    「晩夏」と「挽歌」
    そう思って聞くと、あっちの森とこっちの林
    で鳴く蝉の声は、短い生命を惜しむ「挽歌」
    の相聞歌のように思えなくもない。

    (写真は北海道滞在中、一度も同じ姿を見せ
     なかった羊蹄山)