一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

『ガセネッタ&シモネッタ』 その1

2011-08-02 00:44:03 | 読書


    8月になった。
    米原万理さんの著書に戻らなくてはならない。

    国際会議には欠かせない同時通訳。
    誤訳は致命的な結果を引き起こすこともあり、
    通訳のストレスたるや想像を絶するものだと
    いう。
    だから、同時通訳者はダジャレや下ネタが好
    きなのだとか。

    通訳とは単にAの言語をBに置き換えるとい
    うのではなく、その下準備たるや、半端では
    ないらしい。

    例えば一時の米原さんのように売れっ子同時
    通訳者となると、今日はイギリスでの建築学
    会、明日はロシアの要人を招いての懇談会、
    はたまた癌に関するシンポジューム、世界
    エイズ会議、宇宙開発のTV番組……等々、
    重用会議が目白押しといったことも少なく
    ないようだ。

    しかも、それぞれの専門分野の知識や最新の
    情報を調べておけばいいのではなく、出席者
    の顔ぶれをみて、その人の喋りそうな傾向
    とかクセ(?)といったことまでチェックし
    ておくのだとか。
    もちろん前もって資料をもらって調べておく
    のだが、場合によっては絶対出さない人もい
    て、結構泣かされることも多いらしい。
 
    言った端から泡沫のように消えてしまう同時
    通訳(レコーダーには残る)、一度口から出  
    た言葉は取り返しがつかない。
    一瞬一瞬が勝負で、どうやら人並みはずれた
    語学力だけでは駄目で、ユーモアも機転もき
    かないともとてもできるものではないことが
    よく分かった。

    ある国際会議でのはなし。
    日本の広告業界人のスピーチに『失楽園』
    が出たと思ったら、いつの間にか「シツラク
    エン」から「トシマエン」という話になった。
    (ここで詳しく書くスペースはない)
    「年増」と豊島園にある「トシマ」を掛けた
    言葉。韻を踏んだ「エン」。
    当然日本人の間では抱腹絶倒となったが、
    ほとんどの外国人はチンプンカンプン。

    同時通訳者はくどくどと説明しているヒマは
    なく、スピーカーから3~4秒以上遅れたら
    致命傷。
    冷汗、脂汗となったのは通訳者のみで、それ
    を反省している時間もない。

    かくして同時通訳者は完璧主義者には向かない。
    時間のストレスに耐えられる図太い神経と頑丈
    な心臓をもっていないと務まらないというので
    ある。