一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

夏グミ

2010-06-24 07:08:48 | 自然
    詩人で評論家、思想家(などいわれる)谷川雁
    は晩年、

     誰しも幼年時代をもっているが、それが昔 
     懐かしいという気分で取り出されるために、    
     みんな似たカラーに染められてしまう。

    といっている。また、晩年になってから一層
    鮮やかになってくる、そんな思い出を

     自分の身体から排出したい

    とも。
    私の夏グミに寄せる想いは谷川雁流にいわ
    せれば、年老いた者の単なる郷愁なのかも 
    しれない。

    小学生の頃、学校から帰ると夏グミの色づく
    のを今か今かと待ち、いいよいよ赤くなった
    ら、枝ごと切ってもらって、口いっぱいに
    ほおばった思い出。
    実はこの(写真の)夏グミ、植木屋さんには
    なく、花屋の店頭でみつけたもの。
    植木鉢に入っていて観賞用だった。
    欲しくて探しているところだったので、すぐ
    さま買って庭に移したのだが失敗。
    それを2回繰り返して、3度目の正直で
    根づいたのである。

    定位置は、台所の窓から見えるところ。
    今では2階に届くほどの背丈になって、
    梅雨になると写真のように愛らしい実を
    鈴なりに実らせる。
    で、味はどうかって?
    甘くて酸っぱくて、渋みがあって……
    家の者からは
    (へっ、こんなもの美味しいの?)
    といった顔で手ひどい仕打ちにあっている。

    私は、というと、草むしりのときに
    ちょっとつまむだけ。
    やはり昔の思い出は郷愁だけで充分の
    ようである。
    かくて、流しで洗いものをするとき、
    自分ひとりだけの郷愁にひたっている
    のである。