一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

平安の恋と携帯メール

2010-02-09 15:08:25 | 読書
    
    昨年暮れだったか『源氏物語』の写本・大沢本に
    標準本と大きく異なる内容が見つかったという
    記事が新聞に載っていた。

    「花宴巻」(はなのえんのまき)で、標準本では、
    20歳の源氏が恋心をよせる朧月夜に車ごしに歌
    を詠みかけると、歌が返ってきたが、それ以上の
    描写がなく、巻が終わる。
    声を確認できた喜びと、政敵の娘のためにどうす
    ることもできない心情が表現されていると今まで
    は解釈されてきた。

    だが、大沢本ではさらに、
    「かろかろしとてやみにけるとや」と続く。
    「軽薄な女だと判断してそれ以上は動こうとは
     しなかった」といった意味か。
    これによると、すぐに返事をする女性は品性に
    欠けると、(源氏が)幻滅したことになる。

    『源氏物語』には紫式部自筆本は現存せず、
    次々と写し返されていくうちに、ちょっと異
    なる写本が生まれた。
    約200年後の鎌倉前期に、藤原定家らが
    それらの写本を集めて54帖に整理。
    それが標準本として最も知られているのだ。
    それに含まれなかった未整理の写本があり、
    大沢本もその一つというわけである。

    それにしても、
    車ごしに歌詠みで声をかける王朝の恋も
    悠長だが、現代のように、
    即メールで❤❤(ハートマーク)を送らな
    ければ相手に伝わらないというのも、忙し
    過ぎる。
    道を歩きながらメールを打っている女の子
    をみて、そう思った。