今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

卵をめぐる祖父の戦争

2012年10月05日 | 「本」のひきだし

ブクログより


祖父が作家である孫に戦争体験を語る、という形で物語は進められる。

舞台は1942年、ドイツ軍に包囲されたレニングラード。
泥棒の罪を着せられた祖父と脱走の罪を着せられた軍人が、ある少佐が提示したひとつの課題をこなしたら罪を問わないといわれる。
その課題とは・・・少佐の娘の結婚式に焼くケーキに使う卵を一ダース一週間以内にどこかで調達してこい、というもの。

ちょっとちょっとおじさん、孤立状態のこの街で市民はもはや食べるものもなく、おおぞましいことを始める輩もでてきたというこの非常時に結婚式のケーキ?卵ですか?

いつの時代も一市民というのは弱くて、どんな理不尽にも耐えなくてはいけない。

かくしてコンビを組んだふたりは卵探しに出かけていく。
この後はまるで童話か昔話のような手法で、

ふたりが歩いていると、人食い鬼に追いかけられました。
やっと逃げてしばらく行くと、雪の中に身ぐるみはがされ、お尻の肉を削られた親子が息絶えていました。
どんどん行くと、森の中に明かりの付いた小さな小屋を見つけました。
というような。

のどは渇いてお腹は空いて、足は棒のようになり、飛び交う銃の弾をかいくぐりながらの極限状態で交わされるふたりの会話、その下ネタ満載の軽妙な会話はまるで漫才を聞いているかのよう。
笑ってしまうけれどやっぱり悲しい。戦争は悲しい。

結末はホッとするやら、腹立たしいやら。
でも最後の最後のオチ、えっと驚いてそしてにんまり。


卵をめぐる祖父の戦争 / デイヴィッド・ベニオフ
★★★★☆



☆おまけ☆


ブクログより

チビちゃんに借りてきた絵本、なんとこちらも卵を探しに行くお話。

王様に王子が誕生したので、お祝いに国民全員に玉子焼きをふるまうことになり、鶏の卵では小さすぎて追いつかないので、ぞうの卵をさがしてこい!と言う指示を受け、家来が国中を探しに行くと言うお話。

ぞう、ぞう 卵を抱いてるぞう。歌いながらさがすのですが・・・

2冊とも、エライ人の命令には逆らえない、という滑稽で理不尽なお話です。

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