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裁判ショーに成り下がる危険性

2010年10月27日 | 雑談
昨日の続きです。

被害者感情の尊重が必要であればこそ
刑事事件での被害者参加は徹底されるべきだろう。

そして
現行では被害者参加制度というのも存在する。

最近では新聞などでの報道も見聞きする。
ただ、公表される部分というのは
新しい制度を浸透させるため、往々にして良い面しか伝えない
情報には必ずフィルターが被さりベクトルが効かされるのは洋の東西を問わないのだろう・・・

個人的な考えだが
この制度の問題点は被害者だけではなく『当事者っぽい立場の人』も参加できる点にあると感じる、
それは参加人の選定について
それまでの当事者間のやり取りはほとんど考慮されていなかったり
出廷するのはあくまでも被害者の関係者で
加害者側には事実について立証する機会がないこと
また、心情面の訴えに終始しているため、反証することが裁判官の心象悪化につながること
そうなれば実質的に弁明の機会もない
結局は検察側の武器が一つ増えるだけにもなりかねない


とある事件の話だ、いろいろ問題があるので詳細の記載は避けるが
被告は被害者に重傷を負わせた事件なのだが
話を聞く限り
被害者側に落ち度がある可能性も否定できない、

あらゆる可能性を検証せずに
先入観と印象と『それまでの事例』だけで突っ走ることが
どんなリスクを孕んでいるか
郵便不正事件で痛感しているはずだ。

『疑わしきは被告人の利益に』というのは
刑事事件の大前提だ、とてもじゃないが
論を尽くしたとは言い難い。

そして被害者参加として出てきたのは被害者の家族である。
被害者当人はまだ治療中で法廷には出てこれないので家族が代理で、
それは別ににいい、問題なのは人選だ

加害者は
勤務先を通じて謝罪の意思を被害者に伝えようとしていた
しかし、どういうわけか被害者家族には伝わっていなかった。

被害者側(以下『参加人』)は検察官への供述調書の中で
『事件後の被告の態度は事の重大さを理解していないと思う』
と述べている。

しかし
加害者(正確には加害者の勤務先)と直接話をしていたのは
被害者の弟である。
賠償金の話などもこの『弟』と弟の雇った弁護士が当たっていた。
事件についての謝罪は発生直後から続けていた。
会うたびに謝罪を求めるのもおかしな話だし、そもそも時間の無駄だ

さらに言えば
被告は相手方弁護士には謝罪の意思を伝えているし
そのときには「伝えておくよ」と返答されている。
また、直接の謝罪はしないで自分を通せとも言われている。

ちなみに
『弟』に直接電話した時にも
「迷惑だから弁護士を通せ」と言われている。

一連のやり取りはすべて被害者の弟とその弁護士であって
法廷に出てきた被害者の娘ではない。

そして
『謝罪がない』と言われても
弟や弁護士に伝えているのでそりゃ娘までは伝わってないんじゃないかな?と
思ってしまうのも無理からぬことだ・・・

謝罪自体の回数もかなりの数に上るが
いったい何回謝れば謝罪になるのだろう?

ただ、『弟』も『その弁護士』も
当日の法廷には来ていなかった。

法廷に出てきた『親族』は謝罪について
どんな形だろうが謝罪があってしかるべきと訴えた。

しかし
会ったこともないんだから
伝聞にしてもらわなければ被告の謝罪は届かないだろう。

そして
裁判後、法廷に来た娘に『改めて謝罪に伺いたい』と言うと
「今は無理」と、あっさり却下・・・

地元紙の取材には饒舌に答えていたようだが
欲しかったはずの被告の謝罪はもういらないそうだ・・・

被害者参加制度は、まっとうな裁判を実現するためのツールでなければならないはずで
検察側に『人選と供述内容を調整するだけで簡単に使える強力な心理兵器』を持たせるものであってはならないと思います。




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