私の長女の連れ合いが麻布十番に20席程のビストロをこの2月末に開店した。
私の友人が開店してすぐに来てくれて大変喜んでくれた。
彼からこんな批評をもらった。シェフとサービスのプロの店だが経営者がいない。
実に的確な評価だ。娘婿の須藤君もサービスの北野さんも一方は料理、一方はワインに自信を持ち、フランス生活が長かったせいで、フランスの事情には詳しいが、日本のフランス料理レストランを楽しむ人々に必ずしも詳しくない。この店のターゲットが誰なのかの明確なイメージがなく、それぞれが自分の基準しか持っていないように感じる。
つまりお客様の視点に立つ人間がいないので、いろいろな人々に対するきめ細かい日本式サービスが行き届いたこの国で成功するかはおぼつかない。娘にあれこれアドバイスするが一番の年下では、
中々わかってもらえないらしい。
だが僕は腹をくくった。成長する可能性は感じられる。僕も30半ばでは半人前だった。黙って見ていよう。彼らの人生なのだから。娘の成長と運良く彼らを育てて下さるお客様の登場を待つことにしよう。
もしかすると経営者のいない、リスク管理のされていない無防備な店は日本ではそれだけで魅力的なのかも知れない。
開店直前に父親を癌で失い、軌道に乗りかけた所でこの大震災と不安だらけの出発だったが、今のところ、彼らの店は評判もよく、この時節の割りには沢山のお客様がいらっしゃって頂いているらしい。
将来性を買って、名店の常連になるなら今のうちかもしれませんよ。