慶応ボーイの植木屋修行

ランドスケープアーキテクト福川成一のエッセイとオーベルジュ・スミの庭の記録

未熟な人間

2011-09-06 13:00:29 | エッセイ
中国の西安に出張している間に前原さんが首相になるのかと思っていたら、野田佳彦さんが選出された。
どんな人だかよく知らなかったが、なかなか低姿勢で人の話を聞く、未熟者ですといった感じが好感されて支持率も60パーセントに達しているそうだ。

 出張中、NHKで放送された「女と男」という題の文庫を読んでいた。それに人間は哺乳類で最も未成熟と書いてあって長年の疑念が晴れた気がした。そうだ永遠の青年でいて良いのだ。ピーターパンが好きで良いのだと得心した。そのうちゲーム好きの青年や約束を守らない学生も許せるかも知れない。低姿勢の野田さんだと、とりあえず安心できるのかも知れない。

ヒトは直立して2足歩行を始めると骨盤が変化し、産道が狭まったため未熟児で生まざるをえなくなった。
未熟な状態で生まれる人間の赤ちゃんは食べ物を得ることはおろか、動くことすらできない。養育の必要性が長年続く。ヒトが適切なパートナーを必要としたのは生むためでなく、育てるためだつたのだ。

ヒトを除くすべての哺乳類は、胎児が母親の胎内にいる間は脳の発達が急激で出産後に落ち込んで、その成長率がなだらかになるが、ヒトの場合は出産後も一年間は胎内と同じスピードで成長を続ける。この間に新生児は外界の刺激を受けながら、その印象や情報を脳に刻みながら成長する。

 他の動物の多くが、生まれながらに刷り込まれている本能的な指令に従って行動しているのに対し、人間は経験を積むことで、行動を学習するようになっていったのだろう。
しかも、単に学習するだけでなく、変化に対処し、その変化に応じてさらに変化することができる、そうした柔軟性を持つ生き物になったのである。

 さらに人間は生後一年にとどまらず、脳はその後も学習を続け、変化する外界への適応を行っていく。
未成熟な霊長類に目立つ特徴は知的好奇心と遊び好きな性格であり、子ザルが持つような若々しい好奇心を私達は受け継いでいる。しかも私達の場合は大人になつてもその好奇心が消えず、それが大きな資産となっている。そのことを可能にしているのが「ゆっくり時間をかけて育つ」という人間が持つ特徴なのだ。

 他のどんな生物よりも未熟でいる期間が長いために、遊び心と創造性を失わず、いつまでも若々しくいられるわけである。
ゆっくり成長するということは子育ての期間中に父や母がそれぞれの持つ知識や知恵を子供達に伝えることが出来るということだ。

技術だけでなく習慣や社会道徳などの文化も習得していく。この文化の継承こそ、その後の人類の飛躍の原動力となった。
人類が未成熟の哺乳類であったがゆえに今日の繁栄を築けたことは、まさに幼児の環境の大切さを示している。

と同時に未熟であるがゆえの問題もある。
ほとんどの幼児の親は実はまだ子供なのだ。本来生殖活動などとんでもないのに子供をつくってしまったのだ。小沢一郎というジャイアンのようなガキ大将に従うやからも子供、みんながいじめるから意地でもやめないという菅直人前首相も子供。いやーこの子供だらけの日本は世界の幼稚園なのかもしれない。

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