松岡正剛のにっぽんXYZ

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08 歌枕と今様(X=山家集 その1) 数寄の遁世者・西行の生き方

2004年11月13日 | 08 歌枕と今様
さあ、ここからは、平安末期から鎌倉時代へと、中世日本が大きく変わっていった時代を文化から見ていくXYZです。その3つは『山家集』『方丈記』『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』という文芸の作品。まず最初のXは、西行という歌人の『山家集』を取り上げましょう。西行は平清盛と同じ1118年に、京の武官の家に生まれたんですね。平清盛と西行、まったく違った生き方をした二人ですが、その若き日の二人は、武士として実はたいへんよく似た道を歩んだんです。

西行はもともとの名前を佐藤義清といいます。平将門を討伐した俵藤太秀郷の子孫でした。代々、今の和歌山県に荘園を経営し、宮廷では京都の治安を守る検非違使の武官を勤めた家柄です。18歳のときに義清は、鳥羽上皇の親衛隊である北面の武士に選ばれたんですね。以前お話ししたように当時のたいへんなエリートコースです。ところが義清は、23歳の時に、この前途洋々たるコースを突如として捨ててしまう。武士を辞めてしまうんです。

義清は武士の栄達の道を捨て、出家の決心をしたんですね。その決心は固く、世間への思いを断ち切るために、娘を足蹴にして家を出たなどといわれているほどです。出家の原因には、親しい者の死や自身の悲しい恋、あるいは親しく崇徳上皇らが不遇に追いやられるのを目の当たりにしたためと、さまざまに言い伝えがあります。

義清は勝持寺に入り、僧となって「西行」と名乗ると、嵯峨や鞍馬など京の近くの山々を転々とするんですね。このころ人里離れた野や山には、摂関家から上皇、そして平氏や源氏と、目まぐるしく権力者が交代する世に無常を感じて、出家をして俗世を離れる人々が次々と現れていたんですね。西行もまた、その一人となった。出家というのは、仏門に入って毎日念仏を唱え、そして心を清めようとすることです。

その時に西行が選んだ次の生き方は、「歌と旅」だったんですね。「花」、「月」、「風」、「鳥」、「水」という自然の中に自分を置き、心を澄ましていく。ようするに執着(しゅうじゃく)、こだわりを捨てようとしたのです。このように歌をつくりながら、旅に生きる人生のように、好きなことをして生きていくことを「数寄」ともいいます。「数寄屋造」の「数寄」ですね。西行の旅、歌は「数寄の遁世(とんぜい)」ともいいます。「遁世」というのは「世を捨てる」ということです。世間を捨てる。

そういう遁世者には、世の外に出て、世の中を見る目が養われてきます。西行は、そのような外からの視線で世の中を見ようとする。出家後、桜で有名な吉野山を訪れた西行がこんな歌を詠みます。
「花に染む 心のいかで残りけん すてはててきと 思う我が身に」
出家して世を捨てたばかりなのに、どうしてこんなに桜の花に魅惑されるんだろうか、という意味ですね。

もうひとつ、こんな歌も歌っています。
「世の中を夢と見る見る はかなくも なほ驚かぬわが心かな」

「世の中ははかないものである。はかなくたって驚かない。それは当たり前なのだ。夢と浮世は境をなくしている」。西行はそういうふうに見定めていた。それでももう私の心は驚かない、こだわりは捨てている、という歌ですね。この西行の生き方は、のちのち日本人に大きな影響を与えたんです。それは日本の文化の一つの骨格をつくりました。江戸時代、松尾芭蕉が「奥の細道」を歩いたのも、この西行を慕ってのことだったのですね。

京の山奥にこもった西行は、伊勢などを訪れながらも、やがて高野山に移り、仮住まいの庵を本拠とするようになります。祈りと和歌づくり、そして行脚の日々に生き始めた西行が30代になったころ、和歌の面影を求めて、人生最初の長旅に向かいます。それが都から遠く離れた陸奥への旅でした。

【次回は11月16日(火)、08 歌枕と今様、X=山家集の2回目です】


1077 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
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2006-08-17 07:02:05
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2011-11-01 18:41:20
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