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月見草

”もうすぐだから、見ていてよ”と知人は私の手を引いて、月見草が群れ生える一角に引き寄せた。
私達は幾人かで月見草の茂みを囲むように息を潜めて待っていた。
蕾がふいに首をひねる。花びらが一枚パラリと動き、ほぐれはじめて少しずつ少しずつ花弁が身をよじりながら開ききるのを見ていたら、息が苦しくなって初めてその間息を詰めていたのに気がついた。
その一叢の月見草はほぼ同時に開花の儀式を終えた。
薄青に染まった空気の中で、滲んだ月のような檸檬色の花から、その色に似た香がふいに鼻先をかすめ通り過ぎていく。

ドイツでは”夜のろうそく””夜花”の名で呼ばれる。
Oenothera biennisは正確に言えば”月見草”ではなく”待つ宵草”だ。
”月見草”といったら白花のOenothera tetrapteraの事。
しかし私は子供の頃からこのレモン色の花を”月見草”と呼んでいたし、私が間違っていようと別に誰も困らないだろうから、いまさら変更する気も無い。
昔は根菜として栽培されたとの事で葉も花もサラダにして食べるし、根はゆがいて食べると美味しいとある。
私は試した事が無いのだが、機会があったらちょっぴり試してみたい。

子供の頃遊びに行った田舎で一人周辺を探索をしていた。
道は乾ききって埃っぽく、道端は丈の高い草が生え、
緑色に紫や黄色のがらを持った大きなアゲハの幼虫が2匹,何を求めてかカラカラの道を横切るのを眺めたり、つま先に触れる小石を蹴りながら歩き回った。
歩き疲れてきた道を戻る頃には陽も傾いて、引き返すと先ほどは気がつかずに通り過ぎた月見草が道なりにズラリとレモン色の灯りをともし私の帰り道を照らしていた。

その時それが”月見草”だと教えらて以来、そのように私の頭の中には分類仕分けされて”月見草”は今だ黄色い花びらを持ったままだ。
でも、”待つ宵草”という名前も好きだけど。。。
コメント ( 21 ) | Trackback ( 3 )
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コメント
 
 
 
平行植物 (日曜画家KOO)
2005-07-05 16:44:45
美しい図版と文章、レイアウト、ホンとにファンになりました。



平行植物とは、もしかして、レオ・レオーニの筑摩文庫の、、、やっぱり。。おもしろい本ですよね、、不思議な本です。持っておりますが、大好きな本です。



不思議な植物と不思議なイラスト、次元を超えた植物、深い知識と空想力どれをとっても普通では、ありえない本です。

また、お邪魔しまっす。

ちょっと、アメーバ、しばらく遅めかもしれません。。
 
 
 
KOO さんへ (seedsbook)
2005-07-05 16:49:54
ここでは過去記事でも、平行植物はたびたび話題にしています。

私の好きな本なので、もうかなり本はくたびれてきていますが大事にしています。

こうしてブログで”平行植物”ファンにたびたび”会え”て嬉しい限りです。

ちょくちょく遊びにいらしてください!

こちらかも出かけますので。
 
 
 
ホントに素敵!! (Julia)
2005-07-05 21:17:59
seedsbookさん



先ほどは拙blogまでコメントありがとうございました。大変嬉しかったです!!



きれいなボタニカル・アートですね!また、お写真と記事もとても素晴らしくて上記の方と同様、すっかりファンになりました/3hearts/}



よろしかったら私の方からだけでもリンクを貼らせてくださいませ。TBもさせて頂きます。 
 
 
 
Juliaさんへ (seedsbook)
2005-07-05 21:35:53
いらしてくださって有難うございました!

お褒めのコメント恐縮です。TB有難うございました。

又こちらからも伺いますね。
 
 
 
Unknown (shigeyuki)
2005-07-05 21:47:47
こんばんは。

月見草とは関係ない話で、申し訳ないのですけど・・・



読んでいて、ふと思い出したのが、小学生の頃に道端で見つけた不思議な「黒い石のようなもの」。

小さくて丸いもので、不思議な光沢があって、一体なんだろうと図鑑で調べました。で、よくわからなかったのですが、一番近いような気がしたのが「テクタイト」。

実際のところ、「まったく違うなんでもないもの」だったんでしょうが、長い間僕の宝物でした。

 
 
 
shigeyukiさんへ (seedsbook)
2005-07-05 22:02:52
つき見草と関係なくたって歓迎です!



おお、テクタイト!隕石が落ちた時の衝撃で形成される天然ガラスですね!

もうもっては居られないのでしょうか?

いや、”全く違うもの”では無くて、”不思議な石テクタイト”でしょう。きっと。。。



時折、道にぽつんと存在主張している石が座っている事がありますよね。あれはやはり拾ってこなければいけない気分になります。
 
 
 
Unknown (Hummrl)
2005-07-06 04:54:02
香りを記憶するのは得意ではないけれど、子供のころ校庭に咲いた金木犀の香りと夜風にのって運ばれてきた友人の庭の林立して咲いていた月見草の香りは文字を見るだけで鼻腔によみがえります。私もレモン色のほうを月見草と思っていた。誰だったかな“富士には月見草が良く似合う・・。”と書いた人。あの文章の月見草は私の頭の中ではレモン色だったのに。白いほうを言っていたの? ああショック。
 
 
 
Hummelさんへ (seedsbook)
2005-07-06 06:54:01
>“富士には月見草が良く似合う・・。”



太宰治です。富岳百景.”おや、つき見草?”って指したのはやっぱりこの黄色い花だと思うよ。

絶対!



白い方はどうもピンとこないし。多くの人がつき見草=待つ宵草って思ってるからね。



そういうことにしておこう!
 
 
 
わたしは (マユ)
2005-07-07 23:27:27
待宵草という名前のほうがすきです。

私は本当に宵っぱりで、朝から頑張って活動したとしても、午前のうちはぼんやりしていて、ターボがかかるのは18時すぎ。23時を回ればなぜだかもうノリノリである。



宵という時間帯、宵を待つという行為、ひとり悶々として宵をすっかり無駄に過ごし、東雲を目にした途端に急に心がすっきりとしてゆくこと・・

「宵」「待つ」「淡い月の色」「枯れ際に赤をまとうしおれた花弁」

その全てがすき。



そういうわけで、朝早くから活動をしていた今週、結局寝るのは夜中か夜明け後。

ご無沙汰してしまっていてごめんなさい。
 
 
 
マユさんへ (seedsbook)
2005-07-08 01:44:12
どうやらかなり忙しそうですね。

体に気をつけて無理をせずに。。。といってもそうも行かないのだとは思いますけれど。

マユさんは宵っ張りなのですね。私も昔はそうでしたが、最近全く凡人的サイクルに従ってます。

徹夜に近い事なんかすると2日ぐらいひびくし。。。

だから夜更かししなくなった。

夜は12時くらいかなあ。。。
 
 
 
宵待草 (alice-room)
2005-07-08 02:53:43
既にマユさんもお書きになられてますが、私もこの名前に馴染みがあり、とっても好きです。と、同時に宵待草の曲ってあるでしょ、古賀メロディーだったと思うですが・・・?あの曲をBGMにかけながら、古風なカフェで時間をのんびり過ごすのも素敵ですね。



以前、仲の良かった知り合いから店名が「宵待草」という実在の喫茶店があるよと教わり、その店がモノクロで写った絵葉書を頂いたことがあります。今度一緒に行きましょうといいながら、行かずじまいで未だにそこがどこなのか分かりません。



何故か、今でも「宵待草」という名前を聞くと、それを思い出さずにはいられません。不思議なことですが、今回ふとそのことを思い出してしまいまして・・・。記憶の連鎖で書かせて頂きました。どこにあるんでしょう?宵待草?調べてしまっては、興醒めなので、いつも心の中で「疑問形」を形作っております。
 
 
 
アレレ? (alice-room)
2005-07-08 02:56:33
宵待草?待宵草? すみません、私の記憶にはどちらが定かか分かりません。全ては、うつろいゆく追憶の中に・・・って、逃げてます(笑)
 
 
 
alice-roomさん (seedsbook)
2005-07-08 06:11:16
待宵草ですよ。。。

私も一瞬惑いましたが。確かです。



↑疑問はそのままにしておいたら私もそのほうがよいかと。。。

ある日突然その店の前にいた。。なんていう事があるまで、待っていてはいかがですか?

案外そういうことってあるものです。
 
 
 
ギモンを解決してしまうと (マユ)
2005-07-08 13:12:50
「まつよいぐさ」が正式で、

「よいまちぐさ」は竹久夢二が突然いいはじめて、

そのフレーズがよかったことと、例の歌がとってもよかったために後者のほうが浸透してしまったのであります。

 
 
 
マユさんへ (seedsbook)
2005-07-08 15:50:07
ああなるほど、そうですね、宵待ち草という言葉もありましたっけね。

私はすっかり頭から、植物のほうしか考えてませんでした。

でもこれって待つ宵草を指して夢路が作った言葉なのですか?



ところで、↑の疑問のことだけど、私が言いたかったのは場所はどこだろう?という疑問をそのまんまにしておくといい。という意でした。
 
 
 
どうも有り難うございます (alice-room)
2005-07-09 01:16:22
マユさん、そうなんですか、夢二絡みの話だったんですか・・・。情報有り難うございます。そういえば、鈴木清順監督の映画「夢二」(この作品は大好きでDVDで買ってしまったもの)でもエンディングで流れていたのを思い出しました。



seedsbookさん、そうですね。謎は謎のままで良いかも? 将来に楽しみを残しておくのもいいですし、想像する楽しみもいいですもんね。ただ、素敵な絵葉書なんで今度、スキャナーで取り込んでみたいなあ~。TBしちゃっても怒らないで下さいね~(笑)。
 
 
 
alice-roomさん (seedsbook)
2005-07-09 02:20:03
怒ったりしません!

どんどんやってください。こちらも返球入れますから。。。(笑)
 
 
 
月見草つながりということで、 (lapis)
2005-07-10 00:09:03
TBさせていただきます。偶然ですが、コメントで話題になった竹久夢二に少し触れています。考えることは、みな同じなのですね。(笑)

本当は、散歩がしたかったのですが、天気が悪かったので、晴れ間、晴れ間にぶらついて撮った写真です。

それでは、よろしくお願いします。
 
 
 
Lapis さんへ (seedsbook)
2005-07-10 16:54:57
TB有難うございました。私も今Lapisさんの記事を拝見してきました。

さすが、ただぶらついただけではなく、さまざまな文学につなげるところ、さすがです。

さあ、今日は友人の庭に行って、赤フサスグリでも収穫してきましょ。

 
 
 
primrose (マユ)
2005-07-10 21:14:22
今日は久々にすっきりした夏日でした。

WEB繋がりの知人から紹介された近所のカフェまで自転車で探検にゆきました。

「primerose」(サクラソウ)という名の喫茶店です。

最近、待宵草の話題がいっぱいのぼっていたこともあり、日暮れちょっと前に店にゆきました。

これで「evening primrose」(待宵草)のできあがり。

いかがかな。
 
 
 
マユさんへ (seedsbook)
2005-07-11 02:47:49
いいですね。 

どんなカフェだったんでしょ?

ドイツはカフェらしきものが少なくて、飲み屋に近いものになってしまうのです。

。。。といっても最近又変わって来ましたけれど。

わりと気の聞いたカフェがあったら、今度教えてください。

 
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