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触手

金銀花又の名を忍冬、スイカズラとも言う。
金銀花は“香の触手” を 伸ばしてそのそばを通りかかる者にやんわりと巻き付き、引き寄せ、花房に何度も鼻頭を埋めて深呼吸せずには離してくれない。音を立ててぐんぐん延びているかに思える蔓が隣に植わっている雪柳の体を締め付けてしまうので、時々解きほぐしては傍の手すりに強引に巻きつける。この生命力を見ているとこの魅惑的な香の中になにかふてぶてしさを嗅ぎつけてしまう。

咲き始めの花は白く、次第に黄色を帯びてゆくので、少し離れて眺めると花は白と黄、いや金と銀の2色が咲いているように見えるためにこの名がついた。
忍冬という別名は、冬も葉は落ちることなく、縮かみ寒中を耐え忍ぶようにみえることに所以する。

私は金銀花という名前の方が好きだ。

友人の庭にはこれが山ほど咲くので、その脇で夢心地にお茶を飲む。金と銀の花とつぼみをお酒に漬けると又、美味しい。そうだこれからその香をお酒の中に閉じ込めてみようか。

この香を嗅いでいると、記憶の箱が開いて、何が入っているのか調べようとするのだが、煩雑な箱の中のどれが源なのかはっきりとピントが合わない。影は見えるのに煙のようにつかもうとすれば逃げてゆく。何だったのかなあ。

匂いといえば思い出すのは  パトリック ズースキントの”香水-ある殺人者の話”という小説だ。18世紀フランスの街の匂い、饐えた裏町の臭い、初々しい少女の肌の匂い。
ページ毎に色々な匂いが立ち昇り臭覚に訴えかけるような文章で好きだ。

匂いは感性に直接働きかける。

スイカズラ、”吸い蔓”。
花の甘い蜜を求めて沢山の虫が集まってくるので、私も花を一つ摘んで舐めて見ると、舌の上に蜜の甘みが“点”と残った。
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コメント
 
 
 
香水-ある殺人者の話 (lapis)
2005-06-19 20:41:43
スイカズラの話かと思っていたら、お茶→お酒→臭い→「香水-ある殺人者の話」という素敵な展開でした。「香水」は、ブックオフで見つけて購入したのですが、いまだに積読状態です。(苦笑)「18世紀フランスの街の匂い、饐えた裏町の臭い、初々しい少女の肌の匂い。、、、」等とくれば、買って正解だったと思いました。そのうち読んでみますね。

花と文学ということで、TBさせていただきます。

よろしくお願いいたします。



 
 
 
香り (K-es)
2005-06-19 21:40:31
香りは記憶の蓋を静かに持ち上げますね。わたしの場合は昔使っていた香水や、季節の変わり目の土の匂い。土の匂いと呼んでいますがそれは様々な植物の混ざり合った匂いなのでしょう、きっと。

ところで最近匂うのは蛙の匂いです。この時期、蛙が車に轢かれ、いったん干からびた死骸が雨に遭うとまた匂いだす…あまり風情は感じないですが、梅雨のこの時期に特有の匂いだなあ、と。

「香水、ある殺人者の話」読んだことありませんが、なんとなくウールリッチの推理小説を思いおこしました。
 
 
 
Lapis さんへ (seedsbook)
2005-06-19 23:19:19
Tb有難うございました。

今日は少しだけ金銀花酒を作ってみました。

薬用酒でもあるらしい。

私は壜が沢山ならんでいるのが好きなので、色々この手のものを作ります。

仕事部屋も壜が沢山。
 
 
 
K-es さんへ (seedsbook)
2005-06-19 23:29:38
残念ながら、ウールリッチの推理小説読んだ事ありません。

蛙が車に引かれた臭いというのはなんとなく想像できます。時期には大勢で移動する奴らがいますからね。そういう場所の近くには蛙横断注意の立て札が立っています。

 
 
 
素敵な名称 (alice-room)
2005-06-19 23:42:34
金銀花で、スイカズラというんですね。片仮名なら聞いたことありますが、そんな素敵な漢字で名前があるとは知りませんでした。いやあ~、一ついい事を知ってしまった気がします。金と銀の色という、由来も含めてなんか、嬉しい知識ですね(満面の笑み)。



花の香りと香水ですか、とても楽しい文章です。普段は香水等には無頓着で買ったことも自分でつけたこともほとんどないのですが、こちらの文章を読んでふと以前に購入したまま一、二度しかつけたことのないオードトワレを思い出しました。何故かダンボールの中にしまったままで今見つけてみると、あった&あった! 誰もいない部屋なのに早速、軽くつけてみると…なんか気分も爽快です。これどこで買ったのかな? Muguet des Bois,Yves Rocher社製でフランスのものらしいけど、アジアの名税店で購入したような?香港?台湾?タイ? なんかこんなふうに反応して私も怪しいかな? seedsbookさんのおかげで、忘れていたことを思い出しました。
 
 
 
alice-roomさん (seedsbook)
2005-06-20 00:19:35
ダンボールの中に色々見つかりそうですね。

ある種の香は気分転換にもなりますから。。。



金銀花は中国から来た名前かもしれません。

ともあれ響きが楽しい。



先ほど、書いたサバの女王ですがあれはどうもノートルダム寺院の柱の彫刻だったらしい。だからほっそりまっすぐな像だったんだなあ、と今思いました。もし見つかったらようく見てきてくださいね!
 
 
 
うまくいえないので (マユ)
2005-06-20 14:37:13
さらっと言い逃げしてしまおうと企んでいるのですが。

「触手」という単語だけでもうノックアウトです。

香りとは無関係なのですが、私のなかで「触手」と聞いてぴんとくる植物はふうせんかずらです。蔓植物ならなんでもよいわけじゃないのだけど、説明し難いので今日はパス。

さぁ逃げよう。
 
 
 
触手 (seedsbook)
2005-06-20 14:52:10
風船かずらの触手は繊細。だけど繊細だけに複雑。

金銀花の触手は。。。もっと大まか。だけど力が強い。

(???)
 
 
 
匂い (shigeyuki)
2005-06-20 19:20:40
「匂い」に巻かれて、突然忘れていた記憶が立ち現れたということは、何度もあります。嗅覚というのは、感覚の中でも記憶に働きかける力が強いように思えます。

「香水」は、読んだことはないのですが、ずっと昔、ミヤギサトシという方の一人芝居を青山円形劇場で見たことがあって、えらく感動した覚えがあります。
 
 
 
shigeyukiさんへ (seedsbook)
2005-06-20 19:43:22
”香水”を一人芝居ですか。どんな演出だったのでしょう。興味あります。

やっぱりそうですか。嗅覚は記憶との結びつきが強いのですね。

面白い事だと思いました。
 
 
 
ミヤギサトシについて (shigeyuki)
2005-06-21 22:40:59
http://www.kunauka.or.jp/jp/index.htm



↑のようなことを、今はやっているようです。さっき調べただけなので、詳細はわかりません。

演出は、説明は難しいのですが、基本的には朗読のようなものでした。とはいっても、本を持って読むというものではありませんでしたが。もしかしたら、落語の延長のようなものと考えてもいいのかもしれませんね。
 
 
 
shigeyukiさんへ (seedsbook)
2005-06-21 22:52:04
インフォメーション有難うございました。なんだか魅力的です。

私は基本的に朗読を聴くのが好きです。

ますます興味。

いつか機会があったら、そういう物が日本で見たいなあ、と思います。
 
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