散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

散歩

2008-10-02 08:31:20 | 写真
右に左にゆらゆらと振り子の様に歩いている後姿はかなり怪しいに違いない。
ましてやいきなり立ち止まってうつむいたり、しゃがんだりしている様子はきっと妙な振る舞いに見えるだろう。青灰色の皮コートの上に真っ赤なリュックサックを背負って腕には黒い傘まで備えている。
道路の亀裂に生えている植物が気になるのだ。敷石の間の苔の帯が長々とつながって私を導く。少し視線を引くと落ち葉が道路に模様を作りこんでいるのに気が付いた。松葉に金色の白樺の葉のあしらい、ところどころに赤いピラカンサの実がちりばめられているのが完璧で、これは偶然ではなく故意に引き合わされたのではないかと思う。濃灰色の背景に描かれて、このまま小紋の柄にして美しい。細長い反物のような道の文様を追っていると、愛らしい古びた石積み家の前に出た。
前庭はうっそうとして、夏草の名残がまだその勢いを見せながら秋草にその場を明け渡すものかと鬩ぎあっている。金色の泡を噴出すアキノキリンソウ、弁慶草のピンク色の波間に、薄紫のアスターが飛沫のごとく飛びちり、、間間には夏色の鮮やかなハナビシソウが句読点のように点在している。玄関の脇には冷たい空気にさらされて紫色に色づいたトマトの苗がその軸を25度ほど傾けて立っている。
にぎやかなその前庭は良く見るとしばらく人の手が入らずにいたらしく、指針を失って暴れ始めようとしている。
手前に茂る枯れ始めたアジサイがなんと美しいことだろう。
庭にカメラを向けては立ったりしゃがんだりしていた私の後ろ姿は巨大な天道虫が右往左往しているかのように見えたかもしれない。私の背中には少し大きすぎる真っ赤なリュックサックは、買ったばかりの果物や野菜が内臓のように詰まっていて、私が動くたびに中身がゆれる。
飛び出した心臓のようなリュックサックがごろんごろんと大きく振れる。