散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

月見草

2005-07-05 04:32:02 | 植物、平行植物
”もうすぐだから、見ていてよ”と知人は私の手を引いて、月見草が群れ生える一角に引き寄せた。
私達は幾人かで月見草の茂みを囲むように息を潜めて待っていた。
蕾がふいに首をひねる。花びらが一枚パラリと動き、ほぐれはじめて少しずつ少しずつ花弁が身をよじりながら開ききるのを見ていたら、息が苦しくなって初めてその間息を詰めていたのに気がついた。
その一叢の月見草はほぼ同時に開花の儀式を終えた。
薄青に染まった空気の中で、滲んだ月のような檸檬色の花から、その色に似た香がふいに鼻先をかすめ通り過ぎていく。

ドイツでは”夜のろうそく””夜花”の名で呼ばれる。
Oenothera biennisは正確に言えば”月見草”ではなく”待つ宵草”だ。
”月見草”といったら白花のOenothera tetrapteraの事。
しかし私は子供の頃からこのレモン色の花を”月見草”と呼んでいたし、私が間違っていようと別に誰も困らないだろうから、いまさら変更する気も無い。
昔は根菜として栽培されたとの事で葉も花もサラダにして食べるし、根はゆがいて食べると美味しいとある。
私は試した事が無いのだが、機会があったらちょっぴり試してみたい。

子供の頃遊びに行った田舎で一人周辺を探索をしていた。
道は乾ききって埃っぽく、道端は丈の高い草が生え、
緑色に紫や黄色のがらを持った大きなアゲハの幼虫が2匹,何を求めてかカラカラの道を横切るのを眺めたり、つま先に触れる小石を蹴りながら歩き回った。
歩き疲れてきた道を戻る頃には陽も傾いて、引き返すと先ほどは気がつかずに通り過ぎた月見草が道なりにズラリとレモン色の灯りをともし私の帰り道を照らしていた。

その時それが”月見草”だと教えらて以来、そのように私の頭の中には分類仕分けされて”月見草”は今だ黄色い花びらを持ったままだ。
でも、”待つ宵草”という名前も好きだけど。。。