独名 Adlerfarn
学名 Pteridium aquilinum
和名 ワラビ
世界中の羊歯の棲息適地に繁殖している一般的によく知られた種類だ。50cmから2mほどに成長するが、条件によっては4mほどにもなるという。4mの羊歯の林を歩いてみたい。古生代の森を歩く気分に違いない。
Adler=鷲 Farn=羊歯植物 の意である。学名 Ptridiumはギリシャ語ptéris=羊歯、éidos=形状 から来ており、aquilinumは鷲の様なという意だそうだ。
名前の由来は葉が"鷲の鉤爪”のように見えるという事によるらしいが、しかしよくみれば葉が勢いよく茂る様子はまるで大きな鳥が翼をひろげた姿のようでもある。
うっそうとしたAdlerfarnの茂みは神秘的で大好きだ。
全草にシアン化水素などの有毒成分が含まれているのでこれを食べて中毒する動物もあるが、人間様はそのくらいの毒など物ともせず手を加えて無毒化し食べてしまう。
食べ物の乏しい時代には食物を探して森や野に出て、色々な植物を腹の足しにしたことだろう。自ら人体実験を繰り返しながら摸索試行し、時には命を落とす者も少なくは無かったろうから命がけだ。
しかし、お金さえあれば美味しい物を何でも入手できるこの飽食の時代にさえ目の色変えて有毒植物を摘み食べようとする。この飽くなき食への希求は一体何なのだろう?
。。話がそれてしまいそうなので、羊歯に戻す。
ところでワラビを食べるのは日本や韓国だけではないようで、ニュージーランドあたりでも食用されるらしい。またカナリア諸島ではワラビ粉でパンを焼くのだそうだが、どんなものだか食べてみたい。
秋に根を収穫し乾燥させて粉に挽けばいわゆるワラビ餅の原料になる。私は子供の頃ワラビ餅というあのふがいない食感は好きではなかった。
特に黄な粉と黒蜜で食べる甘味が好きではなかったということもあるが、今ならワラビ餅が目の前に出てきたら喜んで頂く。
カナダでは羊歯の若い芽を"têtes de violon"(確かにヴァイオリンの糸巻き部分と形状が似ている)といって市場で売っているのを見かけたという話も聴いたので、調べればバターいためやキッシュに焼きこんだり、グラタン、スープにサラダにと新芽のまだぐるりときつく巻いた羊歯の芽を使うレシピが沢山出てきた。成る程ワラビの食べ方としては美味しいに違いなので試してみたい。
(ワラビの乗ったピザなんかもおいしそうだ。)
また他の効用としては、3月から5月までに収穫したAdlerfarnの乾燥葉を靴の中に敷いて履くと疲れた足、冷えた足を癒す効果があるという。
4Lの林檎酢にAdlerfarnの根を含む全草を刻んで3日間漬け込み漉したものは痛風、リュウマチ、こむら返り、火傷に効く家庭薬でもある。
今までに50mもある1000年の古い根株を持つAdlerfarnが発見された事もあるそうである。
そんなことを考えながらどうしようもない人間の一人である私は食欲と止む無き食への希求から森に出かけ、森を壊さぬように気を付けながらワラビをつくづく眺め鑑賞し、そして少しだけ収穫してまるで宝を見つけた如く嬉々として帰路に付く。