宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(9) ヴィラニ・メイン2 アナルシ星域

2012-07-13 | Traveller
 今回はヴォーダン星域の隣に位置するアナルシ星域を紹介します。その昔、タクテクス誌に掲載された「グランドツアー」の第4話『ズリアンの黄金』にて、その存在だけは語られていた、ダアマ、ジェミッド、ニューカッスルの各星系を含む国境地域です。
 前回紹介したヴォーダン星域も含め、本来この周辺は帝国暦1120年代の「新ジル・シルカ」期のシナリオ『The Flaming Eye』(の中の1キャンペーン)の舞台で、資料も本当は(メガトラベラーの)反乱時代に対応しているのですが、今回は1105年設定に合わせて調整を行ったり、「05年頃にはこういう状態になっていた」ことにしたりしました。そのため、「公式資料を参考にした非公式資料」と捉えていただいた方がいいかもしれません。

 なお、ほぼ全星系が俗に言う「ヴィラニ文化圏」に属しているアナルシ星域は、帝国第247艦隊によって守られています。



タクサルーグ Taksarrgh 1701 B624697-9 非工 Va
 この星系は-6750年にヴィラニ人によって植民地化されましたが、入植地は徐々に野蛮化し、最終的には第一帝国の間にヴァルグルの略奪を受けて滅びました。
 ヴァルグルによる新しい植民地は-1978年に築かれ、同時に、古いトンネルの家が(がらくただらけではあるものの)無傷で発見されました。他の住居は、近くの主星や衛星からの強力な潮汐力によって起こされる地震によって倒壊していました。
 トンネルのねぐらは入植者にとって好都合でした。やがて、入植者の共同体は繰り返し小さな群れに分裂したので、新しいトンネルが次々と掘られました。
 現在、主要世界は蜂の巣状に広がったトンネルで覆われたようになっています。さらに、小惑星帯のあらゆる大きな小惑星には、少なくとも1つ以上の集団が住んでいます(※この星系には主要惑星と小惑星帯しかありません)。
 これらのほとんどは、指導者に任命された(商業に専念する)官僚機構によって管理されていますが、当然ヴァルグルの特性として、この指名はしばしば変わります。
 小惑星ズエルーズエラ(Zuerrzuela)は、カリスマ指導者一族のイルコナー(Aelkonar)の根拠地です。イルコナーは兄弟との激しい「喧嘩」の後、家業の従業員の中から支持者を集めて、小惑星に向かいました。
 本星は小惑星を植民地と捉えていますが、小惑星の住民はそう考えてはいません。そして両者の間には戦いが差し迫っています。ヌガス連合の海賊にとっては「強い世界」が彼らの計画には必要なので、このような事態は望んでいません。それでも、一部の熱心なイルコナー支持派の海賊は彼と面談し、タクサルーグの官僚の代わりに彼が全てを支配するこの星系を見てみたいと考えています。

ダススッツ Dathsuts 1703 C210000-9 低人・非工 G Na
 ダススッツ星系にはわずかな期間だけ入植がなされたものの、ほぼ最近まで無視されたままでした。1073年に最新の計器を使った惑星探査が行われ、惑星の地下1kmよりも深い地殻に、高純度のランサナム(lanthanum, ランタン)やツリウム(thulium)の鉱脈が発見されました。
 偵察局は調査のために専門家チームを上陸させました。平均600度にもなる惑星の表面温度は作業を困難にしましたが、5年の間硬い岩盤に穴を開け続け、ついに鉱脈までたどり着きました。結局見つかったのはごく僅かな量でしたが、しかし、どうして自然にこのような高純度の鉱脈が出来上がったかについては、チームの専門家も頭を悩ませました。この件について、最終報告書には「自然の不思議」と記載されています。
 偵察局は、チームが掘り出した全ての鉱物を、更なる研究と展示のためにAABの地質学博物館に送りました。
 それ以後は、時々民間の鉱夫がトンネル内で慎重に探索を行い、幸運を掴んだ少数の者は裕福になれました。
 近年、ダススッツの採鉱者は、若干の奇妙な、説明できない出来事に遭遇しています。例えば、計器が激しく異常な数値を示したり、死の間際に見るような幻想的な世界を目撃したりということです。外世界の専門家は、長期間鉱山トンネル内にいることによる、一種の精神病だろうと説明しています。
 ヴランド星系のイシマガ市にあるAAB(Argushiigi Admegulasha Bilanidin, ヴィラニ語で「ヴィラニの全知識の宝庫」)は、帝国最大の博物館・図書館であり、さらに研究機関と出版社を兼ねたような組織です。第一帝国時代に設立されたAABは、現在も全銀河のあらゆる知識を収集し、『AAB百科全書(The Encyclopedia)』として出版しています。

ロンナイツッツ Rronaetuts 1704 D224142-4 低技・低人・非工 Cs
 小惑星は役に立たず、高温の主要惑星にも資源がないこの星には、特に関心が持たれていません。
(※この星系の地下深くには珪素生命体タギ(Tagi)が住んでいます。-4000年頃、ヴィラニ人はラミル星系(ヴランド宙域 1219)からこのタギを移植し、採掘活動の手伝いをさせました。惑星ロンナイツッツと内惑星エクファア(Ekhfaa)の灼熱の環境でタギは繁殖しましたが、その後鉱石は掘り尽くされて、タギは惑星ごと忘れ去られました。タギは計器には岩にしか見えないため、第三帝国の探査でもこの星には何もないと思われました。タギは長命ですが、出生率が低く、現在両惑星合わせても数百匹しか残っていません)

ウガルン Ugarun 1705 C7C07A8-B 砂漠 G Im
 この星系は聡明な女王、アンマア・ウガルン(Anmaa Ugarun)によって統治されています。

ジガアディグ Zigaadig 1709 B541389-A 貧困・非工・低人 G Im
 ジガアディグは大部分の地表が居住に適さない砂漠となっている暑い世界で、塵の嵐はフィルタマスクの装着を必要とさせます。世界の水界は、両極の塩分濃度の高い海に分けられています。冬期の高緯度帯では、日中は温暖ですが、夜間は薄い大気が熱を保持することができないため氷点下となります。
 唯一の入植地は南極海の島にあります。LSP社がジガアディグ星系内の2つの小惑星帯と、ガスジャイアントの無数の衛星で採掘活動を行い、地元に利用料を払っています。

ニューカッスル Newcastle 1801 C567669-8 農業・肥沃・非工・富裕 G Cs 占領統治
 ニューカッスルの「自然」は、テラ(ソロマニ・リム宙域 1827)から移植された外来種を含んでいます。かつて太古種族は、ここにイルカ(の先祖)の群れを運び、それを支えるために同時にテラの陸地や水中の生態系の一部も持ち込みました。
 しかしイルカの群れはすぐに滅び、今では化石の姿でしか見ることはできません。一方、他の生命体はうまく生き残り、この星の元々の生命体と交雑していきました。結果的に、この星は第一帝国の古生物学者にとっての素敵なパズルとなりました。時は流れてソロマニ人の科学者が研究に加わっても、突然変異が元々のテラの痕跡を不明確にしていました。さらに言えば、太古種族はこの星に人工物を遺しておらず、これらの謎の解明には長い時間が必要となりました。
 入植者にとっては、あつらえたかのように農業に向いたこの星の生態系を存分に堪能できました。短い公転周期(1現地年は約39標準日です)と季節の無さにより、極地を含めて大部分の陸地で作物を生産できました。隣の惑星パーセルズ(Parcells)は惑星改造に向いていて、入植地はそちらにも広がりました。
 ニューカッスルは-5005年の入植当初から栄える、自給自足のできる、いくぶん独善的な世界でした。住民は自分たちでテクノロジーを発展させるよりも、近隣のジェミッド星系と技術と大量の食料を交換していました。
 しかし1101年に、ヴァルグルの海賊団は低TLの防衛力を蹴散らして完全にこの星系を掌握しました。住民のリーダーたちは全員殺されるか投獄され、住民には奇怪なヴァルグル宗教への改宗も要求されました。
 海賊がこのまま居座り続けるか、それとも去ってしまうかは不明ですが、いずれにせよその頃までには惑星の資産は裸にされていることでしょう。
 ニューカッスルの事件は、周辺星域の帝国海軍に警鐘を鳴らし、国境世界における惑星防衛艦(System Defense Boat)の重要性を知らしめました。帝国海軍がこの属領の救援に向かうかはわかっていません。帝国当局はこの件に関する回答を拒否しています。
(※ニューカッスルを支配した海賊の背後には選民教会(Church of the Chosen Ones)がいて、この星の支配権は、アナルシ星域の教会のダイル(Dhaer, 耳)であるオンググゾー(Onggzou)の手の中にあります。なお、住民への改宗要求は後に撤回されました)
(※帝国海軍が救援に来ないのは、実は帝国とは貿易協定(帝国製品の関税の無税化)だけを結んで防衛条約を結んでいなかったからです。また、来るべき辺境戦争に向けた微妙な時期であることも影響しているかもしれません)

 200年ほど前に設立された選民教会(Ourrghfaengaeknokskugvorrgh)は、ヴァルグルによる狂信的集団で、太古種族はテラの犬からヴァルグルを作る際にヴァルグルが銀河の指導者となるように高い能力を与えたのだ、と主張しています。教会は、指導者ライツジサイ(Llaetsdhithae)の下に、信徒の声を聞く役職であるダイルが置かれる組織構造になっています。

ザンノーク Zannokh 1802 B545235-7 低人・肥沃・非工 Na
 ダリイマン伯爵(Count Dariiman)によって治められるザンノークには、北極農地付近にある惑星唯一の町であるエルグザンノーク(Erghzannokh)の1000人弱程度の住民と、外世界から働きに来る小惑星鉱夫や化学労働者ぐらいしかいません。
 大抵このような星には野菜の水耕栽培農場が建設されるものですが、この世界の食料は穀物や、温室では育てられない大きな木の種子に依存しています。
 2現地年に一度、海流の変動により、北極の浜辺周辺に有害な微生物が打ち上げられます。人類の住民は以前から、この疫病の予防接種を受けています(※ヴァルグルはこの事を知りません)。

ロンニ Ronni 1803 C645576-8 農業・肥沃・非工 G Cs
 ヴィラニ人やヴァルグルがこの星を発見する前から、ロンニは群小人類種族の故郷でした。来訪者がやってきた時、ロンニ人は歓迎しました。なぜなら広い大地を耕すには、彼らは少なすぎたからです。
 ヴィラニ人のジャンプ技術には興味を持たず、ロンニ人は根気よく彼ら自身で惑星間の宇宙開発計画を作成し、星系内が自分たちで満たされるとそこに留まりました。
 ロンニ人の平和的な生き方は、他の人類やヴァルグルとの共存を可能としました。昔から、ロンニには人類の国やヴァルグルの国がありました。対立の元はあるにはありました(空気や水をどこの精錬所や製紙工場が汚染したのか等々)が、協力は普通の事でした。この数世紀の間では、希少なこの星の動物を保護するために相互に活動が行われています。
 ロンニ星系の一番外側の惑星には、天文台が建設されています。

カシイン Kashiin 1804 B14089E-7 N 砂漠・貧困 Cs
 この世界は、統合戦争やパクス・ヴィラニカ(ヴィラニ人による平和)の時代から残る、ヴィラニ文化の悪い面の象徴です。
 砂漠の住民が水不足に対処するために最善を尽くしていたため、カシインはかつては革新的な世界でした。しかし新技術の開発は崩壊をもたらすと考えたヴィラニ人の官僚主義がそれを踏みつけ、その代わりに古い考えとやり方が民衆に押し付けられました。住民の熱意は挫かれ、世界は停滞しました。
 第三帝国の成立によって新秩序が確立されましたが、世界は帝国に編入されませんでした。偵察局は、恒星間交流の拡大がカシインの住民に激しいショックを与えると考え、属領の地位で十分だと結論付けたからです。この決定は歴史家以外にはありがたくないものでした。
 現在星系には海軍基地が置かれ、ヌガス連合の動きに眼を光らせています。圧制的な政府の下、住民は鉱石処理工場で働いています。

ラニルソン Ranilson 1807 C999421-9 S 非工 G Im
 大部分の陸地が赤道付近に集まっているラニルソンは、高温多湿でのんびりとした熱帯の楽園です。この星には一時的に(時には終生)世俗から逃れたい人々が集まる傾向があり、住民は日々を適当に生きていくだけで満足しています。宇宙港や偵察局基地、観光産業からの収益は、小さな政府を維持するのに十分です(主にインフラ整備面で)。
 治安レベルが低いのは住民が自由と他者の権利を尊重しているからで、別に犯罪が多いわけではありません。ヌガス連合(ヴァルグル)の侵略を警戒している偵察局は重犯罪者の逮捕に協力し、地元住民はささやかながらも自警団を組織しています。
 テラ原産のスイレンに似た植物であるウラキグムンマミムは、毎年ある一定の時期に大気を汚染するほどの大量の花粉を放出します。これはアレルゲン物質であり、人類の11%(他種族は不明)が呼吸困難で苦しみ、場合によっては治療が必要になります。そうでなくても装備品にはこの迷惑な橙色の花粉への対策を施さなくてはなりません。

グールーク Ghurrllekh 1901 C560558-A C 砂漠・非工 Va
 砂漠世界であるグールークは、ヴィラニ人がジャンプ-2ドライブを完成させた直後に放棄されました。星系内にはガスジャイアントがなく惑星にも水がないため、補給にはあまりにも費用がかかり、植民地を維持することができなかったのです。
 その後、勇敢なヴァルグルが小惑星に価値を見出し、植民地を建設しました。鉱業収入は景気浮揚には十分でしたが、本格的な発展は海賊拠点が置かれて以降のことでした。
 ヌガス連合がリム方面への拡張を企図している、という話が伝わると、グールークは真っ先に加盟を申請しました。それにより鉱石輸出と海賊艦艇へのサービス提供のさらなる市場拡大が期待できるため、政府は宇宙港をBクラスに拡張しようとしています。
 一方で、建設工事により化石化した植物や動物の痕跡が発見されました。これはこの星がまだ「死んで」はいないことを示しており、逆に大量の水がどこに消えたのか説明ができなくなってしまいました。そしてこのままでは、大気中の残りの酸素が数世紀後には失われてしまうことを意味しています。

ジェミッド Gemid 1903 A423979-G N 工業・高技・高人・貧困・非農 G Cs
 帝国市民は、高度にハイテクで有名な武器(主に神経銃器)を購入する以外には、この星を訪れません。
 ジェミッドの多い人口と少ない資源は、老人を儀式的に殺害する習慣につながりました。住民には、子供を作る前に自分の両親が死亡していることが要求されます。もしも子供が産まれる時に死んでいないのであれば、出生の直後に老親は殺されることになっています。
 文化的に、ジェミッドの人々は色々な方面でこの習慣に適応しています。夫婦が(自分たちの親が自然死するような)40代から50代になるまで出産を待つことは一般的です(これはジェミッドの高い医療技術のおかげで可能になっています)。また初老の人は、子供たちのために道を作るべく、早死にを自発的に受け入れます。
 ヴァルグルや近隣の非同盟星系の手にジェミッドの軍事技術が落ちないようにするため、帝国海軍基地が守備を固めています。しかしその風変わり過ぎる文化のため、帝国に世界を併合しようとする動きはありません。

ダアマ Daama 1904 B576438-9 肥沃・非工 G Na
 この過疎の世界の治安レベルは高そうに見えますが、実際には宇宙港の外は無法地帯で、密輸業者の天国となっています(業者の大半は自前の宇宙港を惑星表面に持っています)。非同盟の地位は帝国の規制が及ばないことを意味し、高TLのジェミッド星系の近くにあることで多彩な商品が闇市場で売買されています。星系は安価な燃料のためのガスジャイアントを持ち、帝国国境のそれぞれの世界からジャンプ-2で、星域首都アナルシからジャンプ-3で到達できます。
 「ジェミッド侯爵」の称号は、このダアマの世襲の支配者が名乗っているものです。元々のジェミッド侯爵家はジェミッド(1903)から半径2パーセクの領地を治めていましたが、暗黒時代に領内の星系がそれぞれ独立していき、侯爵領自体がなくなってしまいました。数百年前にダアマの領主がこの称号を復活させましたが、この称号自体は現在の帝国が公式に認めているものではありません。しかし、帝国はダアマと国交を結び、できれば帝国に吸収しようと考えているため、「ジェミッド侯爵」は帝国の国賓待遇となっています。
 現在の侯爵は年齢の割に若く(50歳程度に)見えますが、かなり太っています。逆に、侯爵夫人は本当は夫と不釣り合いなほどに若いのですが(侯爵の34歳年下です)、夫人が老けて見えるため外見からはそうは見えません。
(※著名なジャーナリスト、故テラ・ポーフィリー(Terra Porphyry)氏の遺稿が闇に葬られたとは思えないので、1105年頃のジェミッド侯爵夫妻はダアマで渋々おとなしくしているかもしれません)

エンヴァル Envar 1906 D9C5333-5 S 低技・低人・非工・非水 G Im
 M8V型の主星に照らされる、エンヴァルの極端に高密度かつ低温(-150度)の組み合わせの大気には、「異種大気」の評価となる主に窒素とメタンの他に、十分な量の水素が含まれています。偵察局はエンヴァルの美しいメタンの海に目を奪われながらも、水素の存在を過小評価はしませんでした。エンヴァルには、偵察局の極限環境訓練施設(Extreme Environment Training Facilities)が建設され、天体物理学研究基地も併設されています。
 エンヴァルは、星間物質の欠乏によってガスジャイアントになれなかった「種」であると推測されています。星系内唯一のガスジャイアントが小型であることも、この説を裏付けています。
 エンヴァルの製造能力はTL5程度ですが、(ほぼ全てを外世界からの輸入に頼るとはいえ)誰もが帝国の平均的な技術製品を利用することができます。
 帝国国境に接しているこの星系は、それなりに戦略的に重要ではありますが、仮にこの星が敵の手に落ちたとしても、その敵が得られる利益は少ないでしょう。

カッキイン Kakkin 1907 B423333-B 低人・非工・貧困 G Im
 「カッキイン」とは「ショックのあまり凍りついた人」を意味する古代ソロマニの擬態語であり、第三帝国の第一期探査時にこの星を訪れた偵察局員の反応を表しています。かつてのヴィラニ人による探査結果に誤記載があったのか、この星に偵察局は温暖な植民に適した世界を大きく夢見ていました。しかし実際に彼らが見たものは、珪酸塩の塵が舞う摂氏150度の極薄大気の乾燥世界でした。
 ここでは細々と鉱業が営まれてはいますが、周辺星系と同様に後進世界であることは否めません。地域経済浮揚を目論んで974年に宇宙港はDからBクラスに拡張されましたが、利益を得ることはできませんでした。

ナシャジ Nashazi 1909 A300211-E 高技・真空・低人・非工 Im
 第一帝国の記録によれば、ナシャジに最初の植民地が設立された時、主星デルムドゥシュメラド(Dermudushmerad)は普通の黄白色の主系列星であったとされています。しかしそれは突然に赤色巨星と化し、近接軌道の惑星を飲み込みました。植民地が失われただけでなく、たまたまこの星系を訪れていただけの宇宙船も同じ運命を辿りました。一隻の幸運な船は、何とかガスジャイアントで燃料補給を行い、近隣星系に警告するために逃げることができました。星系への立ち入りは、帝国の天体物理学者以外は禁止されました。
 さらに3世紀後、放浪していた準巨星アムクムクミ(Amkumkumi)が星系に進入し、1つを残して全ての惑星を飲み込むか粉砕しました。残された惑星が今のナシャジです。
 2つの星の軌道が安定するのに何世紀も必要でした。その間星系は立入禁止のままでしたが、1000年の安定を経て、第三帝国は立入禁止を解除しました。
 しかしこの星系の過去は、人々を近寄らせませんでした。更なる災害への危惧や、星系内に死んだ入植者の幽霊が出没するという噂が、人々を恐れさせています。
 メガコーポレーションのナアシルカは、人工知能研究所をこの地に設立しました。また、粉砕された惑星の残滓を採掘する許可証が販売されています。

ガドゥシャン Gadushan 2005 C536488-B S 非工 Im
 ガドゥシャンは、主星のM4III型赤色巨星ガドゥクン・アン(Gadukun-an)を周回する、F5III型の黄白色巨星である伴星ガドゥクン・ビー(Gadukun-be)の軌道上にあります。この星系内の力学を研究することは天体物理学者には抗しがたい魅力であり、研究施設が数世紀前に建設されました。
 伴星から5AUほど離れているにも関わらず、ガドゥシャンの平均気温は60度にも達し、地元住民が「海で溺れるのは無理」と冗談で言うほど、海洋の塩分濃度は高くなっています。
 日中は非常に蒸しますが、ガドゥシャンの大気はその暖かさを保つにはあまりにも薄いため、夜は非常に冷え込みます。気温は速やかに-100度まで低下し、21標準時間の夜の間は激しい暴風雨に見舞われ、やがて大気ごと凍結します。
 幸いにも伴星は主星から39AUも離れているので、ガドゥシャンは灼熱の星とはなりませんでしたが、それでもこの星の「夏」には主星の輝きが影響しています。
 ガドゥシャンには生命体が存在し、全てが水中に存在します。植物と魚たちは、高濃度の塩分に対して驚くほど高い耐性を持つよう進化しました。海の透明度が低いため、全ての水棲生物は視力を持ちません。彼らは眼の代わりに、周囲の高濃度の塩分を利用して、電界の変化を感じ取る器官を発達させました。
 偵察局基地や研究施設と関係を持たない住民は、惑星上や2つの巨星の間に横たわる小惑星帯での鉱物の採掘で生計を立てています。

ニイトモク Niitomok 2006 C552595-A 非工・貧困 G Im
 ニイトモクはガスジャイアントの軌道を周回する非常に寒冷な惑星です。M4V型主星がかろうじて大気を凍結させない程度の熱を供給し、地熱は南極の荒れ地や群島部の氷を溶かしています。そして安価な地熱発電はここに住む数少ない住民の需要を満たしています。
 鉱物の鉱脈の存在により、この世界がヴィラニ・メイン内で賑わった時期もありましたが、今では最大のものも掘り尽くされ、新たな鉱脈の捜索もなされていません。

ミイコ・ベルト Miiko Belt 2101 C000234-8 小惑・低人・非工 Cs
 ここの二重小惑星帯の鉱物は第一帝国期に掘り尽くされたと考えられ、マキドカルンはソロマニ人のシンゾウ・ワタナベに安く星系を売却しました。彼は星系に妻ミイコの名を付け、この星の鉱業を再興させました。
 しかし時が経つにつれ、ワタナベ家は宇宙鉱夫や鉱石処理会社から過大な料金を搾取するようになり、収益は基盤整備や新事業への投資ではなく私的な贅沢に浪費されました。多くの鉱夫が嫌気が差してここを去った後でも、一族はその資産で長く暮らすことができました。
 ワタナベ家が防衛用の傭兵を雇うことができなくなる程に資産を使い尽くすと、彼らは帝国に従属を申し入れて星系防衛の責任を帝国に持たせました。同時にヴァルグルの貿易商人を呼び込んで、しばらくは商業活動による好景気を謳歌しました。
 しかしワタナベ家は過去の教訓に学ばなかったので、やがて真っ当なヴァルグル商人は立ち寄らなくなりました。小戦力だったとはいえ帝国軍も撤退し、代わりに海賊船や闇社会の私掠船が宇宙港を占めるようになって、社会は荒廃しました。ワタナベ家も今や統治者とは名ばかりで、海賊たちの傀儡のような有様です。
(※明記はないですが、マキドカルンがこの近辺の小惑星帯を手放したのは第二帝国初期ではないかと思われます)
 
フテー・ハット Hteh Hut 2103 A000546-E 高技・小惑・非工 G Cs
 鉱物が採掘され尽くした世界と思われていたこの地を、マキドカルンは捨て値でソロマニ人経営者ジャン・フテー(Jan Hteh)とその家族に売却しました。フテーは、この小惑星帯にはまだ採掘の余地がある方に賭けました。
 結果的に、彼は正しかったのです。鉱石販売からの利益は、インフラの改善と技術発展に投資されました。続いて、彼らが採掘した鉱石を加工するための精錬所が建設され、企業にさらなる利益をもたらしました。フテー一族は代々繁栄を謳歌し、彼らの「小屋」を他者にも開放しました。
 一族は独立を失うことは望まなかったので、帝国には加盟せず、属領の地位を欲しました。また、取引先にはヴァルグル企業も含まれ、一族は銀河核方向の隣人からも十分な好意を得ています。

ニンニガム Ninnigam 2105 C9A57A6-9 S 非水 Im
 窒素とメタンの大気を持ち、メタンの海がある、非常に寒冷な惑星であるニンニガムは、エンヴァル(1906)の姉妹星とも言われますが、主星の働きによってエンヴァルより50度も暖かく、不安要素となる水素もありません。
 フテー・ハット(2103)と同じく、ここの小惑星帯は掘り尽くされたと考えられていましたが、リムシュ・ニンニガム(Limshu Ninnigam)はマキドカルンからこの星系を購入し、投資に見合った利益を得ました。しかしジャン・フテーと異なり、リムシュはその利益を分けあったり、技術基盤に投資することに興味がありませんでした。彼は自分の封土をこの星に確立し、高額な採掘権を鉱夫たちに課しました。星系内にはガスジャイアントがなく、宇宙船の燃料代は高く保たれたので、多くの鉱夫たちはアナルシ(2205)で往復分の燃料を補給してから、ニンニガムにジャンプしていました。
 一方で無許可で小惑星帯の採掘をしているのを発見されれば、密掘した鉱石全てを、時折宇宙船までも没収されるほど、その罰は厳しいものがありました。
 一時は密輸の抜け道として利用されていたこの星でしたが、傭兵や賞金稼ぎが法の執行者として領主から許可証を得るようになったため、犯罪者たちは割に合わないとして多くが引き上げました。また星系外周に建設された偵察局基地の存在も、彼らにとっては厄介に映りました。

アングヴァイ Angvae 2203 C657510-7 C 農業・肥沃・非工 Va
 ヴァルグルの伝承に、アングヴァイという名の伝説的な海賊の話があります。彼は千年前にヴァルグルの商取引における行動規範を確立したと言われています。商売や知的職業の分野での成功を願う多くの親は「仔犬」に彼の名を名付け、いくつかの海賊団は名誉あるアングヴァイの名を戴きました。
 アングヴァイ星系は、お約束通りに海賊基地を抱え、全ての海賊船は自由に施設を利用できます。
 この世界の兄弟姉妹には団結精神(esprit de corps)が存在します。海賊の船長はアングヴァイの伝説に敬意を払い、暴力に訴えることをあえてしません。
 AMC(Angvae Memorial Corporation, アングヴァイ記念社)は宇宙港と海賊船基地を管理しています。サービス料収入や寄付金もありますが、社の利益の大半は農業輸出によるものです。AMCは、アングヴァイの慈悲の精神に則って、ここで取引している貿易商人が煩わされることがないよう海賊船に求めています。ただし、「たまたま通っただけ」の商人に同じ慈悲をかけるかどうかまでは関知していません。

アナルシ Anarsi 2205 B7479EA-E 工業・高技・高人・肥沃 G Im 星域首都
 黄色と赤の両巨星の潮汐力が誘発する地震や、恒星フレアの影響を避けるため、アナルシの人々は知識を崇め、追求するようになりました。一般的な宗教独裁政権ほどではないですが、大教授(Grand Professors)たちを中心とするアナルシ社会は強権的ではあります。
 アナルシでは、武器、薬物、性風俗は「感情を病ませる」として禁止されており、さらに音楽も「情熱は悲しみと同じぐらい悪いもの」として顰蹙を買います。許されているスポーツは健康を増進する程度のもので、チーム競技は争いを呼ぶので良くないとされています。また芸術は軽視されています。
 アナルシが技術的に進歩していくうちに、「過剰なもの」を省き、「もうそれで十分だろう」とする気風が生まれました。アナルシにはAタイプ宇宙港を持つだけの潜在力がありますが、住民たちは「Bタイプで十分だ」と考えています。

クザシャミル Kuzashamir 2208 E546853-7 肥沃 Im
 かつては、広範囲に行われた小惑星帯の採掘と鉱石処理による、評価の高い工業世界でした。暗黒時代に起きた2つの支配派閥による核戦争は、住民をほとんど絶滅に追いやりましたが、外世界からの援助なしに惑星とこの星の住民は復活を遂げました。
 星系にはガスジャイアントが欠けているため、宇宙船の燃料補給に彗星や惑星表面から氷をかき集めなくてはならず、この星への訪問の障害となっています。
 現在、鉱物の豊かな小惑星に地方港を建設するために、マキドカルンが投資ファンドを募っています。

ナイグーゾカ Knaeghzoka 2301 B4317A6-A 非農・貧困 G Cs
 ナイグーゾカは非常に寒冷で、自転を固定された世界です。昼側ですら気温はようやく0度に達する程度です。貿易分類は「氷結」になっていませんが、惑星上の全ての貴重な水分は氷の中に閉じ込められています。
 この世界の魅力は鉱物にあります。希土類の大きな鉱脈がここにあり、鉱業が主要な産業となっています。そして同時に帝国とヴァルグル領を結ぶ仲介者でもあり、かなりの量の取引がこの星系で行われています。
 ナイグーゾカ家は、すぐに変節する隣人への「忠誠賭博」をするよりも、帝国の属領である方が利益となると考えており、ヌガス連合を含めたヴァルグル諸国もそれを尊重しています。しかし一部のヴァルグル組織はここを革命の輸出先と捉えています。
(※明記はないですが、ナイグーゾカ家はヴァルグルの一族でしょう)

ボルジイン Bolziin 2308 B210212-C N 高技・低人・非工 G Im
 地球人が第一帝国を征服した際、ヴィラニ3部局は自身の資産を二束三文で売却せざるを得なくなりました。こうして切り離されたナアシルカの宇宙船部品製造部門は、最終的にアントワン・ボルジインに買収されてボルジイン・エンジニアリング社と名を変え、社の主要な製造施設があったこの世界には所有者であるボルジインの名が付けられました。
 以後同社は安定して成功を収めていました。宇宙船建造には直接携わらないものの多くの宇宙船で使用される部品を製造し、特に旧式宇宙船の交換部品の制作を得意としています。
 その部品の一番の納入先である帝国海軍は、海軍基地を施設の安全を確保するために建設しました。
(※人口が少ないので貿易分類が実態を反映しない「非工業」に分類されていますが、これは経費を抑えるために製造ラインの自動化が過度に進んだ結果のようです)

デグララアルビイス Deglaraarbiis 2210 E737725-7 G Im
 この星は、隣接するフリーレ星系(ヴランド宙域 2111)の人口過密状態の解決策として植民されました。政府は直接民主制で、世界の誰もが意見を述べて政治に参加できることが憲章に記載されています。
 入植者の第一世代は圧倒的多数で宇宙港の建設を否決しました。その理由は「ガスジャイアントを使えばいいではないか」ということでした。
 公共事業は資金を必要としますが、住民は税を払うよりはなるべく払わない方を求めます。現状を混乱させるようであれば、民間企業の進出すら投票で否決されます。結果的に、経済と文明は停滞してしまいました。
 「無関心」「孤立主義者」という形容詞は、この星の住民を記述するのに用いられます。外世界人にとってはこの星は、不機嫌や欲求不満にさせられる存在です。

クフォールゾー Kfoerudzo 2402 B559253-D 高技・低人・非工 G Va
 クフォールゾーの一党は、994年にこの世界を手に入れるために他の集団を退けました。海賊生活に疲れていた長は、帝国が敵ではなく良い取引相手になると認識し、星系内での海賊行為を全て禁止しました。堅気の商人となる気がある海賊は、ここで合法的な商売をすることが許されました。
 その後この星は、交易や低額な取引手数料で成功しました。海賊団や帝国は彼らの規則を尊重し、争いを避け、その結果長期に渡る公共投資が実現できたのです。

シャビイ Shabii 2408 B854010-A 低人・肥沃・非工 G Im
 シャビイは、メガコーポレーションのマキドカルンのための倉庫世界です。惑星表面の数千平方キロメートルの敷地には、機械化された倉庫施設や着陸エリアが備えられています。

(※ニューカッスル事件は、なぜかその後の資料では「1104年」に起きたことになっていますが、誤植が公式化した可能性も否定できないため、今回は1101年説を採用しました)
(※『First Survey』では、エンヴァル(1906)およびヘルヴァプレイス(2106)に太古種族の遺跡があることになっていますが、後にT5 Second Surveyで否定されました)


【参考文献】
・Travellers' Digest #4 (Digest Group Publications)
・Vilani & Vargr (Digest Group Publications)
・The Flaming Eye (Digest Group Publications)
・Rebellion Sourcebook (Game Designers' Workshop)
・Traveller in the DED Zone
ジャンル:
その他
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