スコッチダイアリー

盛岡の小さなショットバー「スコッチハウス」のサトコママの日記帳です。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

ウイスキーオデッセイ2 ~鎌倉書房の仕事~

2008年09月28日 | Weblog
マイケルジャクソンの「世界のウイスキー」を出版した鎌倉書房は、1988年(昭和63年)に「乾杯」という季刊誌を創刊しました。当時は翌1989年(平成元年)に酒税法が改正になることがすでに決まっており、従価税が撤廃されるため値段の高かったウイスキー、ワイン等の国内価格が一般の家庭でも手の届くところまで下がってくるのを見越した出版社が「将来なるであろうウイスキー、ワインの消費者」へ向けて出した雑誌です。

メイン記事は「冷たい霧の中で成熟するスコッチ」「芽吹きはじめて春を待つボルドー」「光と影が育む南イタリアのワイン」と、いまでもそそられるタイトル。そして特筆すべき記事がもうひとつ。それがウォーレス・ミルロイの「モルトウイスキーテイスティングガイド」です。当時、英国で最も権威のあったモルト・ウイスキーの本を全訳したものを、地域別に何回かにわたって掲載したのです。

当時スコッチハウスのマスターはまだ一個人で、ウイスキーに強い酒屋さんと郵便で注文表をやりとりしてはスコッチを集めていました。資料といえば名酒事典や橋口氏の著書くらいでしたから、邦訳されたミルロイのガイドは文字通り第一級の資料でした。名酒事典に載っていないモルトウイスキーがすべて紹介されていて、その後マスターがイギリスに行った時そのコピーを持って行って参考にしたのでした。

ミルロイの「モルトウイスキーテイスティングガイド」とならんで1989年英国で出版されたのがマイケル・ジャクソンの「モルトウイスキーコンパニオン」です。マスターはこの英語版もいちはやく入手しています。

雑誌掲載ののち書籍化されると思われたミルロイの「ガイド」ですが出版には至りませんでした。マイケル・ジャクソンの「コンパニオン」は2000年に小学館が邦訳出版するまでほぼ十年かかっています。

ウイスキー・コンパニオンの邦訳の出版は小学館のY氏の素晴らしい仕事ですが、それに先立つ10数年前、同じようにスコッチウイスキーを世に広め、出版の流れをつくった編集者が鎌倉書房にいたのです。私は名前も知らないその方に心から敬意を表したいと思います。

その後「乾杯」は26号まで発行され、1994年鎌倉書房の突然の倒産により終刊しました。マスターは全冊持っていて今でも大切にしています。画像は創刊号と最終となった第26号です。

付記
この項を書きあげたあと、マスターが何やら探しものを。そしてミルロイのテイスティングガイドの日本語版「スコッチモルト・ウイスキーガイド」を本棚から発見しました。1990年刊。定価2000円。鎌倉書房はちゃんと出していました。
コメント (3)

ウイスキーオデッセイ ~故マイケルジャクソンへ~

2008年09月03日 | Weblog
スコッチハウスHPのウイスキーコレクションを時々手直ししていますが、その説明文にマイケルジャクソン著「世界のウイスキー」がしょっちゅうでてきます。曰く「マイケルジャクソンが世界のウイスキーを執筆中だった1980年当時○○のオフィシャルは入手困難だった。」となんだか決まり文句になってしまった感が。

その「世界のウイスキー」ですが立派な装丁の本です。英語版は1987年刊。日本語版は定価12,000円で1989年鎌倉書房から出ています。写真は英語版と日本語版です。鎌倉書房がその後潰れてしまい現在は絶版。「よくこの時代に、こんな本出せたねえ」と感心していたら「だから出版社が倒産したんだ」というしごくもっともな答えがマスターからかえってきました。

日本語版が出版されるまでは、英語版の入手も大変で、グラスゴーのマスターに頼まれてようやく取り寄せできたと思ったらフランス語版でがっかり、なんていう話も残っています。やはり洋書は東京で探す方がはやく、日本橋の丸善と銀座のイエナは、行けば必ずのぞいていました。

「世界のウイスキー」は、内容はウイスキーの辞典なんですが、説明のはしばしに詩情のようなものを感じます。マイケルジャクソンがひとつの蒸留所の記事を書くためにはるばるスコットランドを旅して、ようやくそこにたどりついた時の感動がそのまま記述に出ているのです。指先一本でなんでも調べられる今とは違い、ちゃんと足をつかって対象を見にいっているんですね。

映画「2001年宇宙の旅」はスペースオデッセイだけどマイケルジャクソンの「世界のウイスキー」はウイスキー版のオデッセイなんだ、とマスターがしみじみ言いました。こういう広がりが、人がウイスキーに魅せられるゆえんなのでしょう。

コメント (2)