イタリアンでも食べルッカ

おいしい物と個性豊かな料理人達に囲まれた料理学校での日常記

11月19日・名匠シリーズ第一弾・アルヴァーロ先生

2007-11-21 16:44:44 | 料理学院
11月19日(月曜) 講師:アルヴァーロ先生(トスカーナ州モンテカティーニ・テルメ)

さて先週来られるはずだったロランド先生の講習が明日にずれこんだので、週末に登場するジャンルーカとあわせて、司厨士協会の料理の名匠3人が勢ぞろいする1週間がスタート。トップバッターはスピードにかけては当校の全講師中一、二を争う、いわば短距離走者のアルヴァーロ先生である。
先生の奉職するホテルは、というよりモンテカティーニ・テルメという湯治場・保養地じたいが春から秋にかけての季節営業の町なので、先生は1週間ほど前からいわばヴァカンスに入っている。もちろん司厨士協会の理事としての用事もあり、コンサルティング業もしているので無為に日を過ごしているわけではないのだが、やはりなんとなく表情にゆとりが感じられ、マッハ級とうたわれる動きもやや普通の人間の速度に近づきつつある(めでたい)。しかし来週は「200人規模のパーティーが2つ」入っているのでレストランだけは臨時営業、それを4~5人でこなすのでやはり効率よく作れるよううまく考えたメニューが多い。

24日目の昼食:
Tartar di tonno in purezza con panzanella all’aceto rosso 固くなったパンの利用法として夏のトスカーナではおなじみのパンのサラダ・パンツァネッラと、牛肉ならぬマグロのタルタルの組み合わせ。パンツァネッラには野菜がたっぷり入るし、オリーブオイルはマグロのほうにしか使わないし、で爽やかかつヘルシーな前菜。みんな野菜は好き、サラダは大好きなので「赤ワインビネガーの酸味がいいよね~」と評しながら食べる。でも酸味の利いた白い炭水化物の上に塩味のきいたマグロを乗せるというのは、先生は言わなかったがスシがヒントになっているのでは……?
Stracci di pasta fresca alle triglie e filacci di zucchine stracciとは「ぼろきれ」のこと。やれフェットゥッチーネだのタリオリーニだの、長さも幅も揃えて切るパスタではなく、一応包丁やパイカッターも使いながら、でも不規則に切るパスタをよくこう呼ぶ。でも先生はまだるっこしいのか、写真用に1皿だけ作った分は手で不規則に「ひきちぎりながら」(と呼ぶのが最もふさわしい)ゆでた。ソースはヒメジと、緑の部分だけ千切りにしたズッキーニ。ヒメジはお腹を取ってうろこをはね、三枚におろしてから切り身にするのだが、小さい魚なので熱中するとどうしても姿勢が前かがみになる。「もっと背筋を伸ばして、腕を根元から使えるようにして作業しなさい。今日の分量なら今の姿勢でもいいが、おろさなきゃいけないヒメジが5キロ届いたら、背中が折れちゃうよ」。ヒメジを5キロねえ……家庭料理ではまず考えられないけど。さすが数百人規模のパーティー料理に慣れている人は言うことが違う。パスタ生地は伝統的なpasta all’uovo(卵風味の生地)で作ったのでシコシコした歯ごたえは好ましいが、魚のソースだから、個人的にはもう少し卵の割合が少ないほうが味の上では好みかも……。
Involtini di pesce spada farciti di pinoli tostati uva passa e erbette (写真)色よく炒った松の実、レーズン、ハーブ、パン粉を使った具を巻き込んだカジキマグロのロール巻き。松の実とレーズンというのは、トスカーナ内陸部でも古くから伝わる組み合わせだが、パン粉が入ると気のせいか一気に地中海風になる気がする。カラブリア料理と言われても信じてしまいそう。色よくゆでたさやいんげんを添えて。
Semifreddo al gorgonzola piccante イタリアでも「ティラミス」にマスカルポーネは使うし、アメリカの「チーズケーキ」の影響もあってチーズのお菓子は珍しくなくなってきているが、ゴルゴンゾーラを使うのは珍しい。レシピを見た瞬間にそう思ったが、先生も再三そう言ったので本当だと思う。チーズの大好きなカルリーンは料理名を見たとたんに顔がほころび、製作過程を見て感動し、食べて恍惚としていた。半信半疑で口に運ぶと、全然奇妙な味でもなんでもなく、ほのかな甘みと芳醇なミルクの重厚感が同時に味わえる、チーズ愛好家にはお薦めの一品。ただしこの「ほのかな甘み」を演出するにあたっては砂糖と生クリームと砂糖漬けフルーツが大量に投入されているので、食べる人は決して深く考えたりカロリーを計算したりしてはなりません。
Caffè エスプレッソコーヒー

24日目の夕食:
イタリアに来てから本当においしいピッツァを食べたことがない(あるいは、本人は食べたと思っているかもしれないが、店の名を聞いた限り「もっとおいしい店があるのに……」と思わざるを得ない)人ばかりであることが先週判明し、ルッカ近郊のノッツァーノにあるピッツエリア=トラットリアにて。ここの城砦跡では毎年9月1日に「中世風夕食会」が開かれ、ジャンルーカはその料理を担当しているので詳しいのである。
フォカッチャ(塩加減がぴったり)、マルゲリータ、ズッキーニ、とうがらしの効いたサラミ入り、キノコ入り、ストラッキーノチーズとハム、ここまでが「食事」部分。続いて「デザート」部分はマスカルポーネとヌテッラ入り、それに「モー」ソースとバナナのピッツァ。「モー」ソースはたぶんカラメルソースと生クリームベースと思われるが、絶品。飲み物はノヴェッロ(新酒。フランス語で言うと「ヌーヴォー」)、ビール、なぜか1人だけファンタオレンジ。
向かいに座った生徒さんと雑談を交わすうち、お互い長年の映画、特にイタリア映画のファンであることが判明し、会話の80%は映画の話。うち80%は映画に出てくる食べ物の話。残る20%の話のうちから、今日の先生アルヴァーロ先生が奉職するホテルが、ソ連映画『黒い瞳』やフェリーニの『8 1/2』に登場する保養地の舞台になっている話、ルッカにジェーン・カンピオンの『ある婦人の肖像』のロケに使われた館がある話、ルキノ・ヴィスコンティ監督の遺作『イノセント』で主人公の屋敷として撮影に使われた館Villa Realeがルッカの郊外にあるという情報が浮上する。Villa Realeが一般公開されているかどうかは調べていないのだが、公開されているのなら是非行ってみたい。

11月18日(日曜)のメニュー

2007-11-21 02:44:17 | 料理学院
11月18日(日曜)

昨日がパルマ(パルメザンチーズ工場見学)、モデナ(バルサミコ酢醸造所見学)の遠足だったので今日は振り替え休日。ピサに行った人、フィレンツェに行った人、ルッカに行った人、家でごろごろした人、いろいろ。

Minestrone ミネストローネ 今日のような冷え込む夜にはピッタリ。ちなみに最近朝夕の外気温は零下です。
Coppa コッパ 本科の講習でジュリオさんと作ったもの。豚肩ロースを使用。柔らかくてみずみずしくて美味しいんですが、ちょっと胡椒がききすぎ(ワインをしこたま飲めば問題はない!?)
Verdure bollite (fagiolini, zucchini, carciofi, finocchi, patate) ゆで野菜盛り合わせ(さやいんげん、ズッキーニ、アーティチョーク、フェンネル、じゃがいも)オリーブオイルと塩で。
Torta con becchi (d’erba, d’amaretti, di cioccolato) ルッカの伝統菓子。タルト生地のふちをくちばし(becco)のように三角に折り返すのでこの名あり。ビエトラを使った青菜バージョン、アマレッティというビスケットを使ったバージョン、チョコレートバージョンの3つ。
Mattonella di cioccolato 先週、マヌエラ先生の講習で作ったもの。
Vin Santo ヴィンサント 今日のお菓子に相性がよい、というのでまたまた登場。
Caffè エスプレッソコーヒー