11月12日(月曜) 講師:ジャンルーカ先生(その3)
狩人だの密猟者だののことばかり調べていたら、実にタイミングよく登場するジビエ料理の数々。思ったとおり「カッチャトーラ(狩人風)」はひとつもない。ここのレストランのシェフの1人シモネッタにも聞いてみたが、「シカやキジはうちの店ではやらないから断言できないけど、イノシシの利用法といえばサラミを作るか、料理するならin umidoよ」。「in umidoの場合、トマトは入る?」「ふつう入れるわ」。やっぱりそうか。リゾットのソースはよくキジで作るが、きょうはメインでもキジを使うのでマガモに変更。シエナ時代にひょんなきっかけでヒナをもらったので学校で育てた経験があるが、案外育てやすい。現に、北イタリアでは飼育しているところがあるそうだ。来週はフランス鴨(マスコビーダック)が登場する予定だが、これも非常に大人しくて飼いやすい鳥らしい。やっぱりキジと比べるとイノシシと豚、あるいはイノブタくらいの違いがあり、体脂肪率が高く体型もプヨプヨしている。これならぶつ切りにしてすぐ鍋に入れられるが、マラソン選手より体脂肪率が低そうなキジはまず赤ワイン風呂に入っていただき、2時間くらいたってからやっと火にかけられるのだ。やっぱりジビエは手がかかるから、密猟者には無理だわい。
ところでINAさん、エンリカ先生から追加情報が入りましたが、密猟者のジビエに関してもし料理法に違いがあるとすれば、彼らのとる動物は狩猟をいっさい禁止されているものが多いし、また解禁期なら獲ってもいい動物を禁猟期に取った場合も、一般のジビエの肉より長く熟成(frollatura)させなければ使えないのが普通だそうです。まさかその違いが反映されたレシピなんかは、あったとしても闇の世界でしか流通していないと思うけど、念のため。
ところで先週末に、後半の2週間だけ参加する生徒さんが加わったが、2人も女性なので相変わらず男子は1名だけという「女子校状態」が続いている、かと思ったら今日から1週間だけ参加するという男性が登場。名前はジーノさんといい、出身は南米のベネズエラ。イタリア在住20年なのでイタリア語はもちろんペラペラ。初日なのに実に動きがよく、目端がきき、質問の内容が素人ばなれしている。はたして本職はバールの経営者。毎日14時間働いているのに「パニーノやサラダだけじゃなく、温かい料理も出したくなって」勉強に来たのだそうだ。
17日目の昼食:
Risotto alla parmigiana con ragù di germano reale e funghetti 白玉ねぎをベースにまず普通のリゾットを作り、仕上げにパルメザンチーズをたっぷり加える。そこにマガモで作ったキノコ入りミートソースを、ちょうど(例えは悪いが)カレーライスのようにトッピング。
Tartara di manzo con cuori di sedano e champignons al profumo di tartufo 牛生ミンチのタルタルに、トリュフオイルをベースにしたドレッシングで和えたセロリとマッシュルームの組み合わせ。
Insalata di sedano e champignons セロリとマッシュルームのサラダ 野菜だけ余ってしまったのでドレッシングだけ作り直してサラダに。
Fagottini di castagne alla crema di nocciole クレープ生地と中身のクリーム、両方に栗の入った「茶巾包み」。ソースはヘーゼルナッツクリーム。ジビエ料理の後には、こういうドライフルーツ系のお菓子が合うそうです。手作りのマロングラッセを添えて。
Caffè エスプレッソコーヒー
と思っていたら、またもや女性が2人連れでやってきた。しかも騒がしさは常人の5倍くらいある人たちが。そう、毎年この時期と4月にナポリから到来する(こっちが呼んでるんですが)、マリーザ先生と娘のルチアーナという名のダブル大型台風がやってきたのだ。今回はフィレンツェまで列車、あとはバスでルッカまで到着したが、ジャンルーカが途中こまめに携帯にメールを送ったおかげで、乗り遅れもなく、荷物の取り間違いもなく、スリにも遭わずにキセキのように時間通り学校に到着。さっそく食堂に乗り込んでは、初対面の生徒さんばかりなのにいきなり抱きついてホッペにキスするわ、抱きしめるわのテンションの高さに、日本男子代表のヨシさんはいつもにも増して寡黙だった気がする……。もしかしたら明日はさらにもう1名男子が増えるかも、という情報もあるから頑張って~。
17日目の夕食:
Pasta al ferretto con ragù di agnello こちらのパスタ料理は南イタリア風で、子羊のミートソース。わざとミンチにはせず、包丁で細かくたたいて使用。生地はデュラム小麦の小麦粉とセモリナ粉を混ぜて作り、竹串を利用してストローのように成形。昔、お金を出して調理用具を買うなどというゼイタクは許されなかった時代の女性たちは、編み物用の針を利用していたそうだ。当時の編み針は鉄(ferro)製だったようで、いまだに料理名に名をとどめている。そういえば15年ほど前に急に編み物がしたくなり、シエナで毛糸屋に行ったら針が全部金属製だったっけ。竹針に馴れた手には重くてしかたないんだけど、よく昔の人は腱鞘炎にならなかったものだ。
Mozzarella alla bufala 水牛のモッツァレッラ 先生がナポリから買って来てくださったおみやげ。口にしての第一印象は、思いのほか塩味がしっかりついていること。次に、味が濃厚で繊維がしっかり詰まっていること。水牛のモッツァレッラというふれこみのチーズには偽物が多いそうだが、切り口からにじみだす液も芳醇なミルク色をしているこれは、まさしく本物。
Fagiano in umido con olive キジの煮込み、オリーブ入り(写真) 出ました出ました、INAさんご用達の煮込みが。「オリーブ入り」とわざわざことわっているところを見ると、普通煮込みにはオリーブは入れないものなのですかね。赤ワインと香味料(ジュニパーベリー、ローリエ、セージ、オリーブ、にんにく、そうそうキジには脂分がほとんどないからパンチェッタも)等々に2時間以上漬け込んでからまず肉だけ炒め、臭みのある汁を全部出させてしまってから改めてマリネ液で煮込む。これはトマトの入らない珍しいバージョンだが、白ワインとトマトを使うバージョンも別の先生で見たことがある。
Rapini saltati in padella かぶらと菜ばなの合いの子みたいな「かぶらブロッコリー」を塩ゆでし、細かく刻んで「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ(にんにく、オリーブオイル、とうがらし)」でソテー。ほうれん草やビエトラでも作るが、やっぱりrapiniのが一番おいしいと思う。
Caffè エスプレッソコーヒー
狩人だの密猟者だののことばかり調べていたら、実にタイミングよく登場するジビエ料理の数々。思ったとおり「カッチャトーラ(狩人風)」はひとつもない。ここのレストランのシェフの1人シモネッタにも聞いてみたが、「シカやキジはうちの店ではやらないから断言できないけど、イノシシの利用法といえばサラミを作るか、料理するならin umidoよ」。「in umidoの場合、トマトは入る?」「ふつう入れるわ」。やっぱりそうか。リゾットのソースはよくキジで作るが、きょうはメインでもキジを使うのでマガモに変更。シエナ時代にひょんなきっかけでヒナをもらったので学校で育てた経験があるが、案外育てやすい。現に、北イタリアでは飼育しているところがあるそうだ。来週はフランス鴨(マスコビーダック)が登場する予定だが、これも非常に大人しくて飼いやすい鳥らしい。やっぱりキジと比べるとイノシシと豚、あるいはイノブタくらいの違いがあり、体脂肪率が高く体型もプヨプヨしている。これならぶつ切りにしてすぐ鍋に入れられるが、マラソン選手より体脂肪率が低そうなキジはまず赤ワイン風呂に入っていただき、2時間くらいたってからやっと火にかけられるのだ。やっぱりジビエは手がかかるから、密猟者には無理だわい。
ところでINAさん、エンリカ先生から追加情報が入りましたが、密猟者のジビエに関してもし料理法に違いがあるとすれば、彼らのとる動物は狩猟をいっさい禁止されているものが多いし、また解禁期なら獲ってもいい動物を禁猟期に取った場合も、一般のジビエの肉より長く熟成(frollatura)させなければ使えないのが普通だそうです。まさかその違いが反映されたレシピなんかは、あったとしても闇の世界でしか流通していないと思うけど、念のため。
ところで先週末に、後半の2週間だけ参加する生徒さんが加わったが、2人も女性なので相変わらず男子は1名だけという「女子校状態」が続いている、かと思ったら今日から1週間だけ参加するという男性が登場。名前はジーノさんといい、出身は南米のベネズエラ。イタリア在住20年なのでイタリア語はもちろんペラペラ。初日なのに実に動きがよく、目端がきき、質問の内容が素人ばなれしている。はたして本職はバールの経営者。毎日14時間働いているのに「パニーノやサラダだけじゃなく、温かい料理も出したくなって」勉強に来たのだそうだ。
17日目の昼食:
Risotto alla parmigiana con ragù di germano reale e funghetti 白玉ねぎをベースにまず普通のリゾットを作り、仕上げにパルメザンチーズをたっぷり加える。そこにマガモで作ったキノコ入りミートソースを、ちょうど(例えは悪いが)カレーライスのようにトッピング。
Tartara di manzo con cuori di sedano e champignons al profumo di tartufo 牛生ミンチのタルタルに、トリュフオイルをベースにしたドレッシングで和えたセロリとマッシュルームの組み合わせ。
Insalata di sedano e champignons セロリとマッシュルームのサラダ 野菜だけ余ってしまったのでドレッシングだけ作り直してサラダに。
Fagottini di castagne alla crema di nocciole クレープ生地と中身のクリーム、両方に栗の入った「茶巾包み」。ソースはヘーゼルナッツクリーム。ジビエ料理の後には、こういうドライフルーツ系のお菓子が合うそうです。手作りのマロングラッセを添えて。
Caffè エスプレッソコーヒー
と思っていたら、またもや女性が2人連れでやってきた。しかも騒がしさは常人の5倍くらいある人たちが。そう、毎年この時期と4月にナポリから到来する(こっちが呼んでるんですが)、マリーザ先生と娘のルチアーナという名のダブル大型台風がやってきたのだ。今回はフィレンツェまで列車、あとはバスでルッカまで到着したが、ジャンルーカが途中こまめに携帯にメールを送ったおかげで、乗り遅れもなく、荷物の取り間違いもなく、スリにも遭わずにキセキのように時間通り学校に到着。さっそく食堂に乗り込んでは、初対面の生徒さんばかりなのにいきなり抱きついてホッペにキスするわ、抱きしめるわのテンションの高さに、日本男子代表のヨシさんはいつもにも増して寡黙だった気がする……。もしかしたら明日はさらにもう1名男子が増えるかも、という情報もあるから頑張って~。
17日目の夕食:
Pasta al ferretto con ragù di agnello こちらのパスタ料理は南イタリア風で、子羊のミートソース。わざとミンチにはせず、包丁で細かくたたいて使用。生地はデュラム小麦の小麦粉とセモリナ粉を混ぜて作り、竹串を利用してストローのように成形。昔、お金を出して調理用具を買うなどというゼイタクは許されなかった時代の女性たちは、編み物用の針を利用していたそうだ。当時の編み針は鉄(ferro)製だったようで、いまだに料理名に名をとどめている。そういえば15年ほど前に急に編み物がしたくなり、シエナで毛糸屋に行ったら針が全部金属製だったっけ。竹針に馴れた手には重くてしかたないんだけど、よく昔の人は腱鞘炎にならなかったものだ。
Mozzarella alla bufala 水牛のモッツァレッラ 先生がナポリから買って来てくださったおみやげ。口にしての第一印象は、思いのほか塩味がしっかりついていること。次に、味が濃厚で繊維がしっかり詰まっていること。水牛のモッツァレッラというふれこみのチーズには偽物が多いそうだが、切り口からにじみだす液も芳醇なミルク色をしているこれは、まさしく本物。
Fagiano in umido con olive キジの煮込み、オリーブ入り(写真) 出ました出ました、INAさんご用達の煮込みが。「オリーブ入り」とわざわざことわっているところを見ると、普通煮込みにはオリーブは入れないものなのですかね。赤ワインと香味料(ジュニパーベリー、ローリエ、セージ、オリーブ、にんにく、そうそうキジには脂分がほとんどないからパンチェッタも)等々に2時間以上漬け込んでからまず肉だけ炒め、臭みのある汁を全部出させてしまってから改めてマリネ液で煮込む。これはトマトの入らない珍しいバージョンだが、白ワインとトマトを使うバージョンも別の先生で見たことがある。
Rapini saltati in padella かぶらと菜ばなの合いの子みたいな「かぶらブロッコリー」を塩ゆでし、細かく刻んで「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ(にんにく、オリーブオイル、とうがらし)」でソテー。ほうれん草やビエトラでも作るが、やっぱりrapiniのが一番おいしいと思う。
Caffè エスプレッソコーヒー