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【論説】普天間基地にオスプレイはいらない(上)―構造的欠陥による事故の危険性

2012年06月10日 | 沖縄・高江

 日米政府はこの夏にも、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを配備しようとしています。12年度に12機、14年度までにさらに12機が普天間飛行場に配備される予定です。オスプレイは以下に紹介するように、開発段階から事故が多発した危険な機体で、米国の専門家も危険性を指摘しています。
 これに対して、沖縄では強い反対の声が挙げられています。仲井真弘多沖縄県知事も強く反対しており、来る6月17日には、オスプレイ配備に反対する5千人規模の宜野湾市民大会が予定されています(実行委員長は佐喜真淳宜野湾市長)。

 日米政府は、実質を伴わない「沖縄の負担軽減」を強調する一方で、辺野古への新基地建設が進まないと見るや、地元の反対を押し切って「世界一危険な」普天間飛行場の固定化を具体化する方策を次々に打ち出しています。普天間飛行場の滑走路の大規模な補修がその一つであり、オスプレイ配備の強行もこの一環で追求されています。こうした日米政府のやり方に対して、沖縄の世論は強い懐疑と拒否の姿勢を示していると言えます。


▼墜落が相次ぐオスプレイの構造的欠陥

 現在、大きな焦点となっているのは、今年4月11日にモロッコで起きたオスプレイの墜落事故とその原因究明をめぐる日米政府の姿勢です。
 この事故は、米海兵隊がモロッコ南西部アガディールを拠点として行っていたモロッコ軍との合同演習中に発生しました。訓練中に兵員を輸送していたオスプレイが彼らを降ろした直後に墜落、海兵隊員2人が死亡、2人が重傷を負いました(海兵隊ニュース、4月12日)。

 この事故以前にも、オスプレイは開発段階から事故を繰り返し、その度に犠牲者を増やしてきたことは知られている通りです。オスプレイは07年にイラクで初めて実戦配備されましたが、その後も事故が相次いでおり、10年4月9日にはアフガニスタンでも作戦従事中に墜落しました。

 米国防総省は、改良を重ねた結果、オスプレイの性能は向上したため安全であるとの立場をとっていますが、その危険性を指摘する声は米国の専門家からも出されています。

 例えば、09年6月23日の米下院監視・政府改革委員会において、アーサー・R・リボロ氏はオスプレイが「オートローテーション能力」を欠いていることを指摘しました。リボロ氏は、米政府直属の研究所である「国防分析研究所」で92~09年にわたってオスプレイの分析と評価に従事した専門家です(以下の議論は、塚田晋一郎「オスプレイ普天間配備の危険性 オートローテーション能力が欠如」、NPO法人ピースデポ発行『核兵器・核実験モニター』第398号(12年4月15日)による)。

 ヘリコプターは、飛行中にエンジンが停止した場合、落下する際の下からの気流を利用してローターを回転させて揚力を得て安全に着陸する機能を持っています。しかし、リボロ氏はオスプレイは「安全にオートローテートできないことは、今ではメーカーも海兵隊も承知している」と証言しました。

 さらに、エンジン停止の際には「固定翼モードに変換することで安全な着陸が可能」だとする国防総省などの主張に対して、リボロ氏は、固定翼モードへの切り替えには12秒を要し、操縦ミスがなくても約1600フィート(488メートル)の高度を失うと証言し、墜落の危険を訴えています。これに対して同席した国防総省関係者は反論できていません。

 普天間飛行場では、航空機の離着陸を円滑化するために滑走路周辺に「場周経路」と呼ばれる飛行経路が設定されていますが、日本の防衛省の資料によると、ヘリコプターが飛行時にエンジンが停止してもオートローテーションによって飛行場に機体を帰還させることができるとして、場周経路の高度は330メートルに設定されています(防衛省資料「普天間飛行場の危険性の除去に向けた取り組み」、07年11月)。

 これらの指摘や事実を踏まえれば、普天間飛行場にオスプレイを配備することが一体どれほど危険なものであるのかは明らかでしょう。

  ※なお、オスプレイの危険性についてさらに詳しい議論は、塚田晋一郎「オスプレイ配備の危険性」『世界』12年7月号をぜひご参照ください。




▼事故原因の解明を待たずに、配備を先行

 モロッコでの墜落事故に関して、米海兵隊は6月8日、「機体に問題はなかった。(当時の)天候や操縦系統を調べたところ、想定通りに機能していた」と正式に発表しました(産経ニュース、6月8日)。
 他の報道によれば、米政府は日本政府に対して、「機体は訓練の運用マニュアル通りに機能しており、機械的な不具合はなかったと断定される」とし、事故原因は「人為的ミスだった」との見解を非公式に伝えているとのことです。

 最終的な調査結果の判明は今年遅くになるとされており、現時点では詳細は不明ですが、上記のリボロ証言が指摘するように、そもそもオスプレイにはオートローテーション能力がないのですから、高度の不足で墜落したとしても、それは「機械的な不具合」とは扱われない可能性が高いでしょう。
 問題は、不具合にしろ人為的なミスにしろ、事実として墜落事故は起こり、相次いでいるということです。

 しかし、日本政府は米政府の発表をもって事足れりとして、最終的な調査結果を待たずに普天間飛行場へのオスプレイ配備を認める姿勢をとっています。

 野田改造内閣で新しく防衛大臣に就任した森本敏氏は5日の記者会見で、「配備前にすべての事故調査結果が(米側から)提供されるのが望ましいが、必ずしもそうならないことはあり得る」と述べました。これは、年末になるとみられる米政府の調査結果を待たずに、この夏のオスプレイ配備を実行するとの姿勢を示唆したものです。

 これに対して民主党沖縄県連は強く反発し、7日には「発言は沖縄県民蔑視以外何ものでもない。防衛相の不適格発言による混乱を除くために強く辞任を求める」とする緊急声明を発表するに至りました。

 それにもかかわらず、森本防衛相は8日夜のテレビ番組で、辞任要求に関して「国益として防衛政策を貫くため、反対意見があるのは承知するが、それを乗り越えようと思っている」、「事故を受けた地元の反対は重く受け止めないといけないが、ものすごく危険とは考えていない」と述べ、意に介さない態度を示しています。

 オスプレイ配備という結論ありきで、沖縄の人びとの生命の危険を等閑視するこのような態度は、差別の誹りを免れません。

 次回の(下)では、オスプレイ配備がもたらす「もう一つの危険」について見ていきます。


   NPO法人セイピースプロジェクト 吉田遼

((下)につづく)

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