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セイピースプロジェクトのブログ

田母神元空幕長論文とシビリアン・コントロール

2008年11月15日 | ニュース紹介
田母神元空幕長は以前、高裁で自衛隊の違憲判決が出たとき、「そんなの関係ねぇ」と当時流行の芸人の言葉を引用した。今回もどれだけ批判されようが「そんなの関係ねぇ」という態度だ。今回の事件は「軍部の暴走」という表現が合うのではないだろうか。

○事件の概要
 今回の事件の問題点は田母神元空幕長が政府見解と異なる歴史認識を懸賞論文に応募したことだけではない。組織ぐるみで懸賞論文に関与したということも問題だ。この懸賞論文には計97人の航空隊員が応募しているが、実はこの数、航空幕僚幹部の空幕教育課長名全部隊に告知しても応募者数が少なかったため、航空幕僚幹部の教育部長が全国の部隊に文書を送り応募するよう念を押すという、組織ぐるみの関与の結果かもしれないと疑われている。この応募の経緯を調べるための防衛省の防衛監察本部が監察に着手している。

※防衛監察本部は、旧防衛施設庁の官製談合事件や自衛隊の情報流出などを受け、不祥事再発防止のため、昨年9月に新設された。

○何故、シビリアン・コントロールの欠如と言われるのか?
 
 さて、今回の事件は「シビリアン・コントロールの欠如」として騒がれている。まず、田母神氏の論文について考えてみる。

 水島朝穂氏によれば「自衛隊法は自衛官に政治的な発言を過剰なまでに制限し、倫理規程は私企業との付き合いも細部にわたって規制している」。軍隊は政治に介入すべきではない、ということだ。今回の田母神氏の論文は憲法改正にまで言及している点でも政治的といわざるを得ない(政府では今回の論文応募は政治的でないとしているが)。

 これに対して「言論の自由を保障せよ」という反論を田母神氏は行っている。この結果、言論の自由を守るためだとし、政府は田母神氏を懲戒免職しなかった。しかし、ある集会などで自衛隊の活動を批判した反戦自衛官が即刻懲戒免職されているという事実がある。「だから田母神氏も懲戒免職されるべきだ」という論理をとるつもりはない。それでは、自衛隊内部での汚職に対する自衛官の内部告発などまで制限してしまうことになる。では、この問題はどう解決すればいいのか?シビリアン・コントロールとは「軍隊の暴走を防ぐ」ことを目的としていることがポイントだと考える。つまり、「軍事大国化せよ」という軍隊の暴走につながる田母神氏の主張はダメだが、一方、懲戒免職された自衛官の主張は軍備を縮小させることが目的であるため、賛成する。あくまでも僕の意見だ。今後この点は議論されていくに違いない。


さて、次に、組織ぐるみの疑い=自衛隊の内部を統制できていない、ということを考えてみる。このところ自衛隊の閉鎖的体質に対する批判が強い。これまではもみ消されていただけだと思うが、守屋の汚職から始まり、1対15の格闘訓練にいたるまで、不祥事の摘発が連日ワイドショーをにぎわせている。今回の事件は組織内部で政府に反することを画策した、というのは言い過ぎだろうか。

 それはどうであれ、自衛隊の外部からの統制が少ないのはこれまで言われてきたことだ。まず、日本では議会=国会による自衛隊に対する統制がほとんどない。加えて、市民の統制もない。ドイツなどでは軍隊内部での人権が守られているかどうかを市民が監視する軍事オンブズマン制度がある。

 長くなったが、自衛隊内部に対する外部からの監視をし、暴走しないようにする制度設計が今後必要になってくると思う、ということを結論として終わりにしたいと思う。

(酸素)

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