WSJにAmericans are saving more, and that isn't necessarily good.という記事が出ていた。
「アメリカ人は以前よりもっと貯蓄をしている。そしてそれは必ずしも良いことではない」というタイトル。
記事によると1980年代からリーマンショックまでの間はアメリカ人の貯蓄パターンは景気変動に合わせて動いていた。
リセッションの後は借金返済に回り、貯蓄を増やしてバランスシートを回復する。そして景気が回復してくると楽天的になり、やがて消費過剰に陥るというものだ。
だがリーマンショック後このパターンが変わった。リーマンショック前の2007年の貯蓄率は、3.7%で2010年には貯蓄率は6.5%に上昇した。ここまで従来パターンなのだが、今年に入って7カ月間の平均貯蓄率は8.2%と高い水準を保っている。
ピムコのエコノミストは「これはある種の構造的変化が起きていることを示唆する証拠だ」と言う。
2018年度の貯蓄の伸びは前年比17%で、消費支出の伸び5.2%や事業投資の伸び7.8%を上回った。
何人かの経済学者は「長期にわたり、貯蓄が投資を上回る状態が続くと、金利を押し下げ、インフレと経済成長を抑制する可能性がある」と述べている。
またブラウン大学の経済学教授エガートソン氏は「貯蓄は美徳というよりは悪徳となった」と述べている。
貯蓄が悪徳というのは極論だと思う。これから退職を迎える世代にとって老後の準備は必須だからだ。
WSJの記事ではエガートソン教授がどのような文脈でこのことを言ったのかはわからないが、私は次のように補足するべきだと考えている。
「金持ちが必要以上に貯蓄することは美徳ではなく悪徳である」
米国のTax Policy Centerという調査グループによると所得の高い層の貯蓄率は2.9%、中間層は1.6%、下位層は0.4%だった。
ところで日本は20~30年前までは世界の中で貯蓄率が高いことで有名だったが、今や貯蓄率の低さで目立っている。
貯蓄率が低いにも関わらず、低金利と低インフレが長期間続いている理由は、「個人の貯蓄率は低迷しているが、企業が保有する現預金は積みあがっている」ことにある。日本の個人の貯蓄率の低さは、貯蓄したくてもそれだけの余裕がないことが問題なのだろう。
日本ではまず「企業が必要以上の貯蓄をすることは悪徳である」というべきなのだろうか?