小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

自民総裁選は河野氏の圧勝か? ワクチン接種率が上がると、なぜコロナ感染が拡大するのか? 日経がその事実を明らかにした。

2021-08-30 07:43:25 | Weblog
【追記3】 自民党総裁選を明日に迎えて政局がにわかにあわただしくなった。メディアや政治評論家はどの派閥の意向はどうだとかこうだとか、地方票(党員・党友票)の動向はどうだとか、いろいろ騒いでいるが、かつての「小泉劇場」のようなドンデン返しはありえない。
 小泉劇場が生じたのは、公示後の選挙活動で小泉氏が「私が古い自民党をぶっ壊す」と強烈な爆弾を炸裂させ、さらに政界の異端児・田中真紀子氏が「女房気取り」で応援団長を買って出たことで地方票の流れが一気につくられ圧勝した。しかも、このときの総裁選では国会議員投票に先立って地方票の開票結果が開示されてしまったため、当初は絶対有利とみられていた橋本龍太郎氏が惨敗する結果になった。党員の意志を真っ向から否定するような投票行動には、さすがに国会議員もとれなかったのだろう。
 が、自民党は長老政治を維持するためかどうかは知らないが、地方票の開示は国会議員投票後に行うことにしている。そのうえ「派閥縛り」をなくすため(派閥縛りに対する若手中堅議員の反発が大きかったため)国会議員投票は無記名式にした。だから、事実上、国会議員は個人の自由意志で投票する。
 立候補するのは岸田・高市・河野・野田の4人になりそうだが、公示後誰かが「小泉劇場」のような威力のある爆弾を炸裂させるかだ。岸田氏はすでに長老政治の廃止や森友学園の説明責任という爆弾を投げてしまったから、同じことを繰り返してもさほどの威力はない。もともと高市・野田氏には爆弾を持っていそうにないから、ただひたすら「女の戦い」に徹するしかないだろう。
 そうなると、あとは河野氏ということになるが、地方票はトップが固そうだし、今の自民党議員の3分の2以上は若手中堅議員ということになると、とくに爆弾を用意しなくても国会議員票でもトップを取りそうだ。知ったかぶりをする評論家は自民党内の「石破アレルギー」が大きく、河野氏の支持に回った石破氏が河野氏の足を引っ張るのではないかという分析をしているが、そんなことは絶対ない。「石破アレルギー」を持っているのは長老たちにすぎず、若手中堅議員の間には特に「石破アレルギー」なんかない。むしろ党内きっての政策通としての評価が高い石破氏が、河野氏を全面的に支持するとなると「河野・石破劇場」が幕開けするという期待感の方が強くなると私は思っている。決選投票になるという見方もあるが、私は一発で決まるとみている。

 実は、そんなことはどうでもいい。今日16日、日本経済新聞がコロナ感染について重大な事実を報道した。そもそも8月30日にアップしたこのブログのタイトルは『ワクチン接種率が上がると、なぜコロナ感染者が拡大するのか?』というもので、なぜそうなるのかを論証することが目的だった。
 読者の皆さんは9月に入って感染者数が急激に減少しているではないかと思われていたかもしれない。また政府も元日本サッカー選手代表の内田篤人氏を起用したテレビCMを連日流してワクチン効果をうたっている。相当の回数流しているのでご覧になった方も多いと思うが、内田氏の独白(独り言)はこうだ。「ワクチンを打つ前はやっぱりちょっと怖かったです。たぶん多くの人と同じだと思う。打つ前と打った後、ボクの中で変わったことがある。それは大切な人と安心してすごせる、その気持ちは確かです。あなたとあなたの大切な人を守るためにも、ワクチン接種をご検討ください」
 私は何度も内閣府や厚労省に、このCMは国民に大きな誤解を与えかねないからやめるよう申し入れた。が、内閣府は何度電話しても担当者が席を外しているとか、不在とかの理由で電話をつないでくれない。厚労省は職員ではなく「ワクチンコールセンター」(NTT系の外部スタッフに委嘱)にしかつながない。コールセンターの方は私の主張を全面的に理解してくれるのだが、肝心の厚労省が聞く耳を持たない。
 私はコロナ・ワクチンの接種に反対なのではない。むしろ推進したい側だ。
 問題はワクチンの効果が「発症を抑える」「重症化を抑える」という点にある。もちろんある程度感染防止力もあるのだが、感染防止力は厚労省の承認基準にはなっていない。防止力が低いせいか、治験数が十分でないためかは厚労省が発表していないのでわからない。問題はワクチンを打てば「感染しても発症を抑える効果がある」という点だ。「発症しても重症化を抑える効果」についてはいくら強調しても強調しすぎることはない。が、「発症を抑える効果がある」ということになると、街に無症状感染者があふれることになる。そのリスクを私はこのブログで警告した。そして、実際、その裏付けとなる記事を日経が書いてくれた。一部を抜粋・引用する。

新型コロナウイルスの感染に気づかず、社会生活を送る「隠れ陽性」が増えている。東京都が繁華街などで行う無料検査で直近の数値が7月上旬の12倍まで上昇した。行政検査が追いつかず、民間検査の活用も進んでいないことが背景にある。ワクチン接種完了後に感染する「ブレークスルー感染」もあり、無症状者の把握は不可欠。経済の正常化に向け、検査体制の拡充とワクチン接種を両輪で進めることが求められる。

 むしろ、感染したら発症を抑えるのではなく、「すぐ発症するが重症化は防ぐ」ワクチンを開発してくれ、と私は言いたい。少なくとも内田氏のCMは直ちに中止すべきだ。ワクチンを打っても、「絶対に感染しないという保証はない」ことは多くの国民が知っているが、やはり「感染しても発症を抑える(つまり無症状感染者)」「発症しても重症化はしない」ということで多少気が緩む。9月に入って感染者数が減っているのは、無症状感染者が街にあふれていることを意味していた。日経の記事はその事実を明らかにしてくれた。
(9月16日)

【追記2】 菅総理の辞任表明で一気に政局があわただしくなった。所詮トップの器でなかったと言ってしまえばそれまでだが、メディアがトンチンカンな 解説ばかりしているので、ちょっと書いておく。
なぜガースーが官房長官として長期にわたって安倍政権を支え続けることができたのか。「人事の菅」と言われているが、それはトップにとって安心できる腹心だからだ。実はナンバー2はトップにとってつねに極めて危険な存在である。そのことは前にもブログで書いた記憶がある。
本来官房長官という地位はナンバー2ではない。官房長官の最大の仕事は政府のスポークスマンつまり報道官である。だから徹底的に総理を守り抜かなければならない。考えてみれば安倍前総理ほどスキャンダルにまみれた総理はいなかった。それでも病に倒れるまで総理でいられたのは、野党のだらしなさもあるが、菅が防波堤として安倍をトコトン守り抜いたからだ。その結果、安倍が長期政権を維持できたし、総理と一体であるべき官房長官の菅の政治を動かす力も巨大化していったに過ぎない。
官房長官としての立場を勘違いして政治生命を棒にふった人がいる。細川内閣の官房長官を務めた武村正義氏だ。細川氏も「お殿様」だなあと思ったが、消費税(当時5%)を廃止して社会福祉税7%創設を突然ぶち上げたときだ。今から思えば悪いアイデアではなかったと思うが、閣議にも諮らず唐突に発表したため、てんやわんやの大騒ぎになった。そのとき武村氏が記者会見で真っ向から「お殿様」のアイデアを否定してしまった。で、「お殿様」はすっかりやる気をなくして「俺、辞~めた」と総理の座を放り出してしまったことがある。
その点、菅氏は出すぎた真似は絶対しなかった。だから歴代最長の官房長官として確固たる地位を築いてきた。
安倍政権時代、次の総理総裁は岸田氏への禅譲が政界雀のあいだでは規定事実のように語られていた。が、安倍氏が持病の悪化で総理を辞任することになったとき、なぜか安倍氏は岸田氏への禅譲ではなく、菅氏を後任に選んだ。
岸田氏はもともと国民の人気は低かった。「物言えば唇寒し」と思っていたのかどうかはわからないが、ずけずけ物言う石破氏や進次郎氏に人気の面ではかなりの差を付けられていた。当然国民にとっては「何を考えているのかわからない」といった消化不良の印象ばかり強くなった。
安倍氏がなぜ菅氏を後継指名したのかはわからない。総裁選で石破・岸田の争いになった場合、岸田氏の勝ち目がないと思ったのかもしれない。その点、
安倍政権に絶対忠実だった菅氏なら無派閥だし、「何が何でも菅はダメ」という勢力が党内になかったことも岸田氏への禅譲をやめた理由かもしれない。そのあたりの事情は政界雀の田崎氏なら知っているかもしれない。
 いずれにせよ、安倍氏が総理を辞めるときは自分に禅譲されるだろうとすっかり思い込んでいた岸田氏は、はしごを外されたと恨み骨髄に達したに違いない。総裁選が近づくにつれ、立候補の意思は早くから表明したものの、やはり立候補の意思を明らかにしていた菅氏との闘いは明らかに不利だった。内閣支持率は危険水域とされる30%を切っていた菅政権だが、自民党内の基盤が揺らいでいたわけではない。
 岸田氏がだれも想像すらしなかった原爆級の攻撃を始めたのは8月29日。突然総裁選の公約として「総裁を除き党役員任期は1期1年で3期まで」と発表したのだ。事実上、該当するのは16年8月に幹事長に就任して丸5年を超えた二階氏であることは誰の目にも明らかだった。二階氏はいったん「失礼だ」と反発したが、いちおう菅氏に「進退は任せる」と下駄を預けたようだ。

 岸田氏の「二階外し」はおおむね好感された。が、私は朝日新聞には電話で「原爆級の威力があるが、時期が早すぎた。公示後に二階・菅陣営が身動き取れなくなった状況で炸裂させるべきだった。必ず巻き返しがある」と伝えた。
 私はこのとき想定していたのは、菅氏が「余人をもって代えがたし」と二階氏を擁護することだった。が、菅氏がとった方針は総裁選前の党人事と内閣改造だった。自分が総理総裁になれた大恩人の二階氏を切ることで自らの延命を図ろうとしたのである。これほど浅はかな人だとは私は思ってもいなかった。
 ただ、誤解されるといけないので断っておくが、私は二階氏を擁護しているわけではない。メディアが政局の論理的分析力を喪失しているので、この瞬間、菅氏の芽が完全につぶれた理由を明らかにしただけだ。
 はっきり言って二階氏は「食えない爺」だ。自分の進退について菅氏に下駄を預けると一応言ってみて、菅氏がどう反応するかを厳しく見た。浅はかな菅氏は、自分が党人事を掌握する権力を握っていると錯覚して、総裁選挙前の「二階切り」を表明してしまった。その後、二階氏がどう動いたのかはわからない。ただ、この瞬間から自民党内で一気に「菅おろし」の空気が醸成されたことだけは事実だ。
 菅氏が総裁選出馬の意思を最終的に表明した9月2日の翌日には出馬断念を表明せざるを得なくなったのは、自分の力を過信しすぎた結果としか言いようがない。二階氏はまだ菅氏をバックアップするつもりでいたはず。まさか、進退を預けるという口車を菅氏が真に受けて、自分を切ろうとするなどとは考えてもいなかったと思う。
 菅氏には、自分の政治信念がもともとないから、そういう姿勢は横浜市長選挙でも表れていた。
 カジノを含むIR構想は菅氏の肝いり政策だった。横浜前市長の林氏が公約(IR誘致は白紙)をひっくり返してIR誘致を決めたときも菅氏は強力に林氏をバックアップしていた。が、8月の市長選挙に菅内閣の枢軸である小此木国家公安委員長が衆院議員を辞職して横浜市長選挙に「IR阻止」を掲げて立候補したとき、菅氏は小此木氏の応援団長を買って出た。この一事だけで、菅氏には政治理念・信条が皆無であることが日本中に知れ渡ってしまった。
 最有力馬だったはずの菅氏が自ら出馬を取りやめたことで自民党総裁選の行方は混とんとしてきた。ただ、岸田氏が第2弾として「政府の森友学園説明責任」まで公言したことで、安倍前総理を完全に敵に回してしまった。岸田氏としては昨年の総裁選での安倍氏の「裏切り」がよほど腹に据えかねたせいだろうと思うが、当初、泡まつ候補にもなれないのではと思われていた高市氏を安倍氏が全面的にバックアップすることになった。いったんは出馬を断念していた河野氏が出馬を表明していっきにダークホースになった。石破氏もどう動くかわからない。
 私自身は政局にはあまり関心がない。誰が総理総裁になろうと、政策についてど真ん中のリベラルの立場で検証していくだけだ。ただ、岸田氏は原爆を早すぎて投下した結果、安倍氏のバックアップも期待できなくなった。もし公示後に原爆を投下していたら、岸田総理総裁が実現していた可能性はかなり高かったと思っている。(9月6日)



政治はしばしば誤りを犯す。
そのこと自体は仕方がない。権力者といえども人間だから、時には状況を見誤って間違った政策に走ることはある。
問題は状況を見誤っていても、そのことに気が付かないか、気が付いても権力の座を失いたくないために誤った政策を続ける権力者が少なくないことだ。
アメリカのバイデンはアフガニスタンの治安は収まったと思って米軍兵士を撤退させることにした。とたんにイスラム過激派のタリバンが武力で政権を奪取してしまった。
中国の習近平も東南アジアでの覇権を急ぐあまり、国際社会での孤立を招きつつある。一部、報道によれば、中国共産党の上層部で「習近平降ろし」の動きが始まっているようだ。それが事実とすれば、その先は「クーデター」が成功するか、あるいは「血の粛清」が待ち受けているか~。

●東京オリンピックが感染拡大を招いたというエビデンス
緊急事態宣言下でのオリンピック強行開催について、主催者側の小池都知事、菅総理、丸川五輪相、橋本組織委会長の4人は口をそろえて「オリンピックがコロナ感染の拡大を招いたことはない。テレビのオリンピック中継の視聴率は軒並み高かった。つまり人流がそれだけ減ったわけでオリンピックと感染拡大の因果関係はない」と「オリンピック開催成功論」をぶった。
では、なぜオリンピック開催中、コロナ感染は拡大を続けたのか。実はこの間、家庭内感染が爆発的に増えている。
オリンピックに限らず、スポーツの国際大会は家庭だんらんの大きな機会になる。たとえばサッカーやラクビーのワールドカップ。お茶の間が競技場の観覧席と化して歓声が飛ぶ。家族全員がいっぱしの「評論家」気取りになって口角泡を飛ばして「あのプレーはどうだった、こうだった」と盛り上がる。平常時なら、スポーツのテレビ中継は家族のきずなを固める最高の舞台になる。
が、家族の中に無症状の感染者が一人でもいたら、どうなる? コロナ・ウイルスにとって、こんなにおいしい場所はそうない。
オリンピックによって人流が減ってテレビ中継の視聴率が上がれば、コロナの家庭内感染が爆発的に増えるのは当たり前だ。政府は「オリンピック開催が感染拡大を招いてはいない」と強弁するなら、なぜオリンピック期間中に家庭内感染が急増したかの理由も論理的に説明すべきだ。おそらく「さざ波」論者の高橋洋一氏にも無理だろう。
おそらくアメリカをはじめスポーツが盛んな国では、オリンピック期間中、日本と同様家庭内感染が爆増していたはずだ。

●コロナ・ワクチンはワクチンとして承認されたわけではない
ファイザーにしろモデルナにしろアストラゼネカにしろ、いちおうワクチンと言われているが、実は日本に限らずどの国でもワクチンとして承認を受けたわけではない。このことは何度もブログで書いてきているので、覚えておられる読者も少なくないと思うが、ワクチンとして承認を受けるには感染予防効果が治験で確認される必要がある。予防効果のハードルはそんなに高いわけではなく、インフルエンザ・ワクチンの場合でも感染予防効果は60%程度と言われている。
新薬の承認には通常、最低でも4~5年はかかると言われている。まず動物実験で効果と安全性を確かめ、そのうえで臨床治験が行われる。
が、コロナの場合、ワクチン開発にそんな時間をかけている余裕がなかった。もちろんメーカーは感染予防薬として開発してきたのだが、感染予防効果が確認できないまま医薬品として承認せざるを得ない状況になった。そのこと自体は一種の非常事態措置だから、やむを得ないと思う。
では、コロナ・ワクチンと称する医薬品はどういう効果を基準に承認されたか。日本の厚労省の場合は、こうだ。
「感染しても発症を防ぐ効果があること」
「発症しても、重症化を抑える効果があること」
この二つの効果が、コロナ・ワクチンの承認基準になった。私は厚労省に電話で確認したが、「だとすれば、これはワクチンというより治療薬に近い感じがするが…」と聞いたところ、「そう言われれば、そうかもしれませんね」という答えが返ってきた。
そこで問題になるのは、コロナ・ウイルスの厄介な性質である。
感染しても、すぐ発症するとは限らない、つまり無症状患者を生み出すというわけだ。ワクチンを2回接種したら、だれでも多少気が緩む。私は2回目の接種を受けたとき、問診医に「どのくらいで通常生活に戻れるか」と聞いた。問診医の答えは冷たかった。
「コロナ禍が収まるまで通常生活には戻れません。ワクチン接種前と同様、感染防止対策を続けてください」
かといって、ワクチンに感染防止力がまったくないわけではない。ただ、ワクチン(ある程度の感染防止能力が治験によって確認された医薬品の総称)としても確認をとれるだけの治験を行っている時間的余裕が今回はなく、やむを得ず厚労省は「発症防止能力」「重症化防止能力」を奇人に医薬品として承認した。コロナ・ウイルスの感染力が強く、感染した場合、発症したら一気に重症化するケースが少なくないからだ。また、発症した場合、「自宅療養」が一番危険だ。同居家族に感染を拡大してしまうリスクも大きいし、自宅療養中に突然重症化して救急車を呼んでも入院できないというケースがしばしば報道されている。一人住まいの場合は、近所のスーパーやコンビニに飲食料品を買いに出かけてしまうケースも排除できず、こうしたケースも感染拡大リスクになる。

●若年層がワクチン接種に拒否反応を示す理由
私は医療の専門家ではないので、あくまで論理的に「こういう政策を採用したら、こういう結果が生じるはずだ」ということを基準に書いている。
8月27日、東京都は渋谷区の勤労福祉会館でファイザーのワクチンを16~39歳の若い人たち向けに無予約接種を行った(都内在住か在勤・在学者に限定)。接種予定数は300人だったが、深夜から並んだ人もいて午前7時ころには300人を超える行列ができ、都は急遽、整理券を配布して28日以降は抽選・予約制に切り替えることにしたという。抽選の場合、受付時間内に行けばいいのだが、若い番号の抽選券の方が当選確率が高いと思うのか、あるいは仕事や学校の授業の関係なのかは不明だが、ずっと早朝からの行列が続いているようだ。

東京都の見込みが狂ったのは、若年層に増えているワクチン接種拒否傾向だ。日本に限ったことでなく、欧米など先進国に共通にみられる傾向のようだ。
というのは、これまた先進国共通の接種優先順位だが、①医療従事者(日本の場合は医療機関に勤務するすべてを対象とした「医療従事者等」)②高齢者 ③基礎疾患のある人 ④その他一般、としている。こうした優先順位で接種をしてきた結果、高齢者の場合はあまり副反応(副作用と同義)は出ないが、若い人ほど副反応が強く現れ、かつ2回目の接種後の副反応が大きいということが分かってきたという事情がある。そのため若い人たちがワクチン接種をためらう傾向が先進国に生じ、比較的ワクチン接種が進んでいた国でも10~20代の接種率が低い。
そのうえ、どの国も失敗してきたのは、ある程度感染者数が下がってきた時点で、早く経済を回すようにしたいとロックダウンなどの規制を一気に解除してしまった。その結果、若い人たちを中心に再び一気に感染が爆発するという結果を招いてきた。
政治は過去から何を学ぶかが重要だ。今回のコロナ禍のようなケースに政治が直面したことはかつてなかったから、試行錯誤はある程度やむを得ない。だからある程度の失敗は仕方がないと思う。が、二度、三度と同じ失敗を繰り返すようだと、国民の政治への不信感が募るばかりだ。その前提で、政府のコロナ対策の問題点をあぶりだす。

●ワクチン接種率の上昇が、かえって感染拡大を招きかねない理由
私がいま一番問題に感じているのはワクチンの効果である。「感染しても、発症を抑える」という厄介極まりない効果である。
ワクチンを2回接種すれば、だれでもある程度は気が緩む。わたしが住んでいる地域では居酒屋やカラオケ・スナックがすべて休業してしまっているから、「巣ごもり生活」を余儀なくされているが、そのせいで運動機会がほとんどなくなり、いまは「支援1」の介護を受ける状態になってしまった。実際、高齢者の介護申請が急増しているという話も聞く。
それはともかく、ワクチンを接種した場合、私のような高齢者と異なり、若い人たちの気持ちが一気に緩んだら、どうなるか。そこで厄介なのは「感染しても発症を抑える」というワクチンの「効果」である。
すでに述べたように、コロナ・ワクチンに感染予防効果がまったくないというわけではない。ワクチン接種先進国のイスラエルでは保健省(日本の厚労省に相当)が感染防止効果を調査していて、デルタ株が話題になる以前は95%前後の高い防止効果を示していたが、デルタ株が広まるにつて防止効果は63%(7月)、39%(8月)と急降下している。
「ワクチン一本足打法」とメディアから揶揄されている菅総理は、こうした事情を知ってか知らずか、「明かりははっきりと見え始めている」と記者会見で発言、嘲笑を買った。時期的に、菅総理の目に見えた「明かり」は総裁選のことだろうか。
政府のコロナ対策がワクチン一辺倒のため、国民の間にワクチンへの異常な期待感が醸成されると、極めて危険な状況が生まれる。コロナに感染しても「発症抑止効果」があるため、感染していることを知らずに「自分はワクチンを2回接種したから安心」と思い込んで、若い人たちが通常生活に戻ろうと繁華街に繰り出して、それまでの閉塞感から一気に解放されてしまうと、感染大爆発の引き金になりかねない。
もちろん、かといってワクチン・リスクを声高に主張することで、若年層がワクチン接種をさらにためらうようになると、それもまたコロナの跳梁を許すことになるので、そこにメッセージの出し方のむずかしさがあるが、政府がいかなる政策を打ち出しても、国民が協力しないことには政策は空回りする。
はっきり言えば、コロナに対する絶対的な対策はまだない。イスラエルはブースター接種(3回根の接種)を始めたしアメリカも始める。日本の河野ワクチン担当相はブースター接種も視野に入れているというが、ブースター接種の副反応はまだ全く明らかになっていない。
これまで分かっていることは1回目接種の副反応より2回目接種の副反応の方がきついということだけだ。当然2回目接種の副反応よりブースター接種の副反応の方がかなり大きいことは覚悟していなければならない。そういうことを国民に正直に伝え、コロナを完全に壊滅するには国民自身がある程度の犠牲を払う必要があることを真摯に訴えてほしい。
政治が国民を信用しなかったら、国民も政治を信用しなくなる。「ワクチン一本足打法」でワクチン接種効果を誇大宣伝する政府を誰が信用するか。

●限定的ロックダウンに踏み切れ
欧米では早い段階から大都市のロックダウンを行ってきた。が、日本では安倍前総理が「憲法の制約により『私権の制限』につながるロックダウンは日本ではできない」として緊急事態宣言を発出した。
この1回目の緊急事態宣言は、予定より1か月延長はしたが、企業が可能な限りリモートワークに切り替えたり、またメディアによる海外のコロナ感染状況の報道もあって国民の間の危機感も強くなり、かなりの効果があったことは否定しない。
が、政治の失敗は、ある程度感染拡大が収まりかけた時点で、宣言中に停滞した経済を早く再活性化したいと、Go Toトラベル・キャンペーンを前倒しで始めてしまったことだ。その結果、コロナの第2波がすぐ日本を直撃し、人流が最も多くなる8月中旬に最初の感染ピークを迎えてしまった。
政府は直ちにGo Toトラベル・キャンペーンを停止すべきだったが、夏休みが終わるころにいったん感染が下降線をたどりだしたため、持病悪化で辞職した安倍総理の後継者になった菅総理が安倍総理時代の「コロナ対策と経済再生の両立」にしがみついてキャンペーンを続けた。その結果、秋の行楽シーズンの真っ最中の10月に第3波が日本を急襲し、しかも菅総理は馬鹿げたことに人流が激しくなる年末年始をわざわざ外して2回目の緊急事態宣言を発出した。
実は海外の先進国も同じ失敗をしている。ロックダウンで疲弊した経済を回復したいと、一気に規制を解除して、ロックダウン中の閉塞感から解放された人々がたちまちお祭り騒ぎに興じ、感染拡大を招いている。
日本はいま4回目の緊急事態宣言中だ。安倍総理が「憲法に抵触する」として「私権の制限」に踏み切らなかった政府だが、いま飲食業者を狙い撃ちするような「私権の制限」を行っている。いつから憲法は飲食業者を対象外にしたのか。少なくとも「憲法解釈の変更」について、国民に誠実に説明すべきだろう。国民を信用しない政府を、だれが信用するか。

私はもはや「限定的なロックダウン」以外にコロナとの闘いに勝つ方法はないと思っている。
具体的には感染が拡大しやすいオフイス中心街や大規模繁華街の人流を完全にストップ、つまりロックダウンに踏み切る以外に方法はない。
ロックダウンすべきは、東京でいえば新宿や渋谷、池袋、品川、銀座とかなり地域を限定する。道路封鎖と電車は最寄り駅の乗下車を禁止する。たとえば山手線の場合、新宿・渋谷・池袋・品川・新橋・有楽町は駅を完全封鎖してしまう。これらの駅のうちターミナル駅は他船への乗り換え以外に駅構内から外には出させない。極端に言えば、街を一時的に殺してしまう。
そのくらいのことをしなければ、感染拡大地域の人流を抑えることはできない。そして多少、感染が収まってきても、そこは我慢のしどころで、ロックダウンの一気解除はしない。段階的解除法については都市工学の専門家が知恵を絞ってほしい。
前にもブログで書いたが、これは「第3次世界大戦」である。世界中がコロナ退治のために協力しなければ、日本だけ頑張ってもコロナ禍はなくならない。そのくらいの覚悟で取り組まない限り、人類の未来はない。

【追記】 このブログ記事を投稿した直後にテレビ番組でワクチン接種を呼び掛ける政府のCMが流れた。若い男性が独り言を言うだけの何の変哲もないCMだが、その内容が大問題だった。男性の独り言は正確に記憶しているわけではないが、大体こういう内容だった(内容の正確性は内閣府に確認済み)。
「僕がワクチンを接種した理由――これから大切な人に会うのだけど、ワクチンを接種したから安心して会える」
このCMがいかに危険かはこのブログを読んでいただいた方には十分不ご理解いただけると思う。ワクチンの感染予防力はデルタ株の出現によってかなり低減している。ワクチンを接種したからといって安心して大切な人に無防備であったら、大切な人にコロナを感染させてしまうリスクが大きい。政府はいい加減な「フェイクCM」を流した責任をとれるのか。
内閣府には直ちにCMのストップを申し入れておいた。(30日)






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