小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

「北朝鮮の非核化」問題の真相はこうだ。メディアや評論家には見えない金委員長の権力構造を考えてみた。

2018-09-10 05:02:48 | Weblog
 昨9日、北朝鮮は建国70周年の記念行事を行った。報道によれば恒例の軍事パレードでは、従来と異なり文民と軍人の2つが別々にパレードを行い、軍人パレードの一部が反米スローガンを掲げたものの、多くは経済発展や国民の生活水準の向上を誇るものが多かったという。軍事パレードにICBMも参加させなかった。神経ととがらせているアメリカへの配慮と見られている。
 この記念行事には一時、中国の習近平主席が出席する予定と伝えられていたが、周氏は訪朝せず、中国共産党序列3位の葉戦書・全人代常務委員長が出席、金氏が葉氏の手を高々と掲げて朝中間の親密ぶりを印象付けようとしたが、中朝の思惑は必ずしも同一ではないようだ。また、金委員長は恒例の演説も行わなかったが、このことは金委員長がまだ軍部を必ずしも完全に掌握しきってはいないことを表していると考えていいだろう。
 北朝鮮に非核化への道は、メディアや政治家・評論家たちが考えているように、それほど簡単ではない。各種報道によれば、北朝鮮国民の生活は金委員長時代に入ってかなり向上しているようだし、そうした報道が事実であれば(北朝鮮の実態は「鉄のカーテン」に覆い隠されており、メディアが見聞しているのはほんの一部でしかないからだ)、国民の金委員長への信頼と忠誠の念には揺らぎがないように思える。
 が、金委員長が軍部をどこまで掌握しているかは、依然として不透明だ。朝鮮半島非核化(「北朝鮮の非核化」とは、あえて言わない)への第一歩として行われた南北会議(板門店)での両首脳が示した感動的シーンはいまだ多くの人たちの脳裏に深く刻み込まれていると思うが、この会議に北朝鮮は軍幹部2人を随行させている(韓国側は軍関係者は参加していない)。さらに米朝首脳会談に至る過程で、金氏は軍幹部3人を処分した。おそらく処分された3人は反米強硬派だったのだろう。どういう形で軍の要職から排除したのかは不明だが、絶対的な独裁権力を確立していれば、金委員長に逆らえば即粛清を意味するはずだ。粛清できなかったということ自体が、金委員長がまだ軍を完全には掌握しきれていないことを意味すると考えてよかろう。
 メディアを含め大半の人たちは、金委員長の考え一つで非核化は簡単に行えると思い込んでいるようだが、そんなに単純ではない。金氏が非核化に舵を切ったのは間違いなく、それはやはり北朝鮮への制裁が大きく効果をあげた結果だとは思う。が、やりすぎると「窮鼠、猫を欠く」という事態を招きかねない。
 いつの世でも、独裁政権が恐れるのは国民が飢えることと、軍のクーデターである。国民は飢えれば、必ず暴動を起こす。日本でも絶対権力が確立されていた封建時代でも、飢饉などで農民が飢える状態に陥れば、村長(むらおさ)は自らが死刑に処せられることを覚悟で一揆を指導したり、直訴に踏み切ったりした。「北朝鮮の国民は雑草を食べても核を放棄しない」とバカなことを、北の大国の大統領が言ったらしいが、いかなる国の国民も自らの死と引き換えに権力者を守ろうとは絶対にしない。またいかなる国の軍もつねに権力者に対して揺るぎない忠誠心を抱いているとは限らない。ある程度の権力の座に就けば、さらにその上の権力を目指すのは人間の常であり、毛沢東時代の中国でNO。2の地位にあって林ピョウがクーデターを試みで失敗し、ソ連への逃亡中に殺害されたことを想起するまでもないことだ。
 日本でも多くの国民の反対を押し切って安倍内閣は集団的自衛権行使を可能にする安保法制を国会で強行採決させたが、その行使ははっきり言って容易ではない。たとえば沖縄在留の米軍が、アメリカの国益のために軍事行動を起こしたとして、当然相手国は沖縄の米軍基地を攻撃対象にする。そのときアメリカが日本政府に対して集団的自衛権の行使を要請しても、日本の自衛隊が「はいはい、そうですか」と軍事行動に踏み切るとは思えないし、もしそういう事態が生じたらおそらく国民が黙っていない。間違いなく政府は転覆する。
 安倍さんは安保法制を国会で通過させたことで、アメリカに恩を売ったつもりかもしれないが、どうやらトランプ大統領にはそんな思いはまったくないようだ。かえって圧力をかければ日本はどうにでもなる、という確信をトランプ氏に抱かせただけの結果に終わったとみるべきだろう。
 安倍さんの権力がいまだ強固なのは、そこそこ経済政策が成功しているかのように見えている今だけのことで、マンション・バブルが崩壊するのははっきり言って時間の問題だ。かつてのバブル時代には不動産だけでなく、株やゴルフの会員権、絵画などの「資産」が軒並み高騰した。
 アメリカのリーマン・バブルもそうだが、バブルの発端はつねに不動産関連だ。かつてのバブル時代には長谷川慶太郎なるエセ評論家が「土地は増えない」「東京にはオフイスビルが不足している」「東京がアジアの金融センターになる」といったでたらめをメディアで吹聴しまくり、都心の不動産が高騰し、それが首都近郊まで広がっていった。いくら金持ちでも、ほんの一握りの富裕層が都心の不動産を買いまくったり、高層マンションを建てまくったりできるわけではない。現在のマンション・バブルも「2020東京オリンピックまでは持つ」と不動産業界は見ているようだが、この希望的観測も実は怪しい。おそらく不動産業界はオリンピックの前にバブルが崩壊するとみているだろうし、いまはトランプのババ抜きゲームの最終段階に入っているとみているようだ。で、最後にババをつかまされるのは、スルガ銀行ではないが不動産融資に熱中している金融機関だろう。そうなれば、いま高値水準にある株価も、一気に暴落し、アベノミクスが砂上の楼閣にすぎなかったことが早晩証明される。

北朝鮮の非核化問題に戻る。米朝首脳会談(6月12日)で発表された共同声明の解釈でいまだに世界中が揺れている。解釈が揺れているのは、前文の「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、金委員長は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した」という箇所だ。
会談直前まで、トランプ大統領は「この会談で共同声明にサインすることはないだろう」と言っていたし、「北の本気度は1分でわかる」「途中で席を立つかもしれない」と、会談の成功についてかなり悲観的なニュアンスをツィッターなどでつぶやいていた。
だから、この声明文の前文を読む限り、一見北朝鮮ペースで会談が行われ、トランプ大統領が金委員長に譲歩したのでは…という見方が妥当なように思える。実際、日米のジャーナリスト・評論家や政治家でそう主張する人たちが少なくなかった。本当にそうか。
前文に続く2項と3項ではこう書かれている。
 2 米国と北朝鮮は、朝鮮半島において持続的で安定した平和体制を築く貯め共に努力する。
3 2018年4月27日の「板門店宣言」を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島における完全非核化に向けて努力すると約束する。
 3項にある「板門店宣言」とは韓国・文大統領と金委員長の首脳会談で実現した合意事項を指す。つまりトランプ大統領が南北会談での「公約」を正式に承認したことを示したことを意味する。
板門店宣言では、「朝鮮半島の完全な非核化を南北の共同目標とし、積極的の努力すること」「休戦状態の朝鮮戦争の終戦を2018年内に目指して停戦協定を平和協定に転換し、恒久的な平和構築に向けた南・北・米3者、または南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進すること」「相手方に対する一切の敵対行動を全面的に中止し、まずは5月1日から軍事境界線一帯で実施する」「軍事的緊張を解消し、軍事的信頼を構築し段階的軍縮を行う」などで南北が合意した。
その合意事項をトランプ大統領が承認したことが、米朝共同声明で明らかになった。メディアは、そのことをあまり重視していない。なぜなのかは、私にはわからない。
アメリカはかつて財政赤字と貿易赤字の双子の赤字に苦しんだ時期がある。政治経験がまったくなく、異色の大統領として登場したトランプ氏にとって、アメリカという国家の経営の中心的テーマは今も続いている財政赤字と貿易赤字を一掃することだった。が、そのことはあまりにも大きなテーマだったので、大統領選では公約にしていない。私にも、最近になってトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」の狙いがようやく見えてきた。
トランプ大統領が発信する様々な情報は、それらの一つ一つはジグゾーパズルのピースである。個々のピースにとらわれすぎていると、「木を見て森を見ず」ということになりかねない。またジグゾーパズルと違う点は、すべてのピースが目の前にあるわけでもない。だから目の前にあるピースを枠の中にはめ込みながら、空白の部分(つまりまだピースが隠れている個所)にどのようなピースが入るかを論理的に推理していくしかない。
その頭の中でする作業にとって最も重要なことは、目の前にあるピースの中でどのピースが「キーワード」になるかを見つけることだ。
米朝首脳会談の共同声明で最重要なピースは「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、金委員長は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した」という一文である。
この共同声明には北朝鮮の非核化へのプロセスはまったく明記されていない。そのことを最重要視するメディアや政治家が、アメリカでも日本でも多い。
だが、そのことを最重要視するなら、同様のレベルで「ではトランプ大統領はどうやって北朝鮮に安全の保証を与えるのか」も重要視しなければならない。金委員長が制裁の段階的解除と合わせて、最近、いまだに休戦状態にある朝鮮戦争の終結協定の締結に強くこだわりだしたのは、おそらく軍内部からの突き上げがあったからだと私は考えている。
金委員長が首脳会談を前に何度も強調していたことは「目の前の脅威がなくなれば核を持つ必要もなくなる」ということだ。首脳会談は、この一点を巡っての米朝の厳しい交渉だったと思う。その結果が、共同声明に表れている。この声明の主語が、米朝もともに国家ではなく、トランプ大統領と金委員長になっていることだ。そのことが何を意味するか。この約束はあくまでトランプ氏個人と金氏個人の約束に過ぎず、この約束は両国または一方の国の代表者が変われば反故になる可能性が極めて高いことを意味する。
たとえば尖閣諸島。オバマ大統領は日米安保条約5条の対象だと言ってくれた。これはアメリカの永遠の約束ではないから、大統領がトランプ氏に代わったら、またトランプ氏からも同じ言質を取り付けた。。
言っておくが、日本政府はアメリカの大統領が変わるたびに、同じことを繰り返していかなければならない。日本のメディアはそう口約束に過ぎないということが分かっているのか。少なくとも安倍総理は分かっているから、トランプ大統領にお願いしてオバマ氏の約束を継続してもらうことに成功した。が、そのつど、日本政府は米政府に借りを利息付きで継続せざるを得なくなる。借りをなくすためには尖閣諸島を実効支配して自衛隊を常駐させ、漁業活動の拠点も整備してしまうことだが、そんな勇気も日本政府にはない。実際、外務省に「アメリカが保障してくれている間に、なぜ尖閣諸島の実効支配に踏み切らないのか」と問い合わせても、「日本は話し合いで解決する方針ですから」というばかばかしい答えしか返ってこない。それならハーグの国際司法裁判所で尖閣諸島についての領有権問題に決着をつければいいのに、日本側は「中国との間に領有権問題は存在しない」という立場だから、話し合いによる解決をするつもりもないようだ。
では、アメリカ大統領が「尖閣諸島は日米安保条約第5条の範疇に入る」と口約束している間に、日本が実効支配に踏み切らないのか。実は「踏み切らない」のではなく、「踏み切れない」のが実情だ。日本が「では実効支配に踏み切ってもバックアップしてくれますか」と頼んでも、アメリカは「やめとけ」とブレーキをかけることが分かっているからだ。いや、実際に、そうした打診はすでに行っているかもしれない。が、アメリカが、「NO」と突っぱねてきたのではないか。アメリカにとっては、そんなくだらないことで米中間に軍事的緊張が高まることを、何よりも恐れているからだ。世界中から、日本がアメリカの属国扱いを受けている事情が読者に少しはお分かりいただけただろうか。
 
 いずれにせよ、金委員長の権力がそれほど強固なものではないことが、読者にもお分かりいただけたと思う。独裁政権の権力にとって一番危険なのは、すでに述べたように国民が飢えることと、軍のクーデターである。軍がクーデターを起こす場合、国民の支持が得られるような状態が生じるか(国民が飢えるケースが最大の要因になる)、権力者の近親者を担ぐことでクーデターの正当性を担保することだ。それが金委員長も分かっているから、将来、軍に担がれる可能性がある肉親の兄や叔父を暗殺・粛清してきた。そういう意味では、ひょっとしたら妹のヨジョン氏が、金委員長にとって最大のリスクになる可能性が強い。いまのところ、ヨジョン氏と金氏との間に齟齬は生じていないように見えるが、ヨジョン氏が力を付けるにつけ、その権力に群がろうとする官僚や軍幹部が増えてくる。これもまた権力を利用しようという人間の常である。ヨジョン氏もバカではないだろうから、兄の金委員長に寄り添う姿勢を崩していないように見えるが、「鉄のカーテン」の中の事情はなかなかわからない。
 私は金体制の存続を望んではいないが、いま北朝鮮で政権を揺るがすほどの混乱が生じたら、それは北朝鮮の核やミサイルどころではない、日本にとっても大問題に直面することになる。難民が日本にも大量に避難してくることは間違いないからだ。バカの一つ覚えみたいに「制裁、制裁」を連呼していれば済む問題ではない。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« 日本の携帯電話料金が世界一... | トップ | 朝日新聞が大混乱に陥ってい... »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事