小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

「憲法解釈変更による集団的自衛権行使を可能にする」という安倍総理の政治信条の行方は…?

2014-03-25 07:30:29 | Weblog
 読売新聞が自己否定を意味するスクープ記事を昨日(24日)朝刊1面トップで掲載した。タイトルは『集団(的)自衛権行使を限定』、サブは「日本の安全保障に重要な影響」である。
 なぜこの記事が自己否定になるのか。
 ほんの2日前(22日)に読売新聞は『集団的自衛権 解釈変更へ共通認識広げたい』と題する社説を掲載したばかりだからだ。
 集団的自衛権に関する従来の政府解釈は何度も書いてきたが、改めて書いておこう。「集団的自衛権とは、日本が直接攻撃されていなくても、密接な関係にある国が攻撃を受けた場合、日本が攻撃されたと見なして軍事力を行使する権利であり、国連憲章51条によって日本も固有の権利として認められているが、憲法9条の制約によって日本はその権利を行使することができない」というものである。
 この解釈を前提として安倍総理は第1次安倍内閣時から憲法解釈の変更によって集団的自衛権を行使できるようにすることを政治信条にしてきた。そのため2007年に私的諮問機関の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(第1次安保法制懇)を首相官邸に設け、元駐米大使の柳井俊二氏を座長に据えて憲法解釈に積極的な有識者を集めた。第1次安保法制懇は同年5月から8月にかけて5回開催されたが、安倍総理が健康を害して総理を辞任したため第1次安保法制懇も立ち消えになった、かにみえた。
 が、2013年12月に安倍政権が復活して「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(第2次安保法制懇)が再開されることになった。座長は柳井氏が再起用され、懇談会のメンバーもほぼ第1次安保法制懇と同じだった。
 昨年夏前までは、柳井氏は「年内に憲法解釈の変更によって集団的自衛権を行使できるような報告書を提出できる見込み」と語っていたが、私が8月29日に『安倍総理は勘違いしている。日本はすでに集団的自衛権を保持している』と題するブログを書き、そのことを首相官邸に通知してから、第2次安保法制懇のスタンスが微妙に変わりだしたようだ。「年内に報告書を出す」と胸を張っていた柳井氏はその後沈黙し、さらに報告書も年内に出せず、今年4月に先送りされた。
 一方安倍総理は昨年10月頃から「憲法解釈変更による集団的自衛権行使」をあまり口にせず、内容説明なしに「積極的平和主義」という新しい概念を乱発するようになった。そこで私は再び国連憲章を細部にわたって再検証し、今年1月6日、『安倍総理の集団的自衛権行使への憲法解釈変更の意欲はどこに…。積極的平和主義への転換か?』と題するブログを投稿、再度首相官邸に通知した。またマスコミ各社政治部や民主党や公明党などにも通知した。
 さらに2月28日には『NHKが迷走を始めた。NHKは安倍総理の私的放送局になったのか。トップの責任が問われるのは必至だ』と題するブログを投稿
した。NHKがニュースで第2次安保法制懇について「政府の有識者会議」と位置付けたことを批判したのが、このブログである。
「憲法解釈の変更によって集団的自衛権行使を可能にする」という安倍総理の方針を支持するスタンスをとる読売新聞や産経新聞は「政府の」という冠を付けて第2次安保法制懇をオーソライズしていた。一方批判的スタンスをとる朝日新聞や毎日新聞は「私的」という冠を付けていた。日本経済新聞はなにも冠を付けずにただの「有識者会議」と表記していた。そういう状況の中でNHKが第2次安保法制懇について「政府の有識者会議」と位置付けたのである。政治的中立性をNHKが放棄した瞬間である。
 私が再度、公明党に第2次安保法制懇の位置付けの重要性を通知して以降、公明党が一気に硬化し、与党内で自公の関係がぎくしゃくするようになった。また自民党内部でも安倍総理の独走に対する批判が強まりだした。安倍総理に対する反発が一気に噴き出したのが3月17日の自民党総務会だった。安倍総理は19日、あわてて総務懇談会を開いて、第2次安保法制懇とは別に自民党内に安倍総裁直属の新組織を発足させて集団的自衛権行使容認を検討させることを明らかにした。
 私は、ついに第2次安保法制懇は「憲法解釈の変更によって集団的自衛権を行使する」という結論に導く報告書の作成を断念したのだろうと考え、3月19,20日の両日に『ついに安倍総理の「集団的自衛権行使のための憲法解釈変更」の野望は泡と消えたのか。泡にしたのは私だ』と題するブログを投稿した。
 そうした経緯のなかで読売新聞が、24日の朝刊で自己否定を意味する、第2次安保法制懇が4月に出す予定の報告書の概要をスクープしたのだ。読売新聞は何度も社説で「憲法解釈変更で集団的自衛権を行使できるようにせよ」と安倍総理をバックアップしてきた。そして第2次安保法制懇が4月に出す予定の報告書に理論的裏付けを与えるためかどうかは知らないが、3回連続で『基礎からわかる集団的自衛権』の特集記事を掲載中でもあった。
 では読売新聞が24日朝刊1面トップでスクープした内容とはどういうものだったのか。リード記事をそのまま転載する。

 政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)(座長=柳井俊二・元駐米大使)が4月にまとめる報告書の中核となる集団的自衛権を認める憲法解釈案で、「放置すれば、日本の安全に重要な影響を与える場合」に限り行使を認める限定的容認の立場を採用することが23日、関係者の話で分かった。これにより、外国領土での戦争に加わるといった典型的な集団的自衛権は容認対象から除外させることになる。

 読売新聞は、このリード記事に続く本文記事の中で、これでは「周辺事態法」
となんら変わらない、と悲鳴を上げた。
 周辺事態法は1999年にすでに成立した法律で、「そのまま放置すれば、日本に対する直接の武力攻撃に至るおそれがある事態など、日本周辺の地域における日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態(周辺事態)に対応して日本が実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定め、日米安保条約の効果的な運用に寄与し、日本の平和及び安全の確保に資する」ことを目的にした法律である。
 つまり第2次安保法制懇は、憲法解釈によって、従来の政府解釈である集団的自衛権(日本が直接攻撃されていなくても、日本と密接な関係にある国が攻撃された場合、日本が攻撃されたと見なして軍事力を行使する権利)を完全に否定してしまったのだ。安倍総理はおそらく内々で、18日か19日に柳井氏から第2次安保法制懇がまとめる報告書の概要を知らされていたのであろう。安倍総理が第2次安保法制懇に期待していた「憲法解釈の変更によって、日本が直接攻撃されていなくても、日本と密接な関係にある国が攻撃された場合、日本が攻撃されたと見なして軍事力を行使できるようにする」(※あくまで政府解釈による「集団的自衛権の行使」を意味する。私は集団的自衛権の政府解釈は間違えていると、何度もブログで主張してきた)という悲願は裏切られたのである。安倍総理が自民党内部に、第2次安保法制懇に代わる集団的自衛権行使を容認するための研究機関として新組織を設置することにしたのはそのためだった。
 しかし、すでに事実上の自民党の最高意思決定機関である総務会では、安倍総理に対する批判が噴出している。「総理が変わるたびに憲法解釈がくるくる変わるようでは、憲法の意味がなくなる。憲法を改正して今日的状況下にある日本の安全保障問題を解決するのが筋だ」という意見が党内の主流になりつつある。総務懇談会で示した安倍総裁の新提案は、おそらく総務会で否決されるだろう。やはり、新憲法を制定して、現行憲法の平和主義の理念は継承しつつ、現在の日本が占めている国際的立場にふさわしい、国際とくに環太平洋の平和と安全に日本が果たすべき責任と義務を明確にしたうえで、NATOのような共同防衛体制をアメリカや韓国などと創り上げていくのが筋であろう。
 読売新聞は「憲法解釈変更によって集団的自衛権の行使を可能にすべきだ」と主張し続けて大恥をかいたが、これを契機として「新憲法制定論」の立場に立った主張を展開するのが、読者の信頼を取り戻す唯一の道である。
 すでに読売新聞は3月22日付社説『集団的自衛権 解釈変更へ共通認識広げたい』で、タイトルだけ見れば安倍総理の主張と同一線上の主張を行っているかにみえるが、内容は軌道修正を図りつつあることがうかがえる。この社説の中核をなす主張を紹介しておく。
「日本の安全保障環境が悪化する中で、様々な緊急事態に対処し、日本の領土・領海を守り抜く。そのためには集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊と米軍の連携を強化して、日米同盟の抑止力と信頼性を高めることが不可欠だ。
 日本が単独で対処するなら、今の何倍もの防衛費を要しよう。
 むろん、集団的自衛権の行使を容認する新解釈が将来、再び安易に変更されることは許されない」
 この主張は、従来の政府解釈の「集団的自衛権」とは明らかに一線を画している。ここまで日本の安全保障についての理解を深めたのなら、日米同盟の強化によって日本の安全保障をより確実なものにするだけでなく、新憲法制定によって日本が現代の国際社会に占める立場にふさわしい国際平和への貢献と責任を果たすべく環太平洋共同防衛体制の構築を主張してほしい。このような共同防衛体制を構築することが、国連憲章51条が定めた「固有の権利」としての集団的自衛権の行使である。
 おそらく、早晩、読売新聞の主張はそういう方向に転換するであろう。
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