小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

北朝鮮のサイドのミサイル発射で、危険水域にあった安倍政権が息を吹き返した理由

2017-09-17 07:47:49 | Weblog
 15日早朝、北朝鮮が再び北海道・襟裳岬上空を通過する弾道ミサイルを発射した。私は当日朝7時のNHKニュースを見ていたが、7時2分ころ臨時ニュースに切り替わり「Jアラート」が発せられたことを知った。少したって詳細が分かったが、襟裳岬上空を通過したのは7時5分前後ということだった。もし襟裳岬付近にミサイルが墜落していたら、たった3分では逃げようがない。あまり意味のない警報は人騒がせなだけだ。少なくとも、ミサイル発射30秒後には警報を出せるようにしてもらいたい。
 今回のミサイルの飛行距離は3700kmと見られ、前回より飛距離が1000kmも伸びたようだ。わずか2週間で飛躍的に飛距離を伸ばした北朝鮮の技術力は侮れない。核弾頭を小型化し、米本土を射程内に収めるまで、そう長い時間をかけずに北朝鮮は開発に成功するのではないかという気がする。
 が、いまのところ北朝鮮は「日本や韓国はアメリカの核の傘で守られているが、我が国は自国の核とミサイルで抑止力を強めるしかない」として、核・ミサイル開発の正当化を主張している。
 北朝鮮の核・ミサイル開発は、確かにはた迷惑な話だが、日本政府が主張し続けているようにさらに圧力と制裁を強めることで北朝鮮に開発を断念させることが出来るだろうか。ロシア政府首脳が言うように「北朝鮮は自国の安全が保障されない限り、雑草を食べてでも核・ミサイル計画を断念することはないだろう」。
 ロシア首脳の発言で思い出したことがある。
 「欲しがりません、勝つまでは」
 これは1942年(昭和17年)に大政翼賛会と大手新聞社などが戦意高揚のために広く国民から募集し入選した標語で、当時は11歳の少女が作ったとされ、国民がこの標語の下に一丸となっていった。標語自体は、少女の父親が作り、娘の名前で応募したことが戦後、明らかになったが、だれが作ろうと今の北朝鮮は当時の日本と同じような状況にある。そこで私も。
 「やめるまで、日本も続ける圧力と制裁」
 16日の全国紙5紙(読売・朝日・毎日・日経・産経)と首都圏でかなりの読者がいる東京も含め6紙の社説を読み比べてみた。驚いたことにすべて同じ論調なのである。つまり、もっと圧力をかけろ、制裁を強めろ、という一点で政府の主張と足並みを揃えているのだ。すべてのメディアが足並みを揃えた時の怖さを、もう日本のメディアは忘れてしまったのだろうか。ほんの1か月前には日本が無謀な戦争に突っ込んでいった背景を、いままで明らかにされていなかった事実の発掘に踏まえて、様々な特集を報道したばかりだというのに…。
 これまでもブログで書いてきたように、北朝鮮を追い詰めすぎると、本当に暴発しかねない。現に、日本はかつてABCD包囲網で石油の輸入をストップされ、最後通告と思い込んだハル・ノートで大陸や南方からの無条件撤退をアメリカから要求されて、「やむを得ず」「自衛」のために、逆立ちしても勝ち目がないアメリカに先制攻撃を始めた。そういうアホは、世界に日本人だけしかいない、と日本政府や政府に屈服したメディアは本当に思っているのか。北朝鮮は、圧力や制裁を強めれば、日米韓を相手に勝てっこない「挑発」はこの辺でやめておこう、と理性的な判断をしてくれる国だと思っているのか。
 そのくせ、北朝鮮は何をするかわからない国だ、と理性的な判断力を失っていると批判している。理性的判断力を失っている国に、圧力をかければ理性を取り戻すと思っているのだろうか。そういう主張をする人たちは、一度精神科の医者に精神鑑定してもらったほうがいい。
 ところで、前々から違和感を持っていた言葉がある。「挑発」である。私は北朝鮮の核・ミサイル開発について、挑発という言葉を使う場合、必ず鍵カッコを付けてきた。「暴走」と書く場合は鍵カッコを付けたことはない。が、メディアは何のためらいもなく鍵カッコを付けずに「挑発」と書いている。誰も違和感を抱かなかったのだろうか。
 念のため、『広辞林』などの辞書やネットで「挑発」という言葉の意味を調べてみた。おおよそ、以下のような意味のようだ。
 
相手を刺激したり、相手の劣等感などを利用して相手を逆上させて事件や紛争などを引き起こすよう仕向ける行為。

 私もこの解釈で納得がいった。つまり挑発は強者が弱者に対して、弱者が理性を失って無謀な行為に走らせようと意図する場合に使われる言葉だからだ。
そう考えれば、日本を対米開戦に踏み切らせる直接のきっかけとなったハル・ノートは、アメリカ政府に言わせれば「外交交渉の切り札の一つに過ぎず、最後通告などではなかった」という言い訳も、アメリカ側にとっては最後通告のつもりではなかったとしても、日本側にとってはレッド・ラインを超える挑発を意味したということだ。その挑発にまんまと引っかかったのが、当時の日本政府であり、そしてメディアだったのだ。
 同様に、当初はアメリカだけを対象に「抑止力」として核・ミサイル開発に血道をあげていた北朝鮮が、なぜ突然、日本への敵意をむき出しにして挑発的言動を弄するようになった理由も完全に理解できる。
 当初は、日本に対しても比較的穏やかな批判に終始していた北朝鮮だったが、
最近は「日本列島を海に沈める」などと、挑発を通り越して威嚇的ともとれる言辞を弄し始めた。それだけ自国の核・ミサイルに対する自信を深めてきたことの表れでもある。今や「挑発ごっこ」は米朝間から日朝間に移りつつあるかにさえ見える。安保理合意に向けてひたすら米中ロをはじめ安保理理事国首脳に働きかけ続けた安倍総理の、北朝鮮の敵意の対象がアメリカから日本に移りつつあることへの責任は軽くない。政権内の不祥事から生じた内閣支持率低下に歯止めをかけるために、国益と引き換えに行った延命策は、いずれ歴史の審判を仰ぐことになるだろう。

 私が前回の北朝鮮のミサイル発射は安倍総理にとっては「たなぼた」のプレゼントになるという予想は、残念ながら的中した。メディアの世論調査は軒並み安倍政権支持率のV字回復を示している。安倍総理は、早ければ今月28日からの臨時国会冒頭での解散に打って出るかもしれない。あるいは自民の勝利がほぼ確実な10月22日の衆院3補選の結果を見てから解散に打って出る可能性もある。その場合、アホなメディアは3補選の結果を「自民、支持率回復」と報道するだろう。また3選挙区で野党共闘が崩れたことで、次期総選挙でも野党共闘が不可能になったと報じるかもしれない。
 次期総選挙で野党共闘がどうなるかは、まだわからない。民進党の前原代表は、代表選の前から「理念・政策での一致点がない政党との共闘はあり得ない」と語っていたが、あくまで共闘にしがみつきたい共産党は敢えてどの道勝てっこない3補選で独自候補を擁立し、前原民進党に対して「共闘しなければ、こういう結果になる」とプレッシャーをかけるつもりだからだ。3補選の結果を見て民進党の共闘派が勢いを盛り返す可能性もあり、前原代表がどうかじ取りをするか、鼎の軽重が問われる場面が生じる。
 が、解散総選挙に踏み切った場合、安倍総理に大義名分があるのか。憲法改正について国民に信を問う、というなら十分大義名分が成り立つが、肝心の足元である自民党内で9条をめぐりごまかし改正派(安倍総理など)と正統派(石橋など)との間で調整がついていない。野党は憲法問題を争点にすることは間違いなく、自民はまた争点回避作戦に出るのだろうか。
 いずれにせよ、先の総選挙(戦後最低の投票率を記録)を下回る投票率になる可能性は否定できない。ま、その場合政権党である自民党の圧勝という結果になることだけは間違いない。