小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

昨年末の総選挙は違憲状態との最高裁判断を読売新聞はどう評価するか?

2013-11-21 00:06:59 | Weblog
 いま11月20日の午後8時ジャストです。NHKのクローズアップ現代を見た後、このブログ記事を今日中に書いて投稿します。
 実は今掲載中のブログ『フィギュアスケート競技のNHKニュース7の報道スタンスは偏向しているぞ!』の訪問者・閲覧者が減少するどころか増加の一途をたどっているため、このブログ記事にコメントされた読者(おそらくNHKの関係者かNHKから金銭を貰ったと考えられる人)に対する私の反論を早く投稿したいのですが、その前に緊急投稿しなければならない事態が生じましたので、あえて割り込み投稿することにしました。その緊急問題とは、昨年末の総選挙について最高裁判所が「違憲状態での選挙だった。一人別枠方式を廃止はしたが不十分」という判断を今日下したことをNHKのニュース7で知ったからです。
 そもそも選挙制度改革は、総選挙後の通常国会における喫緊の課題の一つでした。というのは、2009年に行われた総選挙における1票の格差2.30倍が最高裁において11年3月に「違憲状態」という判決が下され、2倍以上の格差が生じたのは小選挙区導入時に「一人別枠方式」が設けられたためと判決理由が述べられ、「一人別枠方式」の排除が求められていたのです。
「一人別枠方式」というのはすべての都道府県に小選挙区制とは別枠で衆議院議員を選出するという制度です。小選挙区制度が導入されたのは自民党単独政権下における1994年で(実施されたのは96年の総選挙から)、農村など地方に大きな選挙基盤を築いてきた自民党が、人口の少ない過疎地域の声も国政に反映すべきだ、というもっともらしい口実をつけて47都道府県のすべてに別枠で一人ずつ議員を割り振るという、党利党略に基づいた制度でした。
 その制度がなぜ「国民の権利はすべて平等」という憲法の理念に反しているかというと、たとえば人口が最も少ない鳥取県(59万人)と最も多い東京都(1316万人)に同じく別枠で一人の議員が割り振られると、この制度で当選した議員が獲得した1票の重みは22.3倍にも上ります。その結果、小選挙区制における選挙民の1票の重さに2倍以上の格差が生じることになったのです。
 ちなみに総選挙における1票の格差を列挙しておきます。
 第43回総選挙(2003年)  2.15倍
 第44回総選挙(2005年)  2.17倍
 第45回総選挙(2009年)  2.30倍
 昨年の後半、国民の支持を失っていた民主政権に対して自公野党は早期解散を強く迫りました。その当時の政局については詳しくブログで書いていますが、民主・野田首相が安倍・山口・小沢の3党首に党首会談を呼び掛け、11月14に実現しました。しかも、その会談は異例中の異例とも言える公開討論でした。ふつう党首会談は行き詰った政局を打開するため密室で行われます。もちろん国会での対決は国民の目にさらされて行いますが、政局を打開するための駆け引きである党首会談を公開で行うということは通常ありえません。それは野田首相が打った最後の大博打でもあったのです。選挙制度改革についての党首会談のやり取りを朝日新聞が記事にしています(要約)。その部分を転載します。

安倍 野田総理は確かに約束した。(消費税増税の)法案が成立したあかつきには、近いうちに信を問うと。法案は成立した。約束の期限は大幅にすぎている。
野田 1票の格差と定数是正の問題。1票の格差の問題は違憲状態だ。一刻も早く是正しないといけない。一方で定数削減は、2014年に消費税を引き上げる前に、まず我々が身を切る覚悟で具体的に削減を実現しなければいけない。それを約束していただければ、今日、近い将来を、具体的に提示したい。
安倍 まずは0増5減。皆さんが賛成すれば、明日にも成立する。
野田 定数削減はやらなければならない。消費税を引き上げる前に、この国会で結論を出そう。どうしても定数削減で賛同してもらえない場合は、ここで国民の皆さんに約束してほしい。ここで定数削減は、来年の通常国会で必ずやり遂げる。それまでの間は議員歳費を削減すると。このご決断をいただければ、私は今週末の16日に解散してもいいと思っている。
安倍 まずは0増5減。これは当然やるべきだ。来年の通常国会において、すでに私たちの選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を約束している。山口 総理はこの16日にも解散してもいいと。
野田 16日解散、ぜひやりたいと思うが、問題は1票の格差と定数削減だ。ぜひ協力を。

 実際には安倍総裁は翌日、党首会談での約束をあっさり撤回しました。朝日新聞は15日の夕刊で「削減数、公約に記さず…安倍氏方針」と報じました。
 すでに皆さんご承知のように、昨年末の総選挙で自民党が圧勝しました。そして再び自公政権が成立し、通常国会で選挙制度改革の一環として0増5減法案が成立しました。その結果、いちおう1票の格差は1.98倍に収まり2倍以下になることになりました(次の総選挙からです)。ただ、人口の大都市集中化は依然として進行しており、次期総選挙では1票の格差は0増5減では2倍を超えると指摘する人も少なくありません。ただし民主はこの法案に反対しました。民主の方針は一貫して「1票の格差是正と定数削減のセット」だったからです。
 この0増5減法成立に諸手を挙げて賛成したのが読売新聞でした。読売新聞は社説でこう主張しました。
「そもそも昨年の衆院選前に1票の格差を是正できなかった主たる責任は、当時の与党・民主党にある。衆院解散を先送りする『党略』の思惑から、格差是正と抜本改革の同時決着に固執したためだ。民主は昨年秋、ようやく『0増5減』の先行処理に同意したのに、いまになって反対に転じ、抜本改革との同時決着に回帰するのは筋が通らない。緊急性を擁する格差是正が次期衆院選に間に合わない恐れさえ生じよう」
 その後、11月16日には一応国会で小選挙区の一人別枠方式の規定が削除され、0増5減の選挙区見直しを定めた法案が成立しましたが、新たな区割りで一人別枠方式は温存されました。今日の判決で最高裁は、前回の訴訟と同様総選挙については「違憲状態」との判断にとどめましたが、一人別枠方式を事実上温存した「選挙制度改革」については厳しい注文を付けました。
 さて読売新聞は、この最高裁判決についてどう評価するでしょうか。消費税増税は景気の腰折れを招く、と社説で消費税増税に反対した読売新聞は、消費税増税が決まったとたん反対論を引っ込めてしまい、常に権力にすり寄る姿勢をあらわにしましたが、今回は一人別枠方式を事実上温存した新区割りを批判した最高裁判決をどう受け止めるのでしょうか。民主の党利党略を批判したからには、自民の党利党略も批判しないと筋が通らないと思うのですが……。