小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

たばこを目の敵にする厚労省は、なぜ飲酒の害毒には目をつむるのか

2012-09-15 06:48:45 | Weblog
 酒に関する故事・ことわざ・慣用句はかなり多い。旺文社発行の『成語林』によれば47もある(ただし、酒が頭文字になっているケースのみでだ)。おそらくひとつの単語についてこれほど多くの故事・ことわざ・慣用句は他に例を見ないであろう。その中で、最も人口に膾炙しているのは「酒は百薬の長」であろう。『成語林』によればその意は「酒は節度を心得て適度に飲めば、どんな薬よりも体のためになる。酒を賛美したことば」だそうだ。
 飲酒を美化した故事・ことわざ・慣用句は、そのほかに五つある。
 「酒は天の美禄」(酒は天から賜った素晴らしい俸禄)。
 「酒は憂いを掃う玉箒」(酒は心配事や悲しみを払ってくれる箒)。
 「酒に十の徳あり」(①百薬の長である。②寿命を延ばす。③旅の時は食事の代わりになる。④寒いときに体を温める。⑤他家を訪問するときの手土産によい。⑥憂鬱な気分を晴らす。⑦平凡な人でも偉い人と対等に話ができる=酒の席は無礼講の意。⑧労苦をいやす。⑨酒の席は地位を気にせず和やかに話ができる。※⑦と同じ。⑩一人暮らしの友となる)。
 「酒なくて何の己が桜かな」(酒がなくては花見をする気になれない)。
 「酒の徳狐ならず必ず隣あり」(酒飲みは孤独でなく必ず友達ができる)。
 しかも「酒が健康に良い」とするものは「酒は百薬の長」のほかには「酒に十の徳あり」のうちの①(これはすでに重複している)と②だけである。
 一方飲酒がもたらす害悪を強調した故事・ことわざ・慣用句は枚挙にいとまがないくらいある。
 まず「酒は百薬の長」に対峙する故事・ことわざ・慣用句から紹介しよう。
 なんといってもその一番は「酒は百害の長」だ。これは説明するまでもないと思うが、酒は体に害を与える中で最たるもの、万病の原因という意味である。
 また「酒を嗜む勿れ、狂薬にして佳味に非ず」という格言もある。その意味は、酒を嗜好品にしてはいけない、酒は人を狂わせる飲料で、決しておいしいものではない。
 健康問題とは限らないが、酒の害を表す言葉に「酒は諸悪の基」というのがある。酒は様々な悪事の原因になっているという意味。諸悪と言ってもいろいろある。そういう意味の格言の類は多すぎるので箇条書きで紹介しよう。
①「酒入れずば舌出ず」「酒を口に入る者は下出ず」(酔うと口数が多くなり、失言をしてしまう。酒は身の破滅を招く)
②「酒が言わせる悪口雑言」(酔うと発言に抑制力がなくなり他人の悪口を言いたい放題になる)
③「酒買って(あるいは酒盛って)尻切られる」(酒をごちそうしたのに酔っぱらった相手から尻を切られるの意から転じて好意を寄せた相手から逆に損害を被る。※「飼い犬に手を噛まれる」)
④「酒が酒を飲む」「人酒を飲む」「酒酒を飲む」「酒人を吞む」(酒を飲みだすと抑制が効かなくなる)
⑤「酒極まって乱となる」「酒は礼に始まり、乱に終わる」(最初は和やかに始まった酒宴も、酒量が限度を越すと席が乱れ喧嘩沙汰になる)
⑥「酒と朝寝は貧乏の近道」(酒を飲みすぎたり、朝寝坊して仕事ができなくなると貧乏になる)
⑦「酒に吞まれる」「酒に回される」(酒を飲みすぎると正体を失う)
⑧「酒には猛き鬼神もとらくる習い」(いくらしっかりした者でも酒に酔えば正体を失う。「とらくる」は心の締りがなくなるという意味)
⑨「酒によって件のごとし」(酒によってくだをまくことを洒落て言った言葉)
⑩「酒飲みは半人足」(酒飲みは飲んでいないときも半人前の仕事しかできない)
⑪「酒は先に友となり、あとに敵となる」(見知らぬ人と隣り合って飲むうち互いに打ち解けあって友達になることがあるが、次第に口喧嘩が始まり、殴り合いの喧嘩になる)
⑫「酒は三献に限る」(酒は三献でやめないと酒席を乱したり、体にも良くない)
⑬「酒は猶兵のごとし」(酒は武器を同じで酔っぱらうと人間兵器になる。「兵」は兵器のこと)
⑭「酒は飲むとも飲まれるな」「酒は飲むべし飲むべからず」「酒はほろ酔い」(適度な飲酒は良いが、限度を超えるとろくなことはない)
⑮「酒は人を酔わしめず人自ら酔う」(酒に酔うのは酒のせいではなく、飲む人に責任がある)
⑯「酒は本性を現す」(正気の時は抑制できていた本性が、酔うと抑制が効かず表面化する。酒癖が悪いこと)
 以上は故事・ことわざ・慣用句であるから、当然科学的根拠に基づいたものではない。が、「酒は百薬の長」が最も有名な格言となったため、本気でそう信じている人が大半のようだ。日本でなぜこのような格言が最も有名になったかというと、江戸時代の酒売り商人がこの格言を酒を売るために流布させたという説がある。
 では本当のところはどうか。健康に良いことがいちおう科学的に証明されているのは赤ワイン、それも熟成した高級ワイン(「ビンテージワイン」)を少量飲むのが健康に良いというだけである。ビンテージワインにはポリフェノールが大量に含まれており、ポリフェノールは赤ワインの長期貯蔵によって重合体になり制がん効果が生じるようだ。がんは酸化酵素がDNAに触れDNAを傷つけることが原因とされている。ポリフェノールは酸化しやすい物質で、体内に入ると活性酸素とすばやく結合し、がんの原因となる悪玉活性酸素を消滅させてしまうという。
 しかし、いくら制がん効果があるといっても大量に飲めば、赤ワインもアルコール飲料だから、かえって健康を損じかねない。これまでの研究結果によれば、グラス約1杯で十分効果があるらしい。ポリフェノールを大量に含んでいる野菜類に対し、赤ワインは20倍以上のポリフェノールを含んでいると言われているから大量に飲む必要もない。
 さらに問題なのは、ワインはビールと同じく日持ちがしないということである。いったん栓を抜いたらその日のうちに飲んでしまわなければならない。高額なビンテージワインをグラス1杯(約150ml)飲むためだけに買うバカはいないだろう。がん予防のためにビンテージワインをグラス1杯だけ飲め、などと勧める医者がいたら精神病院にでも入ってもらった方がいい。
 健康にいいとされる唯一のアルコール飲料である赤ワインにしてこの有様だ。まして他のアルコール飲料であるビールやウイスキー、日本酒、焼酎などが体にいい訳がない。なのに厚生労働省は酒の害毒には目をつむり、たばこばかり目の敵にしている。どういうことか。実際たばこの箱の両側面にはどういう記載がされているか、それをまず読んでいただきたい(念のため、私は10年ほど前から禁煙している)。
  「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性があります。疫学的な推計によると、喫煙者は心筋梗塞により死亡する危険性が非喫煙者に比べて約1.7倍高くなります」(※主流煙による健康被害)
  「たばこの煙は、あなたの周りの人、特に乳幼児、子供、お年寄りなどの
  健康に悪影響を及ぼします。喫煙の際には、周りの人に迷惑にならないよ
  うに注意しましょう」(※副流煙・間接煙による受動的健康被害)
 なお主流煙とは喫煙者自身が吸引するたばこの煙のこと、副流煙あるいは間接煙とは喫煙者の近くにいる人が受動的に吸ってしまうたばこの煙や喫煙者の呼気を吸ってしまうことである。
 煙草の箱の両側面に記載されている注意書きはこの二つだが、なぜ心筋梗塞の危険性が強調され、肺がんの危険性が記載されていないのか、このブログをお読みになっている方は疑問に思われたのではないだろうか。
 ただし厚労省もたばこに含まれている発がん性物質については公表している(財団法人「健康・体力づくり事業財団」による)。その報告(要約)によれば、こういうことだ。
 たばこからは3044の、たばこの煙からは3996の化学物質が分離されているという報告がある。これらの化学物質は主流煙の重量の95%以上を占めており、このうち1172はたばこおよびたばこの煙の両方に存在していたと報告されている。また煙草の主流煙、副流煙に含まれる化学物質のうち人体に有害なものは250を超え、発がん性を疑われるものは50を超えていると言われる。煙草の煙および受動喫煙は、いずれもそれ自体で「ヒトへの発がん性あり」と判断されている。これらの発がん性物質は グループ1・グループ2A・グループ2B に分類され、発がん性があると確認されている「グループ1」に属する化学物質は10種類ある、というのが厚労省管轄の財団が報告した内容だ。
 しかし私がかつてがん研の所長に取材したとき、えっとびっくりした話があるので皆さんにもお伝えしておこう。私が取材した当時は所長によれば、たばこの煙に含まれる化学物質のうち発がん性が疑われているのは40数種類発見されているが、実は同じくらいの数のがん抑制物質も含まれているというのだ。「今の社会的風潮を考えると、あまり大きな声で言えないけどね」と所長は笑いながらそう言った。所長が続けて言ったことは、かなりの年配の方なら覚えていると思うが、かつてがん研の所長が「魚の皮の焼き焦げには発がん性物質が含まれている」という研究論文を書き、その論文が、世界的に権威が認められている『ネイチャー』(イギリス)だったか『サイエンス』(アメリカ)だったかに掲載されたことで日本でも大騒ぎになり、家庭でも料理店でも焦げができないように魚を焼く工夫をしたり、焦げてしまった時は皮をはぎ取るといった社会的風潮が生じた時期がある。そのエピソードを持ち出して所長は「実は当時の研究員のほとんどが腹の中でせせら笑っていたんです。がんになるほどの量の魚の焦げ皮を食べるには一度に4トントラックに山積みするくらいの量を食べないとがんにはならないからです。欧米には魚の塩焼きという食文化がないことと、論文の投稿者ががん研の所長という肩書がものを言ったんでしょうね」と内輪話をしてくれた。
 で、私はこの取材で感じた疑問をぶつけてみた。「たばこや魚の焼き焦げの話を伺うと、あらゆる食品には発がん性物質とがん抑制物質が同居しているのではないかという気がするのですが、違いますか」と。所長は大きくうなずき「その通りなんです。だから発がん性物質の探索にはいろんな要素を考慮に入れながらやらないと、元所長のようにあとで笑い者になってしまうことになりかねませんからね」。
 ではどっちの化学物質(つまりあらゆる食品に含まれている発がん性物質とがん抑制物質)が人にどういう影響を与えるかを私は考えてみた。もちろん私は医者でもなければがんについて特に興味を持って調べてきたわけではない。あくまで私なりの論理的思考力を駆使して考えた結論だということを前提に、読者自身も自分の思考力を駆使して考えてみてほしい。「素人の発想」は時にバカにできないんですよ。
 私はまず人種差が大きいのではないかと考えた。煙草の煙に含まれる発がん性物質が悪影響を与える臓器の大半は肺だが、大まかに白人・黄色人・黒人・アラブ人ごとに喫煙率と死亡原因に占める肺ガン率を調べれば、たばことがんの因果関係が人種によってかなり違うことがある程度明確になるのではないだろうか。これが専門家ではない素人の論理的視点である。
 そう考えた理由は簡単である。世界中でたばこを目の敵のように扱いだしたのは欧米諸国、つまり白人が多数を占める国である。まずたばこ税がめちゃくちゃ高い(その結果イギリスのたばこは世界一高く、ひと箱1000円以上する)。さらに航空機の全面禁煙を始め、公共機関や飲食店の全面禁煙など、1日に何10本もたばこを吸う日本人にとって欧米旅行は苦痛以外の何物でもない。
 次に、同じ人種であっても様々な要因による個体差を無視できないのではないかとも思う。その個体差の中でも最大の要因が遺伝子にあることはよく知られている。ただ必ず遺伝子が個体差を決定づけているかというと、そういうわけではない。あくまでも統計的比率でガンになりやすい確立が高いか低いかを推測できるだけの話だ。こうした傾向はガンに限らず、ほとんどすべての病気に共通して言えることである。
 ちょっとたばこに深入りしすぎたが、厚生労働省が公表しているアルコールの健康に与える影響の研究結果を『健康日本21』から抜粋しよう。 
   我が国においてアルコール飲料は、古来より祝祭や会食など多くの場面で飲まれるなど、生活・文化の一部として親しまれてきている。一方で、国民の健康の保持という観点からの考慮を必要とする。他の一般食品にはない次のような特性を有している。
  (1)致酔性:飲酒は、意識状態の変容を引き起こす。このために交通事故などの原因の一つになるほか、短時間の多量飲酒による急性アルコール中毒は、死亡の原因になることがある。
  (2)慢性影響による臓器障害:肝疾患、脳卒中、がん等多くの疾患がアルコ   ールと関連する。
  (3)依存性:長期にわたる多量飲酒は、アルコールへの依存を形成し、本人の精神的・身体的健康を損なうとともに、社会への適応性を低下させ、家族等周囲の人々にも深刻な影響を与える。
  (4)未成年者への影響・妊婦を通じた胎児への影響:アルコールの心身への影響は、精神的・身体的発育の途上にある未成年者には大きいとされており、このため、未成年者飲酒禁止法によって、未成年者の飲酒が禁止されている。また、妊娠している女性の飲酒は、胎児性アルコール症候群などの妊娠に関連した異常の危険因子である。
   アルコールに関連する問題は健康に限らず交通事故等、社会的にも及ぶため、世界保健機関では、これらを含め、その総合的対策を講じるよう提言している。
   アルコールに起因する疾病のために1987年には年間1兆957億円が医療費としてかかっていると試算されており、アルコール乱用による本人の収入減などを含めれば、社会全体では約6兆6千億円の社会的費用になるとの推計がある。これを解決するための総合的な取り組みが必要である。
 ではなぜたばこについては社会悪のような扱いをしながら、アルコールについては野放しにしているのか。まず考えられるのは欧米ではあまりアルコール飲料についての厳しい規制をかけていないことから、日本だけ厳しい規制をかけることをためらっているのではないか、ということである。これも素人ゆえに思いついた論理的視点である。
 よく知られている事実は、フランス人はワインを水代わりに飲み、ドイツ人はビールをやはり水代わりに飲んでいるということである。となると疑問に思うのはイギリス人である。これもよく知られている事実だが、イギリスの水は多量の石灰分を含んでおり、洗濯物を干す場合、取り込む直前に乾いた衣類やタオルをパタパタはたいて洗濯物に付着した石灰分の粉を叩き落とすという習慣がいまだ定着しているということだ。イギリスの飲食物がまずいというのは世界中で知られている事実だが(最近はレストランなどでは石灰分を含まないミネラルウォーターを調理には使っているようだ)、はたして家庭での飲料水はミネラルウォーターにしているのか、それともフランスやドイツのようにアルコール飲料で代用しているのか、ご存知の方がいらしたら教えていただきたい。
 つまり、こうした事例から一般的に(あくまで個体差を無視した一般論として)言えることは、白人はアルコール飲料に強いのではないかという推論である。もし日本で朝から水代わりにアルコール飲料を飲む人がいたら、どんなに酒に強い人でも「アル中」の部類に入れられるであろう。
 日本の医療改革は明治維新によって始まった。当然それ以前は東洋医学しか日本では認められていず、明治政府が目指した「日本近代化」はあらゆる分野、制度、産業や文化、教育に至るまですべてを欧米化することと同義であった。この「日本近代化」政策が、今日に至るまで日本のあらゆる分野に大きな痕跡と影響力を残しており、例えば読売新聞の「無能」としか言いようがない記者グループは「昭和時代」という本来なら重要な意味を持つ歴史検証のシリーズを連載しながら、その検証をまったく行っていない。新聞記者にとって「無能」と烙印されることは、私が読売新聞読者センターの某から受けた屈辱的な表現「ねつ造した方ですね」と同様、「死ね」と言われるに等しい屈辱的な表現である。私の場合は、残念ながら電話での会話の中で投げつけられた言葉であって「侮辱罪」が成立するための「公然と」という要件を満たしていなかったため告訴は断念したが、このブログはだれでも読めるものであり、「公然と」という要件を完全に満たしているからぜひ告訴してもらいたい。読売新聞側がどんな大弁護団を組んで私を裁判所に引っ張り出しても、私はたった一人で闘い、勝つ自信がある。
 それはともかく、たばこと酒に対する厚労省のスタンスは依然として「欧米に倣え」という明治体質を引きずっているということを言いたかったのが、このブログの趣旨である。なぜ厚労省はたばこや酒について、その影響度を、まず日本人と欧米人との人種差があることを前提に考え、欧米は欧米、日本は日本、といった当たり前の考え方を前提に(世界中に通用させる必要がない)制度や規制を設けようとしないのか。そういう意味では厚労省の担当者(当然キャリア組も含め)も読売新聞の記者同様「無能」という烙印を押さざるを得ない。
 私が10年ほど前に禁煙に踏み切ったことはすでに書いた。アルコール飲料にドクターストップがかかり、禁酒に踏み切ったのはごく最近の8月4日である。その前日、かかりつけの内科クリニックに診察を受けに行った。血圧降下剤と尿酸値を下げる薬(痛風の治療薬)をもらいに行ったのだが、「小林さん、ちょっと顔色が悪いね。血液検査をしてみましょう」と言われ、別に拒否する理由もないので血液検査をしてもらった。ところがその夜7時ごろ看護師から電話があり、「先生から早急にエコー(超音波による画像診断)検査をしたいというお話がありました。ご都合がつけば明朝8時に来ていただけませんか。なお今日の夕食後は水かお茶以外のものは一切口にしないでください」と言われ、別によんどころない予定もなかったので行ったのである。午前8時というのはもちろん診療時間外の特別診察である。それほどの重大な何かがあったのかと不安に駆られてエコー検査を受けたのだが、そのあと診察室でかなりショックな話があった。
 医師はまず血液検査のデータの説明から始めた。
 ① γ―GTP(アルコールが肝臓に機能障害をもたらす数値):1580(基準値:
   0~70) ※以下カッコ内は基準値を示す数値。
 ② GOT(肝機能が正常か否かを示す数値):72(10~40)
 ③ GPT(同上):31(5~45)
 ④ ZTT(肝硬変を生じている可能性を示す数値)14.6(2.0~12.0)
 ⑤ 中性脂肪(膵臓機能が正常か否かを示す数値):258(35~149)
 以上の五つの数値が異常であることの説明をしたうえで、肝臓のエコー検査による画像をモニターに示し、「この個所が肝硬変を起こしている可能性がきわめて高いと考えられます。機能障害を起こした肝臓を正常化する薬は少なくとも現在はありません。すり減ったタイヤを復元する方法がないのと同じで、タイヤを交換せず使い続けたらますますすり減ってパンクするかスリップして事故を起こすか、お分かりですね。この五つの異常値はすべてアルコールによる内臓障害であることを示しています。ただちに飲酒をやめてください。そうしてくれないと、今後小林さんの健康について責任を持てません」と、いわば最後通告を宣告された感じだった。その日から私は禁酒を始めたのである。
 禁酒の結果は劇的だった。
 このことはあまり公表したくなかったのだが、実は1年ほど前から尿失禁・便失禁になっていた。尿失禁・便失禁を経験したことがない方は「失禁」の意味がお分かりではないだろうが、尿意も便意も感じないのに尿を漏らしたり便を垂れたりすることを「失禁」という。尿失禁の場合は少し時間がたつとパンツが冷たくなるので「あ~、やっちゃった」とわかるのだが、便失禁の場合はトイレに行ったり風呂に入るためパンツを脱ぐまでわからないので厄介なのだ。
もちろん対策がないではない。尿失禁の場合は泌尿器科のクリニックでタムスロシン塩酸塩OD錠という薬(前立腺の尿の通りをよくする薬)を処方してもらって以降治まった。
 便失禁の場合は肛門科も兼ねている例の内科クリニックでロペミンカプセル(下痢止めの薬)を処方してもらった。この薬は大腸の中で便を固める効能がある薬なのだが、定期的に飲み続けると便秘になってしまうという副作用がある。だから、いったん固い便が出るようになったら薬の服用を中断し、また便が軟らかくなったら服用しなければならないのだが、軟らかい便が固くなるのに即効性がなくて数時間かかるのに、効能が切れるのは一瞬で、しばしば突然便失禁を生じたりした。ところが禁酒を始めてから3日も立たないうちに軟便がまったくなくなり、以降ロペミンカプセルはまったく呑んでいない。
 私は週末を除いてほぼ毎日フィットネスクラブに行っているが、禁酒するまでの約2年半の間、ただ風呂に入りに行くくらいで肝心のエクササイズをする気にもなれなかったし、ブログもこの間まったく中断していた。私がブログ活動を再開したのは禁酒生活に入ってから5日目の『仙台育英高校は甲子園大会に出場できるのか?』(8月8日)と題するいじめ問題を取り上げたのが第1弾で、以降 1か月余の期間にこのブログで15回目を数える。しかもこの間フィットネスクラブでは毎日最低3プログラムに参加し、プールで泳いだりジムでも20~30分間の筋トレを欠かしたことがない。フィットネスクラブの友人たちもインストラクターも「一体小林さん、どうなっちゃったの?」と聞くぐらいだ、彼らは私がブログ活動を行っていることを知らないから、もし知ったら腰を抜かすのではないかとひそかに微笑んでいる。
 そうした状況は禁酒を始めて約1か月後に行った血液検査の結果にもはっきり表れた。たったひと月で五つの重要な異常測定値が、すべて著しく下がったのだ。
 ① γ―GTP:1580→403 (基準値:0~70) ※以下カッコ内は基準値
 ② GOT:72→34 (10~40)
 ③ GPT:31→27 (5~45)
 ④ ZTT:14.6→10.3 (2.0~12.0)
 ⑤ 中性脂肪:258→57 (35~149)
 この五つの重要項目の中で「基準値」を超えたのはγ―GTPだけで、あとはすべて基準値内に収まった。特に肝機能状態を示す項目はγ―GTPを除いてすべて正常値になった。γ―GTPの場合は最初が高すぎたためで、数値が4分の1になったことの意味は大きいとの医者の判断だった。
 禁煙したときは健康的にも生活面でも変化は全く感じなかったが、禁酒の効果はもはや多言を要しないことはご理解いただけたと思う。私はこのブログ記事をプリントして厚労省のしかるべき部署に送付するつもりだが、このブログが飲酒規制に何らかの貢献ができれば幸いである。少なくともたばこと同様アルコール飲料の容器に、たばこの箱と同様に危険性の告知を酒造業者に義務づけることを厚労省には望みたい。 
 なお蛇足かもしれないが、このブログで述べたのはアルコール飲料を飲む人の健康への影響だけで、たばこのように受動喫煙のようなケースまで含めて考えると、飲酒運転、飲酒による喧嘩、仕事への影響、経済的問題なども受動喫煙に相当するアルコール飲料のもたらす社会的害悪として考慮に入れなければ、たばこだけを目の敵にする論理的合理性がすでに破たんしていることを付け加えておく。