追憶の彼方。

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C.Gone With the Wind(カルロス・ゴーン風と共にさりぬ!)…(3)-2

2020年01月31日 | 国際政治
C.Gone With the Wind(カルロス・ゴーン風と共にさりぬ!)…(3)-2

元検察官の郷原弁護士がゴーンが海外逃亡を決意した理由を聞き出している。
それによると『有価証券報告書虚偽記載事件の審理は4月にスタートし、ゴーンだけの特別背任事件については、当初今年9月から審理に入る計画を立てられていたが、検察側の意向で、特別背任事件の審理開始は21年か22年になったと裁判官から告げられ、前会長は「検察の審理引き伸ばし作戦で、迅速な裁判を受けられず絶望した」。更に妻のキャロル容疑者は特別背任事件の証拠隠滅を図った疑いがあるとして、原則妻との接触禁止がゴーンの保釈条件となっていたが、裁判官からは、「少なくとも特別背任事件の審理が始まるまでは接触禁止が続く」と言われ、逃亡するしかないと決めた』と述べている。検察の旧態依然の裁判引き伸ばしによる人権無視、精神的拷問による人質司法に対する不信と、このままでは「獄中死」もあり得るとの絶望感が、危険をも顧みず違法な逃亡に走らせたのである。この話の真偽は裁判官或いは担当弁護士から聴取すれば簡単に明らかになることであり、ほぼ間違い無いと思われる。
国策捜査や一部の検察官の野望が暴走に繋がった小沢一郎氏の陸山会事件や堀江貴文氏のライブドア事件は飽く迄国内問題に過ぎなかったが、今回は世界的に有名なカリスマ経営者の事件であった為、特に日本の旧態依然たる人権無視の人質司法に世界中の耳目を集める国際案件となった。この儘放置しゴーンに言われ放しの状態では、国益を損なう・あらゆる言語で日本の正当性を発信せよという様な無責任な外野席の大きな声に押され法務省は1月22日法務省ホームページに14項目からなるQ&A形式の反論文書を発表した。しかしそのQ&A は殆ど反論になっておらず、ゴーンの攻勢の前に押され放しの状態になっている。
例えば、Q-3「日本の刑事司法は『人質司法』では無いですか」、A-3「日本の刑事司法制度は身柄拘束によって自白を強要するものになっておらず、人質司法との批判は当たりません。 (逮捕や拘束は独立した機関である裁判官が行うので恣意性が無いと強調しているが、裁判官の審査は形式的でほぼフリーパスという実態面は全く無視されており、言い逃れ・責任回避の姿勢が丸見えである。長期勾留という心理的拷問に耐えかねて検察がでっち上げた自白調書にサインしてしまったと告白する冤罪被疑者が多いことには頬被りである)」。このQ&A の第一印象は菅官房長官の木で鼻を括った様な記者会見と全く同様で相手に理解して貰おうとの視点が全く欠けている。ネットで公開された神尾尊礼弁護士のコメントでも制度面の話がほとんどで、実際の取調べの状況や否認した場合の不利益といった実態面への言及が殆ど無い。「人質司法の定義がこうだから違う」といった言葉遊び、制度の説明ではなく、実際にどう拘束されているのか、どの程度弁護人が関与できているのか、自白した場合と否認した場合とで取扱いがどのくらい違うのか、人権保護等の法律の理念に則ったものになっているのかを説明しなければ一旦火がついた内外の不信感を払拭することにはならないと説明している。実態面の説明をすれば人質司法を暴露することになる為、出来ないというのが正直な処であろう。
ゴーンの逃亡劇に関し弁護士ドットコム(株)が弁護士へアンケートを実施し、120人から得た結果が公表されている。これによるとゴーンが「1日8時間も取り調べを受け、弁護士も同席できなかった」などと主張していた「人質司法」については、『50.8%が「納得できる」、22.5%が「多少納得できる」と計7割以上が理解を示した。「あまり納得できない」は10.8%、「納得できない」は15.8%だった。』  
一方ゴーンが「日本から逃亡した理由」として、「非人道的な扱いを受け、私自身と家族を守るためには、選択肢がなかった」との趣旨の発言をしていることについては、『「納得できない」が42.5%で最多。「あまり納得できない」の16.7%と合わせると、6割近くが否定的だった。「多少納得できる」21.7%、「納得できる」19.2%だった。』
自由記入欄にはゴーンに対する非難として「保釈中に密出国した人間が何を言っても説得力を持ちにくい」、「有罪判決になる可能性が高いと判断したからこそ、金に物を言わせて逃亡したとしか評価できない」「人質司法は改善すべきだが、議論のすり替えに過ぎない。人質司法かどうかは関係がない」などの声があった。
一方司法に対しては「妻との接触を禁じるなど異常な条件は断じて付すべきではなかった。遺憾ながら世界の世論はゴーン氏の肩を持つであろう」「保釈制度の根底には無罪推定という、あまりにも大切な原則があるのに、無実でも否認すれば勾留が続く、世間からは『犯罪者なんだからしょうがない』と言われるのが現実だと日々嘆いている」「刑事弁護を多く扱う弁護士の1人として日本の刑事司法に対する絶望感は日常的に感じている」などの強い批判が目立った。又森雅子法務大臣が記者会見で「無罪を証明すべき」と発言し、後に訂正したことについても、「全世界に恥をさらしてしまった」「為政者の本音を物語っている」などのコメントがあった。
さらに、マスメディアの報道についても、「検察リークと、海外報道の恣意的な翻訳や意図的?な誤訳で一方的立場に都合のよい内容が報道されているのは、日本の世論形成に関して危惧される」、「日本のマスコミが、ゴーン批判で全てを終わらせようとしている論調であることに違和感と危機を感じる」などの指摘が出た。
この両極端に別れたアンケート結果から読み取れる事はヤメ検の多くが弁護士登録をして居り、彼等の中には未だに自分達が所属していた検察という組織、或いは自分達個人の検察官が行ってきた取調べ等に対し反省の色が全く無い弁護士が多数居るという実態である。ゴーンを弁護することは自分の役人人生を全否定することに繋がると考えるのはやむを得ないことかも知れないし、未だに検察組織と繋がりのあるヤメ検も居るだろうことは想像に難くない。
共同通信の報道によると、ゴーン被告人は郷原信郎弁護士(元検事)に対し、解雇した最初の「弁護人」から『早く(拘置所から)出たければ(罪状を)認めるしかない。今は自白して、裁判で「早く出たかったから自白した」と言って、ひっくり返せばいい』などとアドバイスを受けていたが、自分はそんなことは信じないし「やってないことは自白しない」と言った。この弁護人はルノーから紹介サれた大鶴基成元次席検事と考えられるが、彼のアドバイスは「驚きだらけだった」と語ったという。
身柄解放という強い誘惑に負けて、不本意な自白という<毒薬>に手を出さず大鶴弁護士を解雇したのはひとまず冤罪の泥沼に嵌まり込む危険を回避したという意味で正解だったとコメントする弁護士が多い。
かって村木厚子厚労省局長を犯人に仕立て上げる為、検察ストーリーを作りそれに合うよう「関係者の証言調書の捏造やフロッピーデイスクの日付の改竄」まで手を染めた有名な冤罪事件では大阪地検特捜トップが逮捕される不祥事にまで発展したが、当時弘中弁護士の強いサポートで村木氏が164日の長期勾留にもめげず徹底して「ニュアンスの変えられた自白調書」へのサインを拒否し、裁判で検察主張の矛盾点を突いて逮捕から454日目に無罪判決を勝ち取っている。「5年前も前の出来事で誰もが自分の記憶に自信がない中、脅しや嘘を巧みに使い検察に都合のいい調書が作られていったのだ。」「取調室ではアマチュアのボクサーがプロボクサーと殴り合っているようなもの」と村木厚子氏の有名な話が残されている。
兎に角、自白をした後で、これを「ひっくり返す」ことなど極めて難しい。捜査段階で自白していた被告人が、刑事裁判で否認すると、検察官は、被告人が捜査段階の自白調書を証拠として請求してくる。弁護人としては、この自白調書が「任意性がなかった」自白であるとして、この自白調書を証拠として採用することに反対して争わなければならなくなるが、捜査官に強制されたという様なことを立証するにはこっそり隠れて録音でもしていなければ先ず不可能で、一種悪魔の証明に近い。又自白調書にサインする際には日本では取り調べに弁護士立会いが認められていない為、プロの検事が何らかの罠を仕掛けていても素人の被告人がこれを見破ることは先ず不可能である。裁判ではその微妙な点がポイントとなって争われることが多々あると言われている。(役人が責任回避のため微妙な言い回しをする技術に長けて居ることはよく知られている。)
通常裁判官は「公判での否認」よりも「捜査段階の自白」の方を信用性があると認めるケースが殆どだと言われて居り裁判で自白を覆すことは不可能に近いのである。
保釈中にゴーンと面談した外国人初の読売新聞記者となり現在米国の調査報道記者として活躍するJ.エーデルスタイン氏は 『ゴーンから自分が無罪を勝ち取る可能性を聞かれた時、皆無に近い」と答え日本の検察がメンツを守る為「勝利至上主義」、「検事は正義よりも勝ち負けが重要。不利な証拠はあっても見ない」と話すと、ゴーン被告は少し顔色が白くなり、恐れていた事に確信を得たかのような反応をした。彼はゴーンに日本の冤罪事件の事例を話し又元検事が冤罪を作り出した懺悔を書いた「検事失格」という本を手渡した』と伝えている。
研究熱心なゴーンが日本の司法制度に不信感持つ材料は揃っていたのである。
大鶴弁護士が自白を勧めたのは検察を最もよく知る人間として正面から争ってもゴーンに殆ど勝ち目がないと感じていたのと自白しなければ保釈は難しいと睨んでいたからだろうと推測される

事件当日の深夜、森法相と共に東京地検の斎藤隆博次席検事がゴーンが主張する国策捜査や人質司法に対する反論を行ったが、この検事こそ2009年の小沢冤罪事件担当検事の生き残りであり、さらにゴーンに解雇された大鶴基成弁護士は当時の次席検事として冤罪事件を主導した主犯格だったと言われている。何という皮肉なことか、10年前に日本の進路を捻じ曲げた小沢冤罪事件の責任者が再び蘇り、ゴーン事件のマッチとポンプの役割を演じて居たのである。
この東京地検特捜部の冤罪事件は日本の大改革と言う国民の大きな期待を背負って立ち上がった小沢氏を中心とする民主党政権を瓦解させたと言う点で上述の村木厚子氏の冤罪事件より遥かに社会的責任が大きかったが、検察上層部まで関わっていた為か誰が考えても納得出来ない様な屁理屈をつけ、逮捕者も出さずに有耶無耶の内に収束した。当時法務大臣は指揮権発動をして処分をやり直させようとしたが、当時の民主党の無能な野田首相の判断で法務大臣を罷免してしまった為、全てが闇に葬られる結果となった。…(注)
この無責任な野田の行為によって日本の民主主義への改革が完全に後戻りし、小沢冤罪事件の中心的役割を演じた斎藤隆博次席検事は、その御蔭で今だに検察中枢で生き残る事が出来、日本の司法を代表する場に臆面もなく登場してくるのである。斎藤隆博次席検事は法務大臣と共に会見の場でゴーンが主張する人質司法に対し、「日本では勾留は捜査機関から独立した裁判所による審査を経て行われ、証拠隠滅や逃亡のおそれなどがある場合に限って認められる。又保釈も、裁判所が判断します。こういう日本の刑事司法に対し、人質司法だとか人権が保障されていないといった批判は当たらない。」と反論している。しかし自分も含め検察官が行ってきた取り調べ手法を無視しこんな綺麗事をよくも言えるものだとあきれる他は無い。
実態は検察ストーリーに沿った自白をしない限り証拠隠滅、逃亡の恐れ有りとして勾留を請求すれば殆どフリーパスで認められるのが実情で「長期勾留、人質司法」非難の根拠になっているのである。この様な実態とかけ離れた杓子定規な釈明を繰り返すことは却って世界の不信感を増幅し逆効果になることが分からないのだろうか。
『「不合理で事実に反している」「自白を強要していないことは明白」などと幾ら強調しても小沢事件への反省・総括が無いままの人間の発言が信用できるのかと思われてしまうのは、ある意味仕方がない。逃亡者ゴーン被告をかばうつもりはないが、過去の強引な捜査手法をきちんと反省しない特捜部もまた問題なのだ。』という元検事の落合洋司弁護士の発言が多くの共感を得る的を射た感想だろう。
逃亡を許した途端、急に慌ててキャロル夫人を国際手配したことで、全世界に「日本の捜査機関は好きな時に好きな罪状をつくれるんだ」と印象付けたことは間違いない。
ゴーンは「日本にいる全外国人に『気をつけろ』と警告すること──それこそが私の責任だ」と述べているが、この発言こそ、「日本で働く外国人に対し日本の居住環境を含め日本全体のイメージダウンに繋がる恐れがある」と言う点で非常に危険だと言える。
更に30日には斎藤次席検事が入管法違反容疑でゴーンの逮捕状を取ったと発表し、その理由として「ゴーンの主張によって日本の司法制度がおかしいと(世界に)認知され逃走が正しいとの誤解を生じさせない必要がある」と述べている。しかしゴーンの逃亡劇は「日本の人質司法の下では已むを得ない点もある」という程度の同情の声があっても、法的に正しいなどと考える者は殆ど居ないであろう。しかもゴーンの逃亡の責任は検察の反対を押し切って保釈した裁判所にあるような言動を繰り返し、最近では逃走を手助けした米国籍の3人の男性の逮捕状もとったが彼等はゴーンの弁護人だった弘中弁護士事務所でゴーンと数回に亘り面談を繰り返したと強調、弁護人が逃亡を手助けをしたと言わんばかりの印象操作を行っている。御用メデイアを使ったリーク情報による印象操作は未だに重要な捜査手法の一つであり彼等の一種性癖に近い物になっているかの様である。尚逃亡を許したの出入国管理の手抜かりと検察の監視の甘さにあり、明らかに検察の責任であって保釈を認めた裁判所や弘中弁護士には全く関係のない話で、他人には厳しいが自分達には甘く保身に汲々とする検察官の本質をよく表している。
今後書籍や映画を通じてゴーンの攻撃がエスカレートすることは間違いない。今や情報は瞬時に世界を駆け巡る。発信力に疑問の残る法務大臣や旧態依然たる法務官僚が実態とかけ離れた綺麗事を並べても事態の改善どころか逆に世界の不信を増幅させるだけではなかろうか。
日本の検察は自白(供述証拠)を重視し、それを真相解明のモデルにしてきた。取り調べの場に弁護人の立ち合いを認めた場合、説得と称して脅迫する等の非人道的な取り調べや自白調書へのサインも弁護士の事前チェックが入り制限され、思い通りの取り調べが進められなくなる。 法務・検察は従来型の「検察ストーリーに沿った自白の強要」や「風を吹かす(リーク)捜査手法」は最早世界に通用しなくなって居り、一刻も早く世界標準に近づくことが世界の信頼を得、国益を守ることになると知るべきだ。今の先進国の人権を考慮した刑事司法の考え方は、推定無罪の前提に立ち、取り調べは言い分を聞くための場であり、有罪の証拠を得るための手続きではないことを知るべきだろう。
ゴーンの金融商品取引法違反事件で、検察は当時の西川広人社長をその事実を知らなかったと考えられないような理由で訴追せず、検察審査会も「不起訴相当」と議決したこともあって、世界では徐々にこの事件は日産の日本人経営陣と経産省と検察とが結託して日産を救ったカリスマ経営者を日産自動車から追放し、さらに犯罪者として葬ろうとした「異常な出来事」であるとの見方が広まりつつあるようだ。
ゴーンの強欲と犯罪とは別次元の話、切り分けて論じる必要があることを肝に命じて置くべきだろう。
(注)この冤罪事件についてはブログ2016-11-16付け「日本の民主主義「9」マスメデイアと特捜検察」で詳述している。


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