ということで、昨夜は後楽園ホールにて観戦してきました。
チケットだけは持っていて、でも下手したら無観客試合になるのでは、などと直前まで不安で、行き帰りの予定も立てられない状況でしたが、結果として20時前終了になり、新幹線の終電に乗って、日帰りすることが出来ました。
とりあえず、簡単にメインの感想。
井上拓真は、目に見えて速いわけではない、しかし安定したリズムの足捌きを継続し、栗原慶太のパンチの大半に空を切らせ続けました。
右から左を軽くリターンしつつ、ワンツーをインサイドに通し、時に鋭い右のダイレクトを際どく狙う。
もしまともに入っていたら、単発の攻撃ではありながら、相手に相当ダメージを与え、ことによれば物凄いノックアウトを生みそうなパンチ。
結果、そうはならず、かすめたり浅かったり、で終わりましたが。
栗原慶太は、相対的に井上拓真と向かい合うとかなり大柄に見え、早々に右クロス被せで脅かす。
拓真が左フックをリターンし、足で捌いていた初回終盤、バッティングが起こり、栗原の方が左瞼を切る。
これが悪いことに、幅がけっこうあり、その後の出血の様子を見ると、そこそこ深さもあったのか。
両者ともに、どっちが悪いとか、それこそ悪気があってとかいうものではないアクシデントに見え、せっかくの良いカードなのに、こういうことが起こってしまったか...と、残念に思いました。
この傷が試合展開に全く影響しなかった、とは思えません。
しかし、その後両者が見せた闘いは、かなりの部分まで「残念」の色を払拭するものがあったのも確かでした。
2回、拓真がワンツー通し、栗原も出るが、ロープを背負った拓真がそこから外して左フック。
3回、栗原がワンツーからボディ二発決めるも、その後は拓真のカウンターが冴える。
ちなみにこの回ドクターチェック入る。出血かなりのもの。しかし続行。
4回、拓真は(後から思えば)少し抑えた感じ。負傷絡みの裁定を踏まえたペースダウン、だったのか...。
5回、試合成立の回を迎えて、目に見えて拓真のギアが上がった印象。右ダイレクト、左フック。
栗原が一度、少し足取りを乱す。
しかし栗原踏ん張って右クロス。この日随一の好打だったか。拓真が再び捌いて当てる流れに。
6回、出血止まぬ栗原、この回は攻めに出ず、足使って手数減らす。
流れを変えて、引き寄せて打つ狙いか。或いは一度、打たれず、傷を開かずに3分終えたかったのか。
しかし拓真の速いパンチを当てられ、やはり出血。
7回もこの流れを引きずった感じ。
8回、両者、要所で左右のアッパーが目を引くが、それ以外ペースは変わらず拓真。
ここまで「いつ止めるんやろう、まさか最後までやらせるつもりか」と首を捻るばかりだった栗原の出血。
9回、やっと二度目のドクターチェック、試合終了。負傷判定は大差で拓真でした。
井上拓真の「対応」の巧さ、安定した足捌きは、従来の方向性を変えず、それを磨いていけばいい、と思っていたこちらにも、納得感のあるものでした。
ウーバーリ戦を経て、妙に攻撃的になったりしたら、今後却って不安やなあ、と思い、そこを見ていましたが、余計な心配でした。
しかし、その上で、やはりセーフティーな判断が試合の大半を占める攻防は、相手が栗原のような強敵でない限り、スリルに欠けるものになるのも事実で、どうしてもつきまとう兄との比較を抜きにしても、安定感にもうひとつ、プラスアルファが欲しい、とも思います。
時に見せる右ダイレクト狙いの精度を上げる、または単発好打のあと、手打ちでいいから速いパンチを連打する「上乗せ」を試みるなど、ベースを崩さない範囲で、出来ることはまだ、残っている。
そういう意味では、試合後の井上尚弥が発したという「パーフェクトゲーム」という言葉には、畏れ多いですが(笑)異を唱えておきたい、と思います。
栗原慶太は、不運な負傷にもめげず、文字通りの「奮戦」でした。
拓真の足捌きとカウンターに苦しみ、ミスブローも多発しましたが、少し打たれただけで、毎回のように左目周辺が真っ赤に染まる状況で、当然のこと、距離感の狂いもあったのでしょう。
それでも時に見せた強打、好打は、やはり日本バンタム級上位の中でも抜きん出た迫力を感じました。
そして、逆境にもめげない、彼の果敢な闘いあらばこそ、この試合は、日本バンタム級、事実上の頂上決戦、と言うに相応しいグレードを維持していました。
大一番に敗れて、簡単に言えることではないのは承知の上で、でも、この試合で終わってなど欲しくない、と願います。
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さて、メイン終了20時という「設定」で行われたこの興行、第一試合開始の時間が早められました。
しかしそれが、18時→17時45分という変更と知って、それで大丈夫なのか、と首を捻っておりました。
明日の帝拳興行、長濱、豊嶋戦は第一試合16時となっていて、まあ土曜日だから出来ることなのかもしれませんが、それと比べると...という。
結果、4回戦がひとつ中止になり、全4試合でしたが、メインが9回で打ち切られた時間は、19時55分頃だったか。
なんとも微妙なところで、もしフルラウンド闘っていたら、当然20時を過ぎていました。
アンダーも、セミの8回戦は判定だったものの、6回戦二つはKOで終わっており、それでこの時間。
しかも各試合後、TV向け?のインタビューも行われていて、メイン開始は19時15分を過ぎてました。
最初から、判定まで行ったら時間オーバーだったわけです。
この辺、興行者と管理運営者の、相反する意志の相克(そんなたいそうな)が見えたようが気がして、何ともかとも...というところでした。
興行者としては、最高値3万円という設定の高額チケットを買って(=引き受けて?)くれた観客の都合に、出来るだけ合わせたいのでしょう。
しかし、そこで起こった、時間ぎりぎりで負傷判定による打ち切り、というのも、これまた、見ていて何とも...もちろん、全て起こった事象の通りに裁定されただけ、と見るべきなんでしょうが。
負傷判定にするなら、もっと早くにしていて良かったでしょうし、そもそも負傷ドローになっていても仕方ない、とも見えました。
まあこれは、会場で見ていた印象に過ぎないですが。
ある意味、こういう騒動のさなかでないと見られないものを見て、改めて様々に思うところのあった興行でした。
アンダーの感想などは、また後日、簡単に、というところで、ひとまず。
※写真提供いただきましたのでご紹介。
「ミラーレス機とタブレットと」管理人さんです。
いつもありがとうございます。
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ということで、一曲。
David Bowie “Tryin' To Get To Heaven” です。
ご指摘感謝です。とうとうボケたか...(汗)。
早速訂正しました。ありがとうございました。
すいません、上で栗原の名前の指摘されてる方って、
私とは別の方なんですが、
世の中には変わった偶然があるものですなあ(難笑
ていうか、さうぽんさん見に行ったんですか??
てかチケってどこで入手できたんで??
こっちは大橋サイトに、サイト販売のみで1週間前に発売予定って書いてるんで、
おとなしく待ってたのに、
・・・その1週間前に緊急事態宣言で、
その日に、本日以降は一切チケの入手はできません
って表示が出て、
別にその日もサイト発売なんてナシと、
こんなの入手のしようがねーじゃんってブンむくれてましたが(悲悶
・・・・で例によって、
地球上の全人類でこの超好カードがライブで見れたのは、
減らしまくった客席の数百人のみで、
関東民ですら2日後のド深夜録画、
それ以外の地域の方は、永遠に見れないか違法アップロードでも待つしかないと、
・・・・このネットとで情報が世界をつなぐ時代に、
あの天下の井上の弟の大勝負ですらこんな扱いと、
果たしてボク界はこういうことでいいのでしょうか(静悶
あ、
遅ればせながら、
明けましておめでとうございます☆(謹賀
選手の名前を誤記したことを、指摘していただいたのには感謝していますが、混乱しますので、名前に関しては別のものにしていただきたいと思います。
>宇弓さん
なんと、ややこしいことですね。こちらもよくわかりませず、混乱しました。
今回の観戦、チケット入手については、あまり具体的なことは言えませんが...このカード、確か決まったと報じられたのが昨年の9月くらいでしたか、その時点で早々に、さる筋を通じてお願いしていました。ただ、チケットの枚数、総枠もなかなか決まらず(決められず)今回は最悪、入手出来ない可能性があると言われていたくらいで、興行側の対応も難しかったのでしょう。ただ、お話の限りだと、確かに、如何なものかと思いますね。今は何しろ、誰にとっても前例のない事態であるのは事実でしょうが。
試合の配信、放送については、もうお互い、嘆きの言葉も底を突いた感じですが...本当にどうにかしようという気もない、彼らの生きる安穏は、新型コロナでも侵せないのかもしれませんね。
やっぱり中谷潤の世界戦の時と同じく、
こんな世間様の状況では、
もはや一週間前とかじゃ、一般販売のルートに乗せる時間的余裕とかもなく、
事前に関係者と言うか、コネのある人に手売りで何枚か流すくらいのことしかできなかったんでしょうかね(憂悶
しかし・・・・
ボク業界の皆さんは、昨年末のAサインの成功から学ぶ気はないんでしょうか。
ライブで無料でネット配信やってるのに、クラフアンで4千万近く集めてるわけで、
プロモとかブランディングとかうまくやれば、
もう関東ローカルド深夜中継の放映権料の、何倍もの収益を上げてると。
伊藤と三代でAサインがあれだけやれるんだから、
こんなの今を時めく井上の弟が大勝負やるんだから、
井上が率先して、拓真と栗原選手のためにクラフアンお願いします!!協力していただければネットでライブ配信も可能です!!
って呼びかければ、
真面目に億単位のお金が集まるんじゃないのかとか(¥笑
・・・・だからもういい加減に、
昭和の時代のように、ただテレビさまににおんぶにだっこで、どんどん少なくなっても、
もらえる金だけもらってればそれでいいやとか、
そんなことでは、とてもこの情報化社会で生き残れないんじゃないないのかなあとか、
世界戦は従来通りにテレビにお任せするとしても、
国内マッチはここまでテレビ側もやる気ないんだから、
そっちはこっちでネットとクラフアンでやるんで、
権利を分けてくれませんか??
とか、
いい加減に大橋ジムとか人材も余力もあるところが、
率先してそういう新たな方向性を開拓すべきなんじゃないのかとか、
・・・・まあとりあえずは、明日のド深夜まで唇を噛んで待ちますが(口惜
YouTubeによる配信の是非はともかく、クラウドファンディング、というものには、悪くすると色々問題が生じるのでは、という懸念も持ちます。この辺は専門知識があるでなし、漠然と思うことだけですが。
しかし、大手ほどいまだにTVさんとの関係のみで乗り切ろうとしている風に見え、そこはもう...世界的に見ても、従来の有料テレビやPPVではない、配信網が登場しているし、他の人気スポーツもいずれ、Netflixを筆頭に、様々な配信業者が参入しようとしています。Amazonプライムビデオとて同様かもしれません。DAZNはすでにご存じのとおりですし。
しかるに今や、経済規模も縮小の一途を辿る国内のTV局に、小さく取り扱われるだけの現状がいつまでも続くと思っている...わけではないのでしょうが、仰る通りA-Signの成功例、昨年末の「大」成功は特別なものだったとしても、着実に新しい道を切り拓いているのを見て、新たな動きがあってほしいと思います。同感です。
しかし、世代で区切って良いのかどうか迷いますが、もう大橋の世代では「古い」のかも知れませんね。石井一太郎の世代でやっと、そういう動きが出来るのだろう、と。この独断が誤りであってほしい、と思いつつ、半ば諦めてもいます。
栗原のカットは不運でしたね。あれがない状態で見たかったですが、言っても仕方ないですね。
拓真はすごく良かったと思います。自分から手を出す、動く、そしてしっかり踏み込んで打つ、これらが試合全体を通して出来ていた。拓真がここ数戦でポイントを取りきれなかったのは、手数の少なさ、相手に動かされている印象、パンチの軽さ等でしたが、それらが全て改善されていた。大柄の栗原相手にもパンチが軽く見えませんでした。拓真は強打を放つとパンチの精度が落ちる、乱れる印象があったのですが、それもほとんどなく。ここ数戦で最も積極性が見られ、この日の拓真ならチャンスさえあれば倒しに行ったのではと思えました。
修正すべき点を修正し、かつ久しぶりの試合でそれをきっちりやってのけた、という意味では「パーフェクト」という評になるかもしれません。ただ、この階級のトップ選手に勝ちきることを考えるとまだ不足あり、おっしゃる通り「完全」ではないですね。栗原は大柄の強打者ですが、圧はそこまでではないですし、動きも拓真の対応出来る範囲内。例えばウバーリともう一度やったらと考えると、前回のような大差にはならない、競えると思いますが、あと一押し欲しいですね。でも見事な再起戦だったと思います。
拓真選手は足を使って機動戦を行いつつも、打ち合う場面、クランチで凌ぐ場面もしっかりと対応し、総じて良かったと思いました。
拓真選手、やはり非力に見えますし、上を目指すならばもう一枚、技か手数か精度が、何かが欲しいですね。
また、栗原選手との比較になりますが、体格的には階級下げても良いかも、とも思いました。
せっかくの好カードが、ああいう形で、仮定の話を語る対象になってしまったことは残念でした。拓真の技巧派としての練度、完成度は間違いなく高まっていて、それはしかと見ましたが。世界どうというのは、TV局や陣営は即、というつもりで、栗原に勝ったのだから大手を振って、というところなのでしょう。
拓真が今後、目指す方向性は確かに井岡でしょうね。破壊力がない以上、質の向上、維持を求め続けることになるでしょう。
>海の猫さん
返す返すも残念なアクシデントでしたね。試合終了時間と裁定の「リンク」など、「余計」が生じてしまったという点でも。
拓真の出来についてはほぼ同感です。ただ、あの秀でた対応「だけ」では、世界と言わず栗原相手でもチャンスは来ない、とも思います。チャンスはやはり「作る」ものだ、という部分が確かにあり、外す、返す、または合わせる、の単発では、その先はない、と。
自身のベースを乱さない範囲で何かを上乗せ出来ない限り、巧さ勝ち以外の道がないのが現状ですね。仰る通り、この上の相手では、と思うところです。この相手に、国内最強の証明、ということに関して言えば、確かにほぼ満点なのですが。
>neoさん
両選手ともに好調で、栗原の強打は、やはり目を引くものがありましたし、拓真の技巧と安定感も流石のものでした。拓真は上への転級の話も一時あったとか聞いたので、コンディションに乱れがあると危ないかも、とちょっと思っていましたが、無用の心配でしたね。体格面では、115はきつく、むしろ上げる方の検討があった、ということらしいです。