さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

明暗くっきりのメダリスト対決 清水聡、ロベイシー・ラミレスに完敗

2023-07-29 00:02:03 | 関東ボクシング


25日の感想、最後です。
セミのメダリスト対決、ロベイシー・ラミレスvs清水聡戦は、大方の予想を覆すことのない内容と結果を残しました。

この日は井上尚弥と清水聡が世界タイトルマッチの青コーナーに立ち、対するチャンピオンがPBCとトップランクが抱える軽量級タレント、という、まさに画期的な興行だったわけですが、そのプレミアム感は、ロベイシー・ラミレスがリングに上がった瞬間から伝わってきました。
正直、フルトンvs井上戦だけでもなかなか...なはずなのに、延期のおかげ?で、アメリカではあり得ない揃い踏みが実現してしまったわけです。


しかし、試合自体は厳しいものでした。
サウスポー対決、長身の清水聡が、右リードジャブ、左ストレートを突き立てようとするが、ラミレスは高いガードを維持しつつ、時に小さい動作で、時に膝から身体全体を動かし、自在に外しては打ちやすい位置に立ち、力まずに、しかし正確なパンチを当ててくる。

長身の清水相手に、ボディを打つのかと見えた左が、途中で軌道を変えて顔に届く「変化球アッパー」が早々に出る。
清水がガードを前で絞ると、左右から頭部を軽く叩き、かと思ったらまた真ん中へ。
ポンポン、とリズムで打っているかと思ったら、清水のジャブを速い動作で躱して左クロス。
左アッパーと右フックのパターンでヒットを取り、当てて離れるのみならず、懐入ってボディ攻撃の応酬でも打ち勝つ。

2回が終わる頃には、ヒットの精度、数で圧倒的に差がついている。
3回、清水の左が単発ながらヒットしたが、すぐリターンが来て、相殺という以上のダメージを受けてしまう。

4回、清水前に出て打っていくが、ラミレスはこの辺りになると、動いて外す必要を感じていないのか、ガードで受けて対応。
すると清水のボディブローが入る。普通なら「舐めすぎ」となるが、ラミレスはこのヒットをきっかけに逆襲。
左右フックにアッパーと、無理なく打てるパンチを連ね、清水をロープに追い立てる。
なんとかしのいだ清水だが、ラミレスは清水のパンチを外し、右リード一発で食い止めてしまう場面も。






ラミレスは好きな位置に立ち、打ちたいパンチを打ちたいように打っている。
一発ずつの威力はさほどでもなく、また力を入れて打つ回数は少ないが、テンポ良く、上下左右どこからでもパンチを通し、清水の防御をほとんど意に介していないような風情。

対する清水は、序盤から顔が赤くなり、両まぶたともに腫れている。
見た目の印象に反して、頑健な清水が、足を踏み換えねば踏ん張れない場面も。

4回が終わった時点で、もう棄権すべきではないのか、と思ったほどでした。
何しろヒットの数が違い、精度が違い、通り道の数が全然違う。防御の比較をしても、片方はもう、無理に外すまでもない、という構えで、片や「空いたとこ」を好きに叩かれている。
軽めのパンチをテンポ良く打たれ続けていて、これは強打されるよりもある意味悪いというか、ダメージの蓄積という意味では、こちらの方が危ない場合があるのでは、と。

しかし、心配も長くは続きませんでした。清水のダメージは限界を超えていたのでしょう。5回、アッパーを組み込んだ連打で清水ダウン。
ラミレスの追撃に反撃の手が出せず、レフェリーがストップしました。


五輪連覇のロベイシー・ラミレスと、日本では貴重な五輪銅メダリスト清水聡の対戦でしたが、内容は大きな差がつくものになりました。
まだ若いラミレスに対し、プロ入り時点で30歳でありながら、勝負の試合まで長い時間を要し、しかも世界挑戦するに相応しいキャリアを築くことが出来ないまま現在に至る、清水聡の現状が、そのまま内容と結果に反映されていた。
きついようですが、そういう試合に見えました。

清水聡の五輪銅メダル獲得は、ボクサーとしての偉大を証明するものですが、その力を、良さを、プロのリングで上手く生かせぬまま、プロボクサーとしての活動を終えてしまった。
残念ですが、これも仕方ないことなのかもしれません。



ロベイシー・ラミレスについては、将来的にトップランク社が井上尚弥との対戦を視野に入れているのは明らかです。
ボブ・アラムもそのようなコメントを出していたようですし。

ただ、その技巧は素晴らしいものですが、真のフェザー級トップクラスの強豪と闘って、どのような内容と結果を残せるものなのかは、まだ未知数です。
大橋会長がこの辺りも睨んでか、慎重に、スーパーバンタムにしばらく留まる方針を表明してもいて、将来的にフェザー級で井上と相まみえる高みに居続けられるものかどうか。
もちろん、どんなボクサーにも当てはまることですが、リングの上では、己の力以外に頼るものなく、誰も何も保証をしてはくれませんから。


しかし、日本語でTwitterを更新していたり、トランクスに「電車」とロゴが入っていたり(ニックネームが「エル・トレイン」というそうで)、ちょっと日本向けの営業というか、意識している部分があって、なかなか面白い人やなあ、と思わせます。
誰か「超特急」「快速」くらいに意訳してあげたらよかったのに、と思うところですが。
最近のキューバ人ボクサーには、ちょっとがっかりすることも多いですが、彼にはホエル・カサマヨールのような、プロの世界でも納得感のある闘いを見せられるボクサーになってほしいものですね。



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さて、Lemino配信についてですが、アーカイブをチェックしたら、話題になっていたとおり、セミとメインは照明の加減か、カメラの角度によっては画面が青みがかって見えて、ちょっと見にくかったですね。
前回バトラー戦のときは、会場で見ているとリングの上が妙に黄色くなっていて、でも画面を見ると綺麗に見える、という具合でしたが、今回は会場で見ていると普通、画面で見ると...という、逆の現象が起こりました。

今回は、前回のような大規模なトラブルは起こらず(それでも、方々で切れた、止まった、という事態はあったようですが)、まあ何とか収めたのかと思ったら、またこういう感じか、と...詳しいことは知りませんが、もしTV局が中継してて、こんなことになったら、担当者は何らかの責を負わされるんじゃないでしょうか?
ネットだから、または無料だから仕方ない?という基準でやっているわけでもないでしょうが、どうも締まらないなあ、と思うばかりです。

当然、将来的にはもっと収益を上げるべく、当然月額視聴料の範囲内に入れたり、それこそPPV別料金を、という構想もしていることでしょうが、こんなことでは難しいんじゃないですかね。
批判しよう、というところに気持ちが届かない、というか、本当に心配になるくらいです。大丈夫かいな、と。


しかし、青みがかったところ以外の映像は、アーカイブで見た限り安定していました。
当日夜にはアーカイブも視聴出来るようになっていて、この辺は改善されていました。
あと、第一試合から3試合、ライブ配信に入らなかった試合を、ハイライトにして流したのも良かったと思います。
忙しく、手間もかかることですが、良い仕事でした。ちゃんと良いところもありました、ということで。



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3 コメント

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Unknown (アラフォーファン)
2023-07-29 08:14:15
最初から体格、パンチ力、体力が拠り所のように陣営も述べてたフシあり、私もラミレスがデビュー戦負けたあたり、そこの不安要素はあるかなと思いましたが…残念ながら清水さんの状態がそのレベルになかったですね。フィジカル面、パンチ力も発揮できず、傍目にはむしろそこもラミレスが上回って見えました。
足と上体の動き歴然でしたね。身体固くて正面からしか入れない清水さんと膝、上体をリズム良く使いタテヨコ前後を使い3次元で戦えるラミレス。
パンチ強振しようにも相手に外され、またはその前に打たれて力入らない、せめてバックステップなり身体振るなりできれば良かったですがディフェンス面はガードだけ。厳しいですが記念挑戦の部類でした。
ウッドやシューツァンなどと二、三年前に戦えていれば可能性あったでしょうが、こればかりは仕方ないですね。
返信する
Unknown (月庵)
2023-07-29 08:32:41
この試合も、井上とは違う意味で1Rの時点で勝負あり、と見なさざるを得ないものでした。後半勝負など持ち込む余地もなく、中盤にはダメージが限界を迎えて倒されるだろうと。解説陣も、特に村田もそれはわかっていたと思うのですが、だからこそなのか、相当に苦しい『応援』になってしまった印象でした。村田に関しては『盟友』の勝っても負けても恐らくラストファイトに際して冷静さを求めるな、という話ですが。清水は戦後、もう肉体的に限界だった旨語っていましたが、私としては得心のいく話でした。プロ入りしてから7年でたった10戦ちょっとしか出来なかったのは身体的な問題もあるのだろうと思っていたので。結論としてはプロ入りがあまりにも遅すぎたとしか言えませんが、折しもその時は『歴史の男』がのさばっていた時期。難しい問題が色々とあったことでしょう。同五輪金メダリストのルーク・キャンベルも王者になることは出来なかった。トニー・ヨカなど恐らく世界挑戦も出来ずにリングを去ることになるでしょう。プロアマの性質の違いとプロの難しさを改めて感じずにはいられません。

ラミレス、ボブ・アラムから教唆を受けていたか日本向けに様々な営業をして友好的なアピールをしていましたが、肝心の日本側は様々な『無礼』を働いていたらしいことを試合の後に知りました。試合の時点で国歌斉唱がないことと勝利者インタビューが無視されていたことに異様を感じていましたが、キューバ政府からの様々な脅迫に抵抗しなかったのだとか。キューバ政府からしてみれば金メダリストでありながら亡命し敵国アメリカでキャリアを積むラミレスは国家の恥、キューバ人にあらずという扱いなのでしょうが、それを日本側が汲んでやる必要は一切ないわけで、いかにも日本的な事なかれ主義でラミレスの尊厳に傷をつけたことで、恥ずかしげもなく無法な要求を突きつけたキューバ政府共々恥を晒したと思います。もし井上とラミレスの対戦が実現したとして、その時も国旗掲揚なし・国歌斉唱なし、で通すつもりなのでしょうか? 選手は国際的な名声を博するに値する存在でも、それを擁する側は……という繰り言をこういう形で発することになろうとは思いもよりませんでした。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2023-07-31 11:36:56
>アラフォーファンさん

もし、清水がデビュー時のコンディションで、プロとしての研鑽を積み、もう少し中身のある実績をもって世界に挑んでいたら、仰るようなラミレスの不安要因を突くことは出来たかもしれません。しかし、そういうことを期待出来る状態ではなかった、ということですね。多彩に動けなくとも、相手を捉えて止めることでそれを補う闘い方が、清水の求めるものだったはずなのですが。


>月庵さん

アーカイブで見ましたが、確かに放送席は偉いことになっていましたね。昭和の世界戦も下駄履いて逃げ出す勢いで(笑)。村田は特に、解説を求められる立場ではなかったでしょう。周りもそれに引きずられた感じでした。
プロ入りが遅れたのは、本人ではなく周辺にも事情あり、だったんでしょうね。確かに五輪メダリスト、必ずプロの世界タイトルホルダーならず、ですね。アンディ・クルスなんてどうなるんだろうか、と心配でもあります。アメリカのボクサーは、アマは通過点と割り切っているので、キーショーン・デービスなんて、悪いとこも含めてすっかりプロの顔ですが(笑)。
キューバ国歌の件、私は情報が無いんですが、本人は国歌斉唱、演奏を望んでいたのでしょうね。フロリダに多い亡命キューバ人のコミュニティーは、政府、体制には批判的でも、愛国心は別、国歌もその対象、という感じなのでしょうから。キューバ政府の要請あって、というのも、事実だとしたら...しかし、このような大きな枠の話に、日本のボクシングプロモーション程度が、どう対することも出来ないだろうなあ、という意味では、いかにもありそうな話ですね。おそらくですが「そんな話を持ってこないでくれ」「手に余る」という感じで、それ以上は何も考えが無いんだと思いますよ。今後、井上との対戦が日本であったとて、その辺は何も変わらないと思います。
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