さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

防衛ラインから鋭い急襲 激戦制したのは和氣慎吾、久我勇作を最終回ストップ

2018-07-28 18:28:36 | 関東ボクシング



ということで昨夜は後楽園ホールにて観戦してきました(^^)←冒頭から笑顔


これぞ日本の頂点を争奪する試合、組まれた時点で両者(と陣営)に拍手、
という類いのカードは、時折組まれるものですが、この試合こそその最たるものでした。

石本康隆を再戦でTKOし日本王者になり、三度目の防衛戦となる久我勇作。
対するはOPBF5度防衛の長身サウスポー、和氣慎吾。
国内に有力選手ひしめく122ポンド級において、ついに実現した「直接対決」のひとつでした。

試合前の予想としては、両者ともに未完成な部分もあるので断じにくいところもありました。
ただ、過去の試合を見る限りでは、リーチに勝る和氣だが、相手を突き放す右リード、
距離を取るフットワークに厳しさが足りない。入ってくる相手に「合わせ」をしたいがために、
どうしても相手を引き込む傾向がある。
距離を詰めて強打したい久我が入ってきたとき、そこで何が起きるか、どちらが勝るか。
結局はそのあたりが、今回の試合の勝敗を分けるのだろう、と見ていました。


初回、久我が出る。距離詰めて厳しいプレス。思ったより両者近い。
しかし和氣は際どく外して右フック、サイドへ。目にも止まらぬ、というくらい。
久我右ヒットも単発。久我も気合い十分だが、和氣の好調さにびっくり。

2回、久我の右が飛ぶも、和氣が外して鋭く左。久我ダウン。
和氣、防御から攻撃への切り替えが異様に鋭い。
3回、久我が出る。両者鋭いパンチの応酬。久我が右から左を返す。
和氣の左も当たるが、久我の右で和氣のけぞる。この回久我。

4回、またもビッグラウンド。和氣の左が「命中」し、久我がぐらつく。
和氣の追撃鋭く、ラスト50秒くらいか、久我打たれっぱなし。
いつストップか、タオルかと思ったが、どちらもなし。久我の粘りにも感嘆。
和氣の10-8もあり、という内容。

5回、和氣が左ヒット重ねる。ここでこの試合、唯一の?バッティング。
けっこうきつく、和氣の方にダメージあり。ここでカットも。眉間のあたり?
ドクターチェックは入ったが、休憩はなく再開。ちょっと疑問。

6回、和氣はまだバッティングの影響ありか、スリップダウン。
ドクターチェック二度目。和氣、足使って右ジャブで捌く。やや和氣。
7回、久我が右から攻める。和氣は少し足が止まり加減な印象。
それでも右フック、左ショートの合わせを見せる。良し悪しだと思うが。

8回、和氣が左カウンターを決める。ドクターチェック三度目。
久我左ダブルで攻める。和氣ワンツー。
9回、久我果敢に出て、左で煽り、右から左。顔は腫れ気味だが、闘志は萎えず。
和氣左をカウンター。
10回、和氣の左が決まり、追撃。タオルが入ってTKOでした。


試合の流れを決めたのは、やはり2回の左によるダウンシーンだったでしょう。
しかしそこに至るまでの序盤から、和氣慎吾の闘いぶりは、
高い集中故か、従来のそれよりも良くなっていた、と思える部分がありました。

右のリードジャブが、今までより高い頻度で出ていましたし(世界戦ではもっと欲しいですが)、
フットワークやサイドステップの切れも、追う久我にとって、厄介なものでした。
そして一番目を引いたのが、相手のパンチを外す防御から、主に左カウンターを決める、
攻防の切り替えが、異様に鋭かったことです。

今までは、どうしても相手を懐に引き込んでしまうので、好機が同時に危機でもある、
という風に見えましたが、今回は厳しく距離を維持する心がけが見え、その上で、
久我が攻めてきたところを外してカウンターが取れた。
しかもその鋭さが、以前よりも増していた印象でした。

試合後に語った、故郷岡山の被災についての思いも含め、注目の大一番たるこの試合に、
和氣慎吾が並々ならぬ決意で臨んだことは、全て試合の中に出ていました。
高い集中が切れずに続き、バッティングの事故も、ものともせずに闘い抜いた。お見事でした。


敗れた久我勇作は、王者としてはまだ若い部類ではあっても、
好調の和氣に対して、最後まで楽をさせない、こちらも天晴れな奮闘ぶりでした。
和氣の右ジャブ、左ストレート、フットワークに苦しみ、強打爆発はなりませんでしたが、
最後まで勝負を捨てず、緩むことなく攻め続けました。
内容を評すれば完敗、となりましょうが、試合を見た者の目には、紛れもなく彼もまた、
「激闘」「名勝負」というべき闘いの、もう一方の主役でした。こちらもお見事でした。


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ホールのチケット販売所は夕方の時点でクローズされ、チケット完売、
当日券の販売もなし、とポスターに張り紙。
会場内も、空席はほぼ皆無に見える大盛況でした。

場内は双方の応援団は当然のこと、「中立」の観客も含め、
終始緊迫し、激しく展開される攻防の「熱」に煽られるように、
終始歓声と悲鳴と拍手が繰り返して沸き起こっていました。

試合前の期待どおり、いや、それ以上の試合内容だったと思います。
やはり「日本一」を争奪する試合とは、こうでなければ、と。


そして、この試合の熱狂が、2000人にも満たない会場で完結し、それ以外に伝わらない。
TVはともかく、オンデマンド勃興の時代に、どこにもライブ配信されない。
関東ローカル翌日深夜放送でおしまい。改めて言いますが、本当に異常です。

試合後、会場を去る観客の皆さんは、一様に笑顔で、高揚しているように見えました。
双方の応援の方々も、勝ち負けはともかく、得心いった、と言えるものだったでしょう。

良いカードというのは、組むものです。優勝劣敗の掟は厳しいものですが、それでも。
これが、特別なことではなく、恒常的に実現するようなボクシング界であったら。
そして、その熱狂が、世にあまねく...とは言わずとも、もう少し広く伝えられる道があったら。

素晴らしい試合を見て、とても良い気持ちになると同時に、
やはり、そんなことも思ってしまう観戦後、でした。



コメント (9)
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