さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

見る度に、着実に強くなっている 拳四朗、健闘の大内淳雅を退け二冠王者に

2016-08-08 14:03:14 | 関西ボクシング



ということで昨日は府立地下にて、拳四朗vs大内淳雅戦を観戦してきました。
BoxingRaiseにてライブ配信がありましたが、出来るだけ多くの人に見てもらえたらいいなぁ、
と素直に思える好試合でした。経過から。



初回から、大内が積極的に出る。早速、右のヒット応酬。手数とアクションの多さでやや大内か。
2回、拳四朗が右ヒット、大内が少したたらを踏む。アッパー、フックを巧く組み合わせた4連打。
拳四朗、また以前より鋭く、強くなっている。拳四朗。

3回、両者、右ヒット。大内が右、ボディ。拳四朗左ボディから上。大内右返す。密度の濃い攻防続く。
手数で大内か。
4回、大内右決めるが拳四朗はその度にジャブを連発。ボディ攻撃も効果的。拳四朗。

私のここまでの採点は38-38。公式は39-37×2、39-38で拳四朗3-0。


5回、採点を聞いた大内、巻き返しにかかったか、ペースアップ。
ワンツーで出て、右決める。拳四朗後退、効いたか。彼の試合で初めて見たシリアスなピンチ。
しかし拳四朗ジャブ出して立て直す。大内スリーパンチ、攻勢を取るが、
拳四朗の左フックが決まり、ロープ際で追撃を受け、ダウン寸前。ロープがなければ倒れていた?
大内もまたここから反撃、打ち合いに。場内歓声の中ゴング。

この試合の、というより今年見た試合の中でもベストラウンドか、という3分間。
攻めた時間は大内の方がやや長いが、好打の際のリアクションの差で、やや拳四朗か?迷う回。


6回、大内取り返しに来る。拳四朗ジャブで間を取り、ボディ。
これが決まると大内が若干ながらペースダウンする。拳四朗振りの小さい左フック。拳四朗。
7回、大内はボディを返すが、拳四朗が敏捷に右を合わせる。拳四朗左で煽って右決める。拳四朗。

8回、両者左の応酬、続いて右の応酬か、と見えたとき、拳四朗の右がカウンターで決まる。
大内ダウン。立った大内、粘って手を出す。10-8で拳四朗。

公式採点79-73×2、79-72。

9回、大内苦しい中、それでも果敢に攻めて右ヒット。しかし左に右を被せられ、また劣勢に。
10回、大内出てワンツー、右。拳四朗左ジャブ、右の上下。大内きつくなってきたか、失速。
終盤、拳四朗が右で追撃。レフェリーが一瞬ストップを考慮したような様子も見える。

11回、大内なおも懸命な反撃。右ボディ決める。しかし拳四朗ジャブで流れを切る。
大内単発ながらヒット取るが、拳四朗は左ボディ、ワンツー、右から左の返しと多彩に攻める。
12回、拳四朗左フックのカウンター。大内一瞬止まるが、最後の意地を見せ奮戦。
右を上下に飛ばす。拳四朗ブロックして右、ヒットを取って抑える。

採点は117-111、119-109、119-108の3-0、拳四朗でした。

採点は大差でした。しかし、試合内容自体は、少し違った印象を残すものでした。


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拳四朗は、デビュー戦から会場で、或いは映像で全部見てますが、試合の度に着実に成長しています。

最初は小柄で俊敏で、よく左が出て、というイメージだけでした。
しかし徐々に、相手との距離感、間合いの取り方が秀でている、と見えるようになり。
また、少しずつですがパンチ力が増し、スピード感や切れ味も感じるようになり。

堀川謙一との試合では、それらが合わさったひとつの集大成のようなものに見えましたが、
先の初回KO勝ち、そして今回の試合では、従来の良さに加えて、巧さや鋭さがさらに増していました。
2回に見せたコンビネーションは、一目見ただけでは「え、今の組み合わせ、何?」と
見ているこちらの頭が追いつかないようなものでした。

そして、ロリー・スマルポン戦のダウン以上に深刻に見えた5回のピンチ。
私は拳四朗のことを、淡々とペースを刻んでいくのがベストパターンの選手、と見ていました。
故に、こういう展開は最悪のケースのはず、と見えた危機を、彼はその回のうちに反撃して挽回し、
逆に大内をダウン寸前まで追い込む逆襲をしてみせました。

試合の流れを読めて、間が空けば左ジャブを出せて、相手との間合いが見えているクレバーさを持ち、
それに加えてスピード、パワーも増し、そして危機にあっても冷静で、逞しさもある。
デビュー2年かそこらのキャリアで、拳四朗はすでに、日本チャンピオンとして一級品のボクサーになりました。
その着実な成長ぶりは、目に見えて驚異的です。

実力者の大内相手に、攻め込まれる場面があったことは反省材料にせよ、それに対して、
時に距離を外し、ジャブでいなし、カウンターで迎え打ち、ボディを叩いて力勝負でも押さえ込む。
その実力は、真に一級品の王者と呼ぶべきものでした。

この階級の情勢からいって、遠からず世界という話も出てくることでしょうが、
その成否以前に、まずはそのこと自体を書き記し、大いに称えたいと思います。

暇割いて、身銭切って試合を見に来るだけの価値が、彼の試合には確かにあります。
会場では、遠方からの観戦組の方々にも会えましたが、皆さん共々、大いに満足感のある観戦でした。


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敗れた挑戦者、大内淳雅の健闘についても。

以前、少し書いたとおり、故郷の姫路に戻って以降、艱難辛苦の、というべきキャリアを過ごし、
それを乗り越えて挑んだ二度目のタイトルマッチは、文字通り彼の人生を賭けたものでした。

その実力は日本上位のものでありながら、あと一歩というところで頂点には立てなかった。
その無念を晴らすべく費やした日々の労苦を、そこで培った力を、
彼は拳四朗という俊才との一戦において、存分に発揮しました。

常に果敢に、積極的に攻め、抜群の距離感を持つ拳四朗の防御を突破し、
5回には大チャンスを得もしました。
しかし、ほどなく逆襲され、危機に立ち、それ以降、劣勢が続きます。

それは、傍目に見ているこちらが、これだけ頑張って、また実際強いのに、それでも敵わないのかと
絶望的な気持ちになってしまうような状況でした。

しかし大内は、最後まで勝負を捨てず、果敢に、懸命に戦い続けていました。
終盤の劣勢にあっても、出せる手は全部出し、拳四朗に大勝は許しても、楽勝はさせませんでした。
試合展開がどう、技術がどう、という話を越えて、彼がこの一戦のために、
どれだけ膨大な労苦を費やし、全てを賭けて闘っているのかが、ひしひしと伝わってきました。

敗れてもなお、感動的な、という、いかにもありがちな言葉しか思いつきませんが、
大内淳雅の闘いぶりもまた、勝者である拳四朗と共に、大いに称えたい、素晴らしいものでした。


見終えて、本当に良い試合を見た、というに尽きる一戦でした。
両選手に感謝、そして拍手です。


コメント
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