さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

満たされない誇りのために 石田順裕またも惜敗、ヘビー級王座逃す

2015-05-01 09:15:43 | 関西ボクシング



昨夜は後楽園ホールにて観戦してきました。
日本タイトルマッチ3試合一挙開催ということで、場内盛況でした。
それぞれの選手の応援団が場内を盛り上げていましたが、応援抜きの観戦者にすれば、
試合内容はそれぞれに見どころはあったものの、盛り上がる試合もそうでないのもありました、というところです。


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メイン、ヘビー級の藤本京太郎vs石田順裕の再戦は、スプリットで藤本が勝利しました。

立ち上がりはじっくり見合って、石田がジャブ、右ストレートで先制。
離れていれば石田の巧さ、正確さが完全にまさる。
藤本は体格差を生かして、しっかり構えて圧したかったのでしょうが、結局のところは
クリンチの揉み合いで石田が消耗するまでは、劣勢が続きました。

と、前半見終えて途中採点を聞くと、取ったラウンドが石田三つ、藤本二つという数字が二者。
あとひとりはイーブン。私は4対1で石田と見てまして、ありゃ、という感じ。

徐々に両者の距離、スピードの差が縮まりつつあったこの時点で、大きくリードしているはずの採点がこれ。
石田陣営も計算が違ったのかもしれません。


とはいえ、ボクシングのキャリアでいえば雲泥の差がある相手の技巧に、神経を使わされている藤本も、
心身ともに疲れは当然見え、6回以降は好打もあれば、手が止まる時もあり、体力で挽回だ、というのは
口で言うほど簡単ではなさそうでした。

身体を離して見合い、パンチの応酬に特化した展開なら石田のものでしたが、試合はそういう流れから
だんだん離れていき、見合う暇のない近い距離で、打ち合いとクリンチが繰り返されます。
これは石田にとり損な展開でしたが、どうも石田に、そういう展開から離れようという意志が見えなかった印象でした。


スーパーウェルターを去り、ミドル級で世界の上位ランカーとして活躍するも、再度世界の王座は獲れず、
それでもなお、30代後半でヘビー級に上げ、過酷な肉体改造を自らに課して闘う石田順裕の心中には、
単に藤本京太郎というボクサーに勝てばいい、というだけでは収まりきらない何事かが、熱く滾っていたのでしょう。

無謀と評されたヘビー級での闘いとは、彼にとり、長きに渡って身を捧げてきたボクシングへの執着から来る、
新たなる栄光の希求であり、世界のトップシーンで闘って来た自分の誇りを満たすためのものだったのでしょう。

今、彼はそうした、未だ満ち足りぬ何事かへの思いを、目先の勝ち負けのために割り切れずに、闘っているのではないか。
自分の技巧を、そして新たに鍛え上げた肉体をもって、真っ向からヘビー級の壁を
打ち破って見せようとしているのではないか。

藤本京太郎を技巧と経験で上回りながら、巧く立ち回れず、打ち合い、揉み合い、苦しむ石田順裕の姿を見て、
そんな風に思いました。


判定は正直、微妙な印象でした。私は石田の勝ちと見ました。逆があるようには思わなかったですが...。
しかし、試合後の石田は、ある意味さばさばした様子にも見えました。
判定の論議に意味がないとは言いません。しかし彼は、それとは別の意味で、この試合につけられた
「決着」を、誰よりも厳しく、受け止めているのかも知れません。


決して両者の心技体、全てを絶賛するような試合ではありませんでした。
しかし、石田順裕の長いキャリアを思うにつれ、色々感じるところのある試合でした。


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日本ライト級王座決定戦は、徳永幸大が杉崎由夜を8回TKO。
13日の大森将平に続き、京都のWOZジムから二人目の日本チャンピオン誕生なりました。


長身の徳永は、そのリーチをあまり生かせず、自分から相手に寄っていってしまう風で、
そこを杉崎のジャブで打たれていましたが、4回に杉崎がスリップダウンしたときに振っていた右が、
違う位置から見ていた人によると「当たってた」とのことで、これ以降徐々に杉崎が失速します。


徳永はビシッと左ジャブが打てず、その帰りに杉崎がリターンをきっかけにして打つ、という展開でしたが、
徐々にワンツーをガードの上に「置く」回数が増えます。
さすがに右が来れば、杉崎も簡単に入れなくなり、徳永は後続の攻撃が出せるようになりました。

7回、右のヒットに手応えがあったか、徳永が攻勢。
8回、また右ショートから徳永が攻め、杉崎も果敢に反撃するがコーナーで打ち込まれる。
ここでレフェリーが割って入り、ストップかと思ったら何故かルールにないはずのスタンディングカウント。
しかし再開後、目線を切った姿勢で右を振る杉崎の抵抗も空しく、徳永の右が決まり、今度はストップでした。


長年、全日本新人王は何人も出していながら、チャンピオンが出なかったWOZジムですが、
何と、ひと月にふたりの日本チャンピオン誕生、しかも揃って後楽園ホールでのKO勝ちです。
盆と正月がいっぺんに来た、という感じでしょうか。古い例えですみません。


徳永は真正ジムの鈴木悠平(会場にいたのかな?)に、試合後、リング上から対戦を呼びかけてましたが、
同じ関西の中谷正義との長身対決なんかも期待したいですね。
今のところ、体格、リーチを生かし、それを前提とした組み立てを能動的に出来る中谷が有利でしょうが、
徳永もキャリアを積んで、欠点を是正していけば、天与の体格を生かして、さらに成長していけるでしょう。

なんだかんだ言って、関西にタイトルホルダーが増えると、観戦の楽しみが増えますので、嬉しい戴冠でした。
大森とのダブル興行とかも期待していいんでしょうかね。また、京都に観戦しに行くのが楽しみです。

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スーパーバンタム級タイトルマッチは、小國以載が1位の古橋岳也とドロー防衛でした。

小國は長身のボクサー型ですが、相手の軸をインサイドから打てる自信があり、
特にボディ攻撃で相手の体力を削いで打ち勝ち、強敵相手にも競り勝ってきたボクサーです。

ただ、以前の試合では、離れた距離を維持して、ジャブや右ストレートをしっかり打った上で、
接近戦に持ち込もうとする相手に対抗する、できる、というのが小國の強みだったはずです。

しかし今回は、旺盛な体力と手数が武器の古橋を相手に、最初からインファイトに応じてしまい、
ボディ攻撃をかなり決めていながらも、結局相手の体力を削りきれず苦戦する、という、
見ていて非常に歯がゆい闘いぶりに終始しました。

展開次第で打ち合いにも応じられる、より内側からショートを当てられる、ボディも打てる。
小國がそういう自信を持つことは、悪いことでは断じてありません。

しかし今回の試合は前提が違いました。
ストレートパンチで距離を作り、足で捌き、相手を焦らせ、脅かし、その上で、時に応じる打ち合いではなかった。
最初から相手の積極性、果敢さを引き出してしまい、持てる力、出せるパンチ、頑張りを全て、
まともに引き受けてしまっていました。その試合運びはいかにも拙かった、というのが正直な感想です。


もし、彼の技量が、或いはそれ以外の何かが衰えていて、距離を維持するボクシングをする自信がない、
というなら、極めて深刻な事態ではありますが、実際どうなのかはわかりません。
もちろん、従来ある小國以載の良さも生きていました。しかし、その使い方がどうにも納得できない試合でした。

今後の試合で、そのあたりの改善がなされることを期待したいものです。


コメント (2)
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