本日の生中継はちょうど正午から判定三連発。
しかも、早い試合終了があり得たはずものが終わってみれば...というのが三つ揃って、
見終えたあと、何だか不思議な感じが残りました。
マニー・パッキャオは、今時珍しい徹底したフットワーカーのクリス・アルジェリを
6度倒して大差の勝利。しかし最初のみっつのうち、ふたつはレフェリーの判断次第、というか
はっきり言えばミスだったと覚しきものでした。
長身のクリス・アルジェリは、足は使うが、動きの中で必ず左足を軸に、パンチを打てる「壁」を
身体の左側に維持しながら動ける、腰が無駄に引けていない、上質なアウトボクシングが出来る選手で、
今日の試合でも、序盤はその良さが出ていました。パッキャオが簡単に打っていけないのは、
速くて遠いだけじゃなく、反撃の脅威を感じていたからだったはずです。
しかし、それでもパッキャオ相手にフルラウンド捌ききれる道理もなく、徐々に打たれ、
不運なのも込みでダウンを重ね、6回と9回にはホントのダウンと追撃を受け、
ストップされても不思議の無い劣勢でしたが、最終回まで生き延びました。
パッキャオは久々に強打が火を噴き、快勝と言える試合だったと思いますが、
そのパッキャオ復調云々以前に、大差でリードされていることを承知の上で、自分の型を崩さず、
懸命に足を使って動き、ジャブで距離を取って、サイドに回って...と真顔でやっているアルジェリが
どうにも不思議で、理解不能でした。君、それは競った試合の最終回にやることやで、と
思わずTV画面に向かって語りかけそうになりました。
まあ、ちょっと変わったキャリアの選手ですし、我々が普通に思い描くのとは違う情緒で、
ここまでの試合と、今日の試合を闘ってきた選手なのかもしれませんが。
単に判定まで生き延びたい、という女々しさとも多少違う、彼なりのこだわりのようなものなのか、と
見ていて不思議ながらも、何だか貴重なものを見ているのかなあ、という気もしました。
今後、この選手の試合をどの程度見ることがあるかはわかりませんが、妙に気になる存在ではありますね。
パッキャオは試合後、明るい表情でメイウェザー戦の希望を語っていましたけど、
もう少し爆発的な踏み込みが頻繁に出るようでないと、苦しい展開が待っていそうですね。
まあそれ以前に実現するかどうかが不明なんですが...今後さらなる復調があると仮定すれば、
今日の時点ではこのくらいの出来に留めておいた方が、試合実現へのプラス材料だったりするのかも知れませんね。
メイウェザーって、ビジネス云々の話を取り払ってしまえば、結局はそういう人だ、と私は見ております。
どうでしょうかね。
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セミファイナルはゾウ・シミンが、WBO3位のクワンピチットというタイの選手に判定勝ち。
何でもIBF王者アムナット挑戦が内定してるとかで、その前哨戦という位置づけの試合だったそうですが、
相変わらず締めた構えが長続きせず、さりとて手を下げる割に目で外せる率が意外に低くて打たれるという、
いつも通りのゾウさんワールドでした。
どうもこの人、プロでの試合ぶり限定ですが、あちらを立てればこちらが立たず、という印象です。
ハンドスピードはあるが腰高なのでパンチ力に欠け、カウンターのタイミングは良いが手を下げないと打てない。
構えを締めて重心を落として打つと遅くなり、手を下げると速いが、相手の反撃を外しきれるほどには目が良くもなく、
さりとて距離で外しきれるほどに足も速くなく、結局は腰高のまま打ち合い、速さで打ち勝つが倒しきれない。
従って相手が一定以上粘れる力がある選手だと、結局はけっこう苦戦する。いつもこんな感じですね。
けっして弱いわけじゃなく、普通の選手にはない強みと特色を持っていますが、今の状態でアムナットとやるというのは...
アマチュアの強豪対決といえば聞こえはいいですけど...アムナットのジャブやアッパーによる距離構築に対し、
ゾウが目で外す防御と、速いパンチの「合わせ」で切り込めるのかどうか、という、まともな攻防が繰り広げられるのは
結局は序盤だけかせいぜい中盤までで、それ以降は互いの弱み、アムナットの失速とクリンチ増加、ゾウの被弾増加が相まって、
あまり見映えのしない展開に、という、あまり楽しくない想像をしてしまいます。
きついようですが、この試合が実現しても、せいぜい野次馬根性で見るくらいの感じかもしれません。
ゾウがもっと自分の良さだけを試合に出すために、最低限考えないといけないことをしっかり考えて
冷静に闘えるようになれば、話は違ってくると思うのですが...。
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セミセミの好カード、ワシル・ロマチェンコvsチョンラターン・ピリャピニョは、ロマチェンコの大差勝利でしたが、
これもまた、ロマチェンコの左手負傷?の影響で、どう見ても中盤くらいでKOかTKOかと見えた試合が、判定になりました。
7回に露骨に左手を痛そうに振ったロマチェンコの、プロとしての甘さが指摘されましょうが、それ以前に、
あの序盤の展開で、いかにチョンラターンがタフだとはいえ、もう一押しの攻撃が無かったことも責められるべきでしょうね。
ジャブの正確さ、サイドステップの速さ、常に死角から打てるアングルの確保と、その位置への適切な移動の連続、
いずれもなるほど世界最高峰、と感嘆させられるロマチェンコが、あんなに甘い試合運びと、危機管理の欠如をさらけ出すとは、
正直言って驚き、というよりも奇異にすら感じました。アマチュアはラウンドが少ないから、怪我を相手に悟られても
何とか乗り切れてきた、とでもいうのでしょうかね。まあ今後に向け、良い教訓になったのでしょうが。
しかし2勝1敗の世界王者と、52勝1敗の挑戦者による世界タイトルマッチ、というのも実に珍しいですね。
面白いものを見せて貰いました。
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大竹秀典は英国リバプールで、スコット・クイグに3-0の判定負けとのこと。
映像を見ていませんが、最近華々しくノックアウトを重ねている王者相手に、健闘したのでしょうか。
結果は残念でしたけど、広い世界に打って出ての闘いは、それ自体がまず貴重だと思います。
大竹の今後に期待します。