さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

6度倒れてなお足を使う不思議 パッキャオ完勝なれど、アルジェリ・ワールド全開

2014-11-23 18:51:48 | マニー・パッキャオ


本日の生中継はちょうど正午から判定三連発。
しかも、早い試合終了があり得たはずものが終わってみれば...というのが三つ揃って、
見終えたあと、何だか不思議な感じが残りました。


マニー・パッキャオは、今時珍しい徹底したフットワーカーのクリス・アルジェリを
6度倒して大差の勝利。しかし最初のみっつのうち、ふたつはレフェリーの判断次第、というか
はっきり言えばミスだったと覚しきものでした。

長身のクリス・アルジェリは、足は使うが、動きの中で必ず左足を軸に、パンチを打てる「壁」を
身体の左側に維持しながら動ける、腰が無駄に引けていない、上質なアウトボクシングが出来る選手で、
今日の試合でも、序盤はその良さが出ていました。パッキャオが簡単に打っていけないのは、
速くて遠いだけじゃなく、反撃の脅威を感じていたからだったはずです。

しかし、それでもパッキャオ相手にフルラウンド捌ききれる道理もなく、徐々に打たれ、
不運なのも込みでダウンを重ね、6回と9回にはホントのダウンと追撃を受け、
ストップされても不思議の無い劣勢でしたが、最終回まで生き延びました。

パッキャオは久々に強打が火を噴き、快勝と言える試合だったと思いますが、
そのパッキャオ復調云々以前に、大差でリードされていることを承知の上で、自分の型を崩さず、
懸命に足を使って動き、ジャブで距離を取って、サイドに回って...と真顔でやっているアルジェリが
どうにも不思議で、理解不能でした。君、それは競った試合の最終回にやることやで、と
思わずTV画面に向かって語りかけそうになりました。

まあ、ちょっと変わったキャリアの選手ですし、我々が普通に思い描くのとは違う情緒で、
ここまでの試合と、今日の試合を闘ってきた選手なのかもしれませんが。
単に判定まで生き延びたい、という女々しさとも多少違う、彼なりのこだわりのようなものなのか、と
見ていて不思議ながらも、何だか貴重なものを見ているのかなあ、という気もしました。

今後、この選手の試合をどの程度見ることがあるかはわかりませんが、妙に気になる存在ではありますね。


パッキャオは試合後、明るい表情でメイウェザー戦の希望を語っていましたけど、
もう少し爆発的な踏み込みが頻繁に出るようでないと、苦しい展開が待っていそうですね。
まあそれ以前に実現するかどうかが不明なんですが...今後さらなる復調があると仮定すれば、
今日の時点ではこのくらいの出来に留めておいた方が、試合実現へのプラス材料だったりするのかも知れませんね。
メイウェザーって、ビジネス云々の話を取り払ってしまえば、結局はそういう人だ、と私は見ております。
どうでしょうかね。


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セミファイナルはゾウ・シミンが、WBO3位のクワンピチットというタイの選手に判定勝ち。
何でもIBF王者アムナット挑戦が内定してるとかで、その前哨戦という位置づけの試合だったそうですが、
相変わらず締めた構えが長続きせず、さりとて手を下げる割に目で外せる率が意外に低くて打たれるという、
いつも通りのゾウさんワールドでした。

どうもこの人、プロでの試合ぶり限定ですが、あちらを立てればこちらが立たず、という印象です。
ハンドスピードはあるが腰高なのでパンチ力に欠け、カウンターのタイミングは良いが手を下げないと打てない。
構えを締めて重心を落として打つと遅くなり、手を下げると速いが、相手の反撃を外しきれるほどには目が良くもなく、
さりとて距離で外しきれるほどに足も速くなく、結局は腰高のまま打ち合い、速さで打ち勝つが倒しきれない。
従って相手が一定以上粘れる力がある選手だと、結局はけっこう苦戦する。いつもこんな感じですね。

けっして弱いわけじゃなく、普通の選手にはない強みと特色を持っていますが、今の状態でアムナットとやるというのは...
アマチュアの強豪対決といえば聞こえはいいですけど...アムナットのジャブやアッパーによる距離構築に対し、
ゾウが目で外す防御と、速いパンチの「合わせ」で切り込めるのかどうか、という、まともな攻防が繰り広げられるのは
結局は序盤だけかせいぜい中盤までで、それ以降は互いの弱み、アムナットの失速とクリンチ増加、ゾウの被弾増加が相まって、
あまり見映えのしない展開に、という、あまり楽しくない想像をしてしまいます。

きついようですが、この試合が実現しても、せいぜい野次馬根性で見るくらいの感じかもしれません。
ゾウがもっと自分の良さだけを試合に出すために、最低限考えないといけないことをしっかり考えて
冷静に闘えるようになれば、話は違ってくると思うのですが...。


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セミセミの好カード、ワシル・ロマチェンコvsチョンラターン・ピリャピニョは、ロマチェンコの大差勝利でしたが、
これもまた、ロマチェンコの左手負傷?の影響で、どう見ても中盤くらいでKOかTKOかと見えた試合が、判定になりました。

7回に露骨に左手を痛そうに振ったロマチェンコの、プロとしての甘さが指摘されましょうが、それ以前に、
あの序盤の展開で、いかにチョンラターンがタフだとはいえ、もう一押しの攻撃が無かったことも責められるべきでしょうね。
ジャブの正確さ、サイドステップの速さ、常に死角から打てるアングルの確保と、その位置への適切な移動の連続、
いずれもなるほど世界最高峰、と感嘆させられるロマチェンコが、あんなに甘い試合運びと、危機管理の欠如をさらけ出すとは、
正直言って驚き、というよりも奇異にすら感じました。アマチュアはラウンドが少ないから、怪我を相手に悟られても
何とか乗り切れてきた、とでもいうのでしょうかね。まあ今後に向け、良い教訓になったのでしょうが。

しかし2勝1敗の世界王者と、52勝1敗の挑戦者による世界タイトルマッチ、というのも実に珍しいですね。
面白いものを見せて貰いました。

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大竹秀典は英国リバプールで、スコット・クイグに3-0の判定負けとのこと。
映像を見ていませんが、最近華々しくノックアウトを重ねている王者相手に、健闘したのでしょうか。
結果は残念でしたけど、広い世界に打って出ての闘いは、それ自体がまず貴重だと思います。
大竹の今後に期待します。

コメント (2)
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なかなか強い挑戦者が、揃って弱く見えた 三浦・ロマゴン、共にKO防衛

2014-11-23 00:07:50 | 関東ボクシング


本日はWOWOW生中継を楽しく見ておりました。

日本ボクシング界はただいま、年末にある、怒濤の世界戦ラッシュに向けて「てんやわんや」な情況にありますが、
そのさなかに組まれたダブル世界戦。
三浦隆司とローマン・ゴンサレスは、揃って圧巻の強さを見せました。


エドガル・プエルタは、そのインサイドストーリーそのままの実直な闘いぶりで、長身、リーチを生かして
三浦隆司を先手で突き放しにかかりましたが、初回、打って離れ、の離れ際の前に左を合わされてダウン。
懸命に打ちかかり、リターンも休まず出し、スイッチを繰り返しと健闘したものの、三浦のボディ攻撃を防げず、
徐々に失速、6回に三浦の左を食って追撃され、捉えられてしまいました。

三浦は、一発強打こそなく、やや迫力に欠けるものの、リーチがあって手数が出せ、精度も高い攻撃力を持つ
1位の挑戦者を、持ち味の強打で圧倒しました。以前よりも攻め口が多彩になり、全体としてはまだ硬いものの
要所で柔軟な攻防の繋がりが見られる場面もあり、試合前から喧伝されていた技術面の成長が試合に出ていました。
けっこう打たれて、手数を出させない工夫も欲しいと思う反面、ガードで防ぐ頻度が以前よりも高くなっていて、
防御面でも巧さが出ていました。こういう段階でさらに巧くなる選手というのは珍しく、相手にしたら怖いところでもありますね。

三浦はこれで世界戦5戦4勝1敗、勝ちは全部メキシカンで唯一の負けが日本人、という、ちょっと珍しい戦績になりましたが(笑)
この強打と骨太のボクシングに、要所に巧さも見られるとなると、ますますこの先が楽しみになります。
内山との再戦のみならず、サリドやガンボア、またはロマチェンコなど、近辺に強豪が揃っていますが、
単純に誰とやっても面白そう、という、ファンの勝手な希望を感じられる存在になりましたね。

往年の世界的大プロモーター、ジョージ・パナサスは、かつて三浦の所属ジム会長でもあった往年の名選手、関光徳を評して
「世界中、どこの国でも高く売れる、真のトップボクサーだ」と語ったそうですが、
今の三浦は多少毛色が違うにせよ、ある部分では重なるのではないかと、そんな風に思っています。



ローマン・ゴンサレスもまた、三浦同様、けっこう手強い相手のはずの挑戦者を、終始圧倒しての防衛でした。

ロッキー・フエンテスの来日初試合を、私は大阪のIMPホールで見ています。
当時IBFのフライ級13位、とかいう話でしたが、肩書き自体ははっきり言って微妙で、どうとでも取れる感じ。
しかし実際、当時グリーンツダ所属の奈須勇樹との試合が始まると、堅実で厚みのあるボクシングは「ホンモノ」で、
攻防共に奈須を圧倒しての勝利でした。後に奈須との再戦を含め、日本人とは6戦6勝、その力は良く知られているところでした。

しかしその確かな実力も、ロマゴンには通じませんでした。体格ではまさるフエンテスが先手で攻めようと出ますが、
ロマゴンが強振せず軽く(?)繰り出す左右の連打、アッパー上下を散らす攻撃が正確で、強い。
フエンテスの右フックが単発で入っても、芯を外しているのか、ほとんど止まらず、攻め続ける。
ボディ攻撃を交えて攻め立て、打ち崩し、6回に試合を終わらせる、という展開はメインにも似ていましたが、
より余裕が見えたのはこちらの方。フエンテス健闘しましたが、彼我の差は大きく、如何ともし難いものでした。

八重樫東戦から調整期間も短く、堅実で大柄なフエンテスが先手で攻め込んで行ったら、間違いも起こり得るか?と
少しだけ思ったりもしていたんですが、単発の右を繰り返し打たれていた場面も、どうやらさほどの脅威ではなかったようで、
終わってみれば圧勝でした。しかもロマゴン、最初から最後まで、力を全て込めて打つ、という打ち方はほとんど見せず、
せいぜいが6~7割まで、という感じの軽打を重ねるだけ。そういう闘い方で、あのフエンテスを抑え込み、勝ってしまう。
改めて脱帽、という感じでした。もっと速く、パンチ力もある相手だと不安もあるでしょうが、今のフライ級を見渡すと、
エストラーダ以外に、現時点ではロマゴン攻略の可能性を見出すことは出来ない感じです。



ということで、ダブル世界戦は共に、王者の圧巻の強さを揃ってみられた、見応えアリな試合となりました。
赤穂の試合も(半分だけでしたが)見られたのも含め、こういうのを生中継で見られる、WOWOWさま万歳、というところですね。

ただ、実況解説席は、ちょっと大勢盛りだくさん過ぎて、若干の混乱も見られ、少し残念なところもありました。
もう少し「交通整理」が必要かな、という印象。
しかし、好カードで、なおかつ好内容であった試合の楽しさを、一生懸命表現しようとする各人の気持ちも伝わってきて、
印象自体は悪くはありませんでした。試合後、三浦を囲んでのインタビュー兼「立ち話」も、楽しいものでした(^^)
WOWOWには国内の試合も、どんどん取り扱ってほしいものです。


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ところで、少し前にWOWOWオンデマンドのボクシング検定とかいうやつを、暇つぶしにやってみたら、
正答率が高かったらしく「西日本代表」として、決勝戦?に参加しないか、というメールがWOWOWから来ていました。
答え合わせを出来るシステムじゃなかったので、自分では細かいところまではわからなかったんですが。

なんでも、16日にあったという決勝?で優勝していれば、今日の試合にも招待してもらえたのだそうです。
交通費も宿泊費も持ってもらえるという、滅多に無い、良い話だったんですが、この週末はあれこれ用事があって辞退。
こればかりは如何ともし難く。残念でした...。




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