さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

公約が実現へ/試運転で圧勝/健闘と不安/強さが見えた/どちらもあきまへん

2014-04-07 19:26:33 | 関東ボクシング


昨日の興行、全体としても豪華なものだったのですが、
メインの衝撃があまりに凄すぎて、全部飛んでしまった感さえあります。

普通「前座はきつかったけどメインが良くて全部飛んだ」とか
「メインはもひとつやったけど、前座は良かった」とか、どっちかになるものですが
前座が結構良いのに、メインがさらに輪をかけて、というのは、珍しいものです。
ということで、セミ以下の試合についても雑感を簡単に。

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セミの八重樫vsサレタ戦は、サレタの意外な健闘でした。

身体の厚みが全然違い、こりゃ勝負早いかなと思いましたが、
サレタの程よく軽い身のこなしと、強打ではないが狙いすぎずに打ってくるワンツーが
時折八重樫を脅かし、序盤はややサレタ優勢。

井上は中盤以降ボディから攻め挽回。8回、右を決めてサレタにマウスピースを吐かせ、
さあ追撃かというところで、レフェリーが止めて、マウスピースを入れてから再開。
これでリズムが切れたか、9回、失速気味だったサレタが甦ってきて、こりゃまたもつれるな、
と思った矢先の右ヒット、ダウン、ストップという流れで試合は終わりました。

試合後はロマゴンの祝福を受けたり、先日亡くなった春原記者への感謝を語ったり、
八重樫の人柄の良さが会場を覆い尽くした感じでした。
いつもどおりお子さんたちも登場。一番「出来たて」の子を抱えてリングを降りるときは
万一こけたりしたら大変やと心配でしたが無事でした。良かった(笑)

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そのローマン・ゴンサレス、セミセミ登場。
フィリピンのファン・プリシマという選手は、闘志も意欲もあり、線は細いが伸びるパンチで
果敢に闘うものの、ロマゴンの身体の軸がぶれないフォームから繰り出されるダブル、トリプルの
上下の打ち分けにさらされ、2回にダウン、3回にやや早めのストップ。
力量差は如何ともし難く、という感じでした。

実は私、直にロマゴン見るのは今回が初めてでして(^^ゞ
今更ですが改めて、なかなか見られるレベルにない完成度があり、
なおかつ、それ以上の野性味を撒き散らす、雰囲気のあるボクサーでした。

とにかく、実に安定感があり、全てのパンチが決め手になりうる角度の正確さと威力を持っている。
攻め口が正面突破のみで、以前の微妙な角度の妙味は見えなかったですが、
それはこの試合では出すまでもない要素なのかもしれません。とにかく圧倒的でした。

八重樫戦、ホントのホントにやるみたいですね。正式発表を待ちましょう。

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細野悟vs緒方勇希は、緒方の健闘が目立った印象。
前後の動きで巧みに外し、軽いが手数とヒットでまさる緒方に対し、
強打の細野は右の手応えを欲しがる感じで、どうもよろしくありません。
終盤、緒方がさすがに疲れ、細野がヒットを重ねるようになり、
最終回に倒して追撃、ストップでした。

試合自体は緒方の粘りが好試合を演出した形でしたが、細野の先行きは不安の一語です。
ここ数年、世界戦での苦闘、不運といった試合しか見る機会がないもので、
普段の国内レベルでどうなのかは不明でしたが、
立ち上がりから上記のとおり、どうもこれはいかんのでは、という感じでした。
4度目の世界挑戦までに、もう少し落ち着いた組み立ての試合を見せてもらいたい、というところです。

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第一試合の井上拓真は、宮崎亮を倒したファーラン・サックリリン・ジュニアに判定勝ち。

デビュー戦は、相手がランカーで左で、ということもあり、派手なデビューとはいきませんでした。
その次が世界ランカーですから、大丈夫かなと思っていましたが、二戦目で良さが見えました。

パワーヒッターの部類なんですが、接近戦や打ち合いになったとき、相手のガードの隙間に
肩のスナップを使って、振りの小さいカウンターを合わせたり、アゴの先端に滑らせるような
速いパンチを狙ったり、という、巧いファイターの技がいくつか見えました。
その上で、重いパンチを持っていますし、ファーランに打ち勝って、クリアな勝利でした。

すぐ世界戦、というほどの突出した鋭さはなく、兄よりも試合数は必要でしょうが、
国内レベルで徐々に力をつけていけば、将来面白い存在になると思います。
名古屋のホープ田中恒成との出世争いにも注目ですね。


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最後に、友人のブログ紹介しておきます。

昨夜はこの方と同道して観戦したので、私も同じ位置からこのような光景を何度も見ました。
このクレーンカメラ、皆さん、どう思います?
数千円とか一万円とか払って来た客の存在を、いったい何だと思ってけつかっておられるのか。
信じられないレベルの傍若無人です。

ついでに翌朝の「めざましテレビ」ってやつ。
まあ、真面目にあんなものに突っ込むだけ阿呆ですが、ボクシング自体は何も語れず、
井上に変なポーズ取らせたり、いきなりケーキ食わせたり。ホントに低脳の一語。
今、何やっても視聴率が悪くて苦しんでるらしいですが、納得です。
あれを「一般視聴者にも親しみを持ってもらう狙いの切り口」と考えているのだとしたら、
あまりに頭が悪く、勘違いが酷い。救いようが無いレベルです。

TBSの情報操作、日テレの安定した野暮ったさに苦しんでいる身としては
かつて格闘技系の番組を華々しく演出し、高視聴率を上げたフジに期待もしたんですが、
結局、どちらもあきまへんな、というのが結論です。

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ま、最後は愚痴になりましたが、リングの上に関しては文句なし。
あれこれ見られて、こうして振り返ると改めて豪勢な興行でした。

ただ、場内の入りは、メインの時でも、事前に完売だ満員だチケット無いぞ、と
あれこれ言われていたほどの満員でもなかったのが、ちょっと意外で、残念でした。
南北の席は、5割かそこらの入りでしたし、東西もけっこう空席の目立つブロックもありました。

しかし、メインの驚異的な試合展開と、劇的なフィニッシュは、そういう空白を吹き飛ばすものでした。
改めて井上尚弥は凄いな、と思った要因のひとつです。



あ、松本亮vs久高寛之の新旧対決についてのつべこべあれこれ雑感は、また後日ということで。
人が何というかは知らず、私としては、結構心に染みる試合でした(^^;)


コメント (2)
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衝撃の圧勝!だがそれ故に、これはまだ通過点だ 井上尚弥、6戦目でWBC王座に

2014-04-07 02:19:52 | 井上尚弥


井上尚弥なら充分勝てる、と思っていました。
こわごわではありましたが、そう書きもしました。
しかし、こんな試合内容は想像してみたこともありませんでした。


右のボディストレートを突き刺した初回早々から、井上尚弥は全て先手を抑えてしまう。
判断が速い、手が速い、足も身のこなしも速い。
鋭い軌道を描き、長く伸び、次々に放たれる、殺意を込めた井上の拳に脅かされて、
アドリアン・エルナンデスは後手を踏むことすら許してもらえないままでした。

ことに、序盤3ラウンドまでは、ろくに手も出させてもらえないエルナンデスの姿に
何度、眼前の光景を疑ったか知れません。
東南アジア系の格下相手に調整試合をやっているんじゃあるまいし、
これはいったいどうなっているんだ、信じられない、あり得ない。
簡単に言うとそういうことです。

4回以降、井上がやや足を止め加減になり、それに乗じて攻めることを許されたエルナンデスですが
パンチの大半は井上の腕にバウンドし、むなしくグローブの皮の音が聞こえるばかり。
王国メキシコの強打者は、その拳をキャリア僅か6戦の日本人ボクサーに打ち込むことが出来ませんでした。

6回、エルナンデス懸命の反撃。しかしこの何度目かに見せた「意地」は、
いよいよ最後の断末魔、と見えるものであり、次に自ら後退したり、何らかの形で「決壊」があれば
勝負はそこで決するだろうと明らかにわかるものでした。
井上が放った4連打、その最後を締め括った右で倒され、
立ったものの、闘志を表せなかったエルナンデスを、誰も責めることなど出来ないでしょう。
彼は大歓声の中、地獄同然のリングから解放されました。


実際のところ、アドリアン・エルナンデスが若干不調であったとて、減量に苦しんでいたとして、
それにしたってこんなワンサイドの敗北など、起こり得ないことでした。

しかしそれは現実に起こりました。井上尚弥の圧倒的な力によって。

そういう理解が正しい試合でした。



こうして書いていて、エルナンデスほどではないにせよ、私もまた、井上尚弥に苦しめられています。
とにかく、今夜彼が見せてくれた、余りにも見事な、見事過ぎる勝利から得た衝撃を、感動を、
どのような言葉を連ねたら、十全に表現出来るというのだろう。
答えが見つからないうちに、こうしてだらだらと、上滑りの言葉を並べて、恥をさらしています。


ただ、井上尚弥の闘いぶりが余りに見事で、その勝利が素晴らしいが故に、
自分が過去に書いたことの中から、改めて思い出したこともあります。

彼が目指すべきゴールは、この試合、この勝利ではない。
井上尚弥だからこそ、世界タイトルのひとつを保持する「タイトル・ホルダー」に
なったことは、あくまで彼にとっては通過点に過ぎぬはずだ。

彼が目指すべきは、軽量級において、現役最強の比類無き存在となることであり、
現状で言えばファン・エストラーダ攻略こそが、一定の到達点と目されるべきであり、
彼や陣営が出した具志堅用高の名よりも、フライ級史上もっとも価値の高い
ミゲル・カントの14度防衛記録更新が、その壮大な夢として語られるべきではないのか、と。


プロ6戦、アマチュア81戦、キッズボクシングの試合を入れても百数十戦の二十歳に、
よく考えれば何を大層な話を押し付けているのだ、という話です。
しかし、必ずしもこう書いて、人に笑われるような話でもないと、そう思ってもいます。

井上尚弥なればこそ。
彼の余りにも大きな才能と、それを支える心身の揺るぎなさを見たからこそ。


久し振りに、これほど壮大な夢を見せてくれるボクサーに出会いました。
そのことに心から感動し、感謝を送りたいです。
井上尚弥、おめでとう、そしてありがとう。



コメント (6)
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