さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

熱戦・苦戦・凡戦・停電  山中慎介新王者に!

2011-11-06 21:55:53 | 関東ボクシング


ただいま国立代々木競技場第二体育館より帰ってまいりました。
今日は激闘あり凡戦ありヒヤヒヤあり、おまけに停電あり、
なんとも起伏の激しい大変な興行に当たってしまいました。
ファンとして、その場にいたことを自慢げに語れるような試合が、
同時にきわめて珍しい話の種でもある、というのも珍しいことです。

私が個人的に「この日のメインはコレ」と認定していた
山中慎介vsクリスチャン・エスキベルは、予想以上の激戦となりました。
関東以外放送がなく、G+の録画放送も翌週末という今回の興行ですが、
ことこの試合だけはそんな扱いはあり得ん、と思ってはいたものの、
実際には期待以上のスリリングな攻防が切れ目なく続き、
きわめて満足度の高い試合でした。
以下、興奮しつつなんとか取ったメモで、展開を記します。
細かいところ間違いもあるやもしれませんがご容赦を。まあ毎度のことですが(^^;)


初回、山中はいつも通りバランスの良い構えから左ストレート。右リードも出す。
2回、エスキバルの右に山中が左を返し、エスキバルが一瞬ぐらり。
場内一気に沸くも、直後に右アッパーが来て山中がダウン、と見えたがスリップの判定。
場内一気に静まる。エスキベル、只者ではないことを一瞬で示しました。
3回も山中。4回はエスキベルが右から攻め、山中は少し見ていた感。
途中採点は39-37×3で山中リード。

5回、若干、両者が踏み込みを深くし、距離が縮まった印象。
山中のスリーパンチがヒット。左ストレートも決まる。
6回、山中の強い左が二度決まり、場内が沸いた直後、エスキバルが強烈な右。
両者激しい攻防を繰り広げた終了間際、山中の左から右でエスキバルが尻餅。
スリップ気味にも見えたが山中のパンチが当たっていて、ダウンの裁定。
7回、疲労の見えるエスキベル。山中の左カウンター、追撃で攻勢。
山中の左が再三決まり、これはいよいよ倒せるか、と思ったのですが
しかしまたも粘るエスキベル、攻め立てる山中が足を滑り加減のところに右。
これまたパンチが当たっていて、ダウンの宣告。
8回は山中が足を使って省エネ。明白に優勢だが楽ではない。
途中採点は78-73×2、79-72で山中。
最後の採点は、7回、山中がダウンするまでを10-8でリードと見た数字のよう。

9回、山中はリズム重視で動き、要所で左右左のスリーパンチ。
10回、山中が左で突き放す展開。上下に左ストレートを散らす。
エスキベルは見るからにきつそうだが、右のカウンターは鋭く重い。
採点とは別問題で、試合の緊張が切れない闘いが続く。

そして11回、開始直後にとんでもないトラブル。なんと照明が突如消える。
数分中断、ニュートラルコーナーに分かれた両者、山中は屈伸運動をし、
エスキバルはというと腰を下ろして座り込んでしまう。
ダメージのあるエスキバルにとり、もう休憩できるからどうとかいう段階ではなかったか。
私は、休憩を取ってしまったエスキバルを今から攻め直して倒すのは無理か、と思ったのですが、
連打で山中が攻勢、エスキバルが右目を押さえてダウン。
再開に応じるも山中が厳しく詰めて、左がまたエスキバルの右目に当たる。
エスキバル、目だけではないダメージに耐えかねてとうとう座り込み、レフェリーストップ。
場内大歓声の中、山中が見事な王座獲得となりました。


いや、本当にこれは素晴らしい試合でした。
世界バンタム級の上位同士にふさわしい熱戦と決着に、山中応援団だけではなく、
場内から「万歳」コールが上がりましたが、それも納得の試合内容でした。
これが関東のみ放送とはいかにも勿体ない。山中の故郷滋賀県に是非中継してほしかった。
もちろん関西全域にも、いや、全国津々浦々にも。そう思わずにいられない試合でした。

この試合が空位の王座決定戦になった件については、批判的な見解が聞かれ、
私もそれはひとつの意見として正しいとは思います。
日本のボクシング界にはこうした疑問を、時に業界との摩擦を覚悟してでも論じる
ジャーナリズムの不備という問題がありますが、しかしそれとはまた別の話として、
このカードのレベルと、実際終わってみて振り返った試合内容の素晴らしさは、
リング外で渦巻く「とやかく」「あれこれ」の意味を無に帰してしまうものだった。
それもまた、確かな事実でした。山中慎介には本当におめでとうと言いたいです。

最後にちょっとだけ自己満足。いやあ、見に行って良かったです(^^)



さて、この他の試合について。
前座で帝拳の若手ホープ鈴木武蔵が9戦目で初黒星を喫しました。ちとびっくり。
相手は10勝(6KO)3敗1分の久保幸平という好選手で、6回終了間際に
まともに打たれた鈴木がダウン寸前に陥ったところでゴングに救われたのですが、
ダメージ甚大な様子を見て帝拳陣営が即座に棄権しました。適切な判断でした。
これ、私が知らんだけで、若手同士の好カードだったのかもしれませんね。
一進一退の熱戦で、どっちも拍手、という感じの試合でした。



フライ級の世界挑戦者決定戦はWBC2位の五十嵐俊幸が同1位ウィルベルト・ウィカブに
3-0の判定勝ち。先日ポンサクレックに敗れたエドガル・ソーサのランクが落ちたらしく、
こういう順位になったわけですが、両者ともその肩書きに、そして次期指名挑戦者として
相応しい試合をしたとは、とても言えない内容でした。
これでも一応、節穴目玉を見開いて試合を見、メモを取りつつ懸命に振り分け採点に
取り組んでいたりもするんですが、正直「採点?わしゃ知らん」と言いたくなる回が散見されました。
かの名優香川照之さんの「この世にはイーブンラウンドなど存在しない」という格言は、
必ずしもというか、やっぱ試合によっては正しくないんやないですか、という心境です。

五十嵐が指名挑戦者として目指すというポンサクレック攻略ですが、現時点では、
かなり厳しい予想をせざるを得ません。
対戦相手のウィカブは、悪いですが凡庸の一語でした。
あれならOPBF王者ロッキー・フェンテスの方が強いでしょう。



形式上のメインイベント、粟生隆寛vsデビス・ボスキエロは、
山中の激闘を見終えて、まあ楽勝防衛を気楽に見せてくれるのかな、という
あくまでこちらの勝手な想像を、豪快に裏切る、ある意味凄まじい試合になりました。

あとから思えば、初回、粟生が厳しく叩くか撥ね付けるか、またはじっくり見るかという
厳しい選択をせずに、割とふわっと、何となく立ち上がってしまったような気がしました。
筋骨隆々のボスキエロは、ガードを高く上げて、というかそこで固めて、
右から打ってきては前にのめってクリンチ、というか組み打ち、という、
いかにも下位のランカー、という風情のボクシングしか出来ないのですが、
粟生が右リートで突き放せず、左はガードされ、ボディを叩いて少し食い止めても
体ごとぶつかってくるボスキエロがまた右を振って押してくる、という繰り返し。
試合展開がクリンチでぶつぶつ切れ、明らかに技術やセンスで上回る粟生が、
荒い相手と「手が合わない」感じの凡戦が延々と続きました。

粟生はこういう下手なのとやらしたらいかんな、業種が違うもんなー、と
ぼんやり思っていたのですが、試合はそういう話では収まりませんでした。
8回終了時点では77-75、79-73,77-76と三者粟生リード。
僅差もありましたが、このイタリアの筋肉お兄さんが終盤落ちるに決まってる、
けっこうボディも入ってるし、と思いきや、そのラスト4ラウンズで
先に落ちてきたのは粟生の方。ボスキエロの右を食い、返しの左も食い、
クリンチに逃れたり、ふらつくような場面が増え、見ていて「うわわ」「危ない」と
何度も叫んでしまいました。
最終回は左を返したが、最後4つのうち、3つはボスキエロが押さえたか?という感じ。
採点は115-113×2粟生、116-113ボスキエロの2-1で
粟生の判定防衛となりました。ついでにさうぽん採点は114-114でした。

粟生が何か負傷でもしてたのならまた違う話になるかもしれませんが、
タイベルト、グティレスという王者クラスを連破した粟生から、立ち上がり、
厳しく相手を撥ね付けるような意志の力をようなものを感じませんでした。
その構えの弱さというか心の隙間に、なりもふりも構わぬ、捨て身の挑戦者が突進してきて、
粟生の一番いやな展開が否応なく続いてしまった、というところでしょうか。

いずれにせよ、この試合は、今朝報じられた米国からのオファーを受諾して
勇躍ラスベガス進出だ、というような景気づけにはほど遠い内容でした。
まあ、粟生は試合による出来不出来の差が激しいタイプなのかも知れませんが。



ということであれこれ賑やかな興行を見終え、満足して帰ってまいりました。
繰り返しますが、やはり山中慎介ですね、今日は。
長谷川穂積以来の、黄金のバンタム級世界王者誕生をこの目で見られて、
非常に満足です。ハッピーです(^^)
改めて拍手を送り、今後のさらなる好試合実現に期待します。

コメント (3)
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