奥田英朗「家日和」

2007年05月26日 | 音楽本
家日和
家日和
2007.4

音楽の紹介本ではなく、文中にロックが出てくるのである。それがまたにたっと笑ってしまう。奥田英朗の最新短編集。新聞のコピーだと確か「家」が舞台でもいいじゃないか、「在宅」小説。というようなもの。

”いいお日和で”という挨拶のごとく”いい在宅日和で”といいたくなるような家での出来事。6つの短編だが音楽が出てくるのは「サニーデイ」と「家においでよ」

「サニーデイ」はインターネット・オークションにはまる主婦の話。最初はピクニック用の折りたたみイスなどを出品しているのだが出すものがなくなって夫の持ち物に目をつける。「YAMAHA FG-180」と「Technics SL10」 これだけでぴんとくる人は相当? 物置でホコリまみれになってるギターとレコードプレーヤなのだ。一応夫に聴くと「老後の楽しみだからダメ」と言われるのだが出してしまう。
 自分に置き換えて、ああ自分のステレオや楽器・CDと夫のカメラ、それぞれオークションものだなあ、などと存在を確認してしまう。うん、へたすると私も夫のカメラをオークションに出してしまいそうだし、CDは夫に処分されてしまいそうだ。

「家においでよ」はふとしたことから別居することになった夫婦。家具を持ち去り妻の去ったがらんとした家で夫は徐々に家具をそろえていくが、封印していた独身時代のロックの趣味も復活するというもの。手放したレコード・プレーヤーを買い実家からレコードを持ってき、しまっておいた「レコード・コレクターズ」のバックナンバーを並べる。ジミ・ヘンのポスターをはり・・ 
 寄り道しなくなったのを不審がられて同僚をつれてくると「おい、トーキング・ヘッズがあるじゃないか。ドナルド・フェイゲンも。ラヴァー・ボーイの”ゲット・ラッキー”だって おれたちの中一の時の一発やじゃない」「今度オレのユーリズミックスとかニュー・オーダーとかもってくるから聴かせろ」と同僚の意外な一面が現れる。 あー楽しいなあこういう会話。 という風な展開なのだが、そこは奥田氏、小気味いいが和みのオチがつく。奥田氏自身けっこうロック好きだと何かで読んだことがある。この部屋は奥田氏の願望かも。

ほかにロハスにはまる妻にお手上げの夫を描く「妻と玄米御飯」など、「空中ブランコ」の上を行くのでは?と思わせるユーモアと茶化しぶりである。どれも40歳前後の夫婦が登場して、日常のそれこそ「家日和」を描いている。
 

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« デヴィッド・パストリアス&... | トップ | music diary 目次 音楽本 »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (hello nico)
2007-05-28 12:52:57
>おい、トーキング・ヘッズがあるじゃないか
ここから面白いですね、私も仲間に入りたい。でも、「レココレ」は買ってなかったわ、「ロッキンオン」や「ミュージックライフ」に「音楽専科」。

実家から送ってもらったLPの中に私らしくないバンド・ラヴァー・ボーイがあって驚きました。そう言えば私買ったわ、すっかり忘れた~
Unknown (ろ~ず)
2007-05-30 00:22:33
>私も仲間に入りたい
 そうなんです。リアルな部屋でそんな会話できたら楽しいでしょうね。ただし展開してるのは妻が去って妻の趣味に彩られたインテリアが消えて可能になった、いわば「男の隠れ家」なんですよね。
blogはいわば仮想マイ・ルームかなあなんて思いました。

「ロッキング・オン」は2年位毎号買ってましたが、まだ納戸にとってありますよ。ラヴァー・ボーイはなんとこの小説で初めて名前知りました。hello nicoさんは無意識に買ってたんですね。奥田氏は59年生まれなんですが、もう少し上の人がこういう小説書いたら、出てくるアーティストは別なグループになってるんだろうなあなんて思いました。お金があれば「書斎」を作ってるかも知れないですね。
Unknown (hello nico)
2007-05-31 13:01:16
>リアルな部屋でそんな会話できたら
う~ん、中学の頃を思い出しました。
男友達の家にみんなで行って当時のヒットしているアルバムを引っ張りだしては、みんなで聞いてました。懐かしー
高校行くとまた違っちゃうんだよね。

ラヴァー・ボーイは一発屋だったような気がします。アルバム買ってからヒット曲はなかったんでしょうね、思い出す機会もなかった。
Unknown (ろ~ず)
2007-06-02 06:35:36
>男友達の家
 ほう、そういう楽しい経験があるんですね。

 趣味で結びつくのは男性の方が強いのではなんて思いました。
 前に載せた「僕の音盤青春記」でも部屋で音楽聴くのがたくさん出てくるけど、みな男同士でした。
今、読み終えた(笑) (タネ)
2007-07-12 00:11:41
確かろ~ずさんが書いてたよなあ
って一本釣りのほう探してました。


ネット・オークション

この主婦と同じことした(-_-lll)
家にあったペコちゃんの人形 
今だったら あんなに高値には(笑)

服 靴 本  あるときからパタっと売れなくなって・・
でも当時 売っても買ったほうも多かったわ
( ̄。 ̄)~゜゜
おもしろかったでしょ? (ろ~ず)
2007-07-12 18:28:42
音楽の話がとてもおもしろかったので、こっちに載せたんです。

>ペコちゃん人形
 そうだね、でもマイナス評価でやっぱり高いかも。
 オークションはなにか包装とか面倒な気がして手を出してはいないんです。

でも奥田氏、あの医者シリーズより、さらに弾けてる気もしますね。「玄米御飯」なんてむふふ、と含み笑いしてしまいます。
うん!大笑 (タネ)
2007-07-12 20:24:37
ああ、一人暮らしを憧れてる人が読んだら
実践するね、これ読んだら(笑)

わかる!「ロハス」って表現した時点でもう
いや~な予感するんですよ。

リサイクルとか原始復古(なんじゃそれ)とかじゃない

あれが実践できるのはあるステージ以上の人だもんね

  ロハスなら地元中学だろう、歩いて行けよ、
大笑いしました。
ほんとそーだもん
在宅 (ろ~ず)
2007-07-13 01:02:45
私もあこがれますよ「マイ・ルーム」
しかし「マイ・ルーム」を手に入れてもそこの趣味の品々を妻、もしくは夫にオークションされてしまう、というオチがつくかな、この在宅生活だと。

原始復古・・ なんか勇ましい響きがしますね。

>あるステージ以上
 なるほど・・  それかな。部屋はすっきりしたリビングで、決して「私の部屋」的なもんじゃないですね、イメージとして。

この短編集、ドラマ化したらおもしろいだろうね。

コメントを投稿

音楽本」カテゴリの最新記事