恋はもうもく

はいあがってくるしずけさをうたでみたすー

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0520.一月、雪が降った日のこと

2017年05月21日 00時44分09秒 | 色恋沙汰α
慶ばしいことがあった。
一月のこと、しばらく妻が不在で一人の夜だった。久しぶりに大きな音でレコードを聴く。jet to blazilを聴いて、大きな音で、そしたらずっしりとした低音とズシャーと鈍く歪んだギターの音がした。こんなにオルタナとたいうかグランジみたいな音だったかと思った。maritimeのライヴが音源よりずっと骨太で、ロックな音だったことをなんとなし思い出した。
昔、うちに遊びに来た板さんが、こんなに音出して大丈夫なの?って言った。一人で暮らした時間(と先生と暮らした時間)が長かったので、自然、ステレオのボリュームは上がりがちになっていた。妻と暮らすようになって、ステレオのボリュームの大きさを自覚した。暮らしに会話があったから。
久しぶりに大きな音で聴くと我が家のステレオはいい音がした。無いなりに金をかけたから。
一週間あまりが経って妻が帰ってきた。子どもが生まれました。

率直に、感動しました。はじめの検診は一緒に行こうって、妻と行ってそれでエコーを見た。はじめはバクバクと速い収縮を繰り返す丸い塊があって、これが心臓ですと先生が言った。その傍らに小さな丸があって、それが身体になるのだと言う。収縮を繰り返す心臓の存在感は説明しがたく、心臓すごいと思ったし、「生きているものがここにある」って思った。ばくばくばくばく。目頭が熱くなった。

「指吸ってますね。」「おちんちん隠してますね。」その後も何度か検診に帯同した。生きてるものがいた。安定期に入るまでは人に言わなかった。料理と洗濯と掃除、仕事の後は家事をした。妻は、肉や、何かテラテラした見た目のものは食べなくなった。餃子は食べた。餃子なら食べられると言って、それなら、と色んなものに洗うようにお酢をつけて食べた。数週間だかして体調が安定してくると、また料理や洗濯は妻に甘えるようになった。
十月にMATSURI というイベントに出て、それからライブはやっていない。ひっそりと産休に入った。そのまま消えてしまうことが少しこわいように思った。思って、それで、rebel and summerでもスタジオに入った。もうバンドは東京スーパースターズしかやっていないという体だったので妻には内緒だった。休日のない仕事はその間も続く。

夜にご飯を食べると眠たくなる。それは今もそう。赤ん坊を迎える準備はなかなか進まない。眠たくて申し訳ない気持ちになる。結婚式を控えた時もそうだったし、だけど悪い雰囲気を作っても何一ついいことがない。だからすこしでもよい生活を回せるようにとりとめのない話をしたし、あるいは言葉にしなかった。なるほど最小の社会だし、やっぱり、社会はそういうものだと思う。少しでもよい生活をしたい。

夜中の二時に病院に行く。「まだ子宮口開いてないですね。」って言って、妻を病院に残し一度は自宅に帰った。午前十時を回ったころ連絡があってまた病院に向かった。雪が降っている。妻は、もう分娩室に入っていて、強い陣痛を繰り返していた。十二時二十七分に生まれた。

感動した。こういうふうに新しいものが生まれるのだ、って率直に感動した。何もないところから、ではない。何億の内の一つの精子が、一つの卵が排卵する機を逃さず受精して一つの受精卵になる。一つの細胞、それに栄養が送られて、あのばくばくとした心臓になり、ぱたぱた動いた手足になった。エコーで見ていた。それにまた栄養が送り続けられて、この温かさとこの重たさになったのだ。頭では分かるけれど、保健の授業で習ったし、だけど目の当たりにするとそれはもう理解の範疇を越えたことで、ただただ「命、すごい」と思った。
一つの受精卵の質量って実感からすれば限りなく0に近く、誤差の範囲内の存在だ。そうではないと分かってはいるけれど、実感としての理解は「何もないところから新しいものが生まれた」だ。そんなことは今までに経験したことがないし、人智を超えたことだし、だから正確には「感動した」というより「理解できない衝撃を受けた」だ。今まで生きてきた中で一番ショッキングな出来事だった。その衝撃は温かさと重たさになって、それで確かに自分の両手に抱えている。涙が出た。
これが、七十億、ある。それは今まで経験した、あるいは考えた、全ての道徳に勝る感覚だった。善悪の判断も今のところ辿り着かないような圧倒的に非凡な瞬間が、ある。どれだけ祝福を受けたとか、望まれたか望まれなかったかとかそんなところはもう関係がない。その圧倒的に非凡な瞬間を超えて、当たり前のように七十億の人がいる。それは鳥肌が立つような感覚で、頭の容量を越えた。涙が出た。無駄にしないでくれよって思った。全うしてくれよって思った。それはこの子だけではなくって、自分も含めて、七十億全部がそう。私たちは、全うしなくてはならないのだ。
生まれるということ。
今まで生きてきた中で二番目にショッキングなことはなんだろうって思ったら人が死ぬことだな。そりゃそうか、と妙に納得する。

というのが一月の話。赤ん坊は、今は四ヶ月になって、一昨昨日首が座った(?仰向けから両手を引っ張ったら首がついてくる状態になった)。一昨日寝返りを打った。視認できる距離は日ごとに延び、すくすくと育っています。祝福を。
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1 コメント

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どうしてもおめでたいから。 (にしのなお)
2017-09-01 23:28:12
今更ながらおめでとう!
いつもお母さんを通じて色々伺うばかり。
どんなお父さん振りなのかは、なかなか想像できないんだけど
楽しんでいますか。

帰省に折には、是非お子さんに会いたいなぁ!
できれば赤ちゃんのうちに(o^^o)
うちはすでに赤ちゃん期を脱した二児が
それでも日々進化を遂げながら親を楽しませ、
いや困らせてもくれているよ。
どうしてもおめでたいからコメントしました。では。

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