アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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NHK「あさイチ」に抗議した石垣市長・議会の狙いは何か

2019年09月21日 | 沖縄・石垣・宮古・離...

     

 沖縄県石垣市議会が17日、自衛隊配備問題を扱った情報番組「あさイチ」(写真左)に関して、NHKに抗議し訂正を求める決議を賛成多数(賛成=与党11、反対=野党8)で可決しました。NHKは18日、同番組内で「誤解を招かないよう配慮すべきであり、説明が足りなかった」と釈明しました(19日付琉球新報)。この問題の核心は何でしょうか。

 石垣市議会(与党)が問題にしたのは、8月26日放送の「あさイチ」が陸上自衛隊配備問題を取り上げたさい、配備予定地から1・6㌔の川の映像に重ねて「配備予定地周辺は川などが流れる水源で、石垣島の水道水の8割をまかなっている」と音声で流したのに対し、映像の川が農業用ダムの水源であることや1・6㌔地点は周辺ではないなどとし、「事実と異なる」とクレームをつけたものです。

  議会の決議に先立ち、中山義隆市長(写真中)は番組翌日の8月27日、ツイッターでNHKを批判し、同29日には東京のNHKに出向いて直接抗議するという異常な行動をとっていました。市議会与党はこれに連動して「抗議決議」を強行したものです。

  議会が特定の番組に抗議決議をあげるとすれば、「すぐに訂正を求めないといけない切迫した事情があるなど相当に慎重な対応が求められる」(山田健太専修大教授、18日付沖縄タイムス)ことは言うまでもありません。今回の「あさイチ」の報道がそれに該当しないことは明らかです。

 陸自配備によって同島の水道水の約8割を賄う於茂登山系の水源に影響を及ぼすことは以前から地元住民が懸念しているところです。番組が映した川が同山系の川の1つであることに変わりはありません。「1・6㌔」についても、決議の反対討論で野党議員が、「1・6㌔は私にはすごく近く感じる」(18日付琉球新報)と述べたように抗議に値する問題ではありません。

 今回のNHKへの抗議・訂正要求が、中山市長と市議会与党が一体になった報道機関への圧力であることは明白です。その狙いはどこにあるでしょうか。

 「抗議決議」は「あさイチ」が、「自衛隊施設が周辺地域の水質を汚染するとの誤った前提」に立っているとし、そのうえで上記のような口実をつけて批判しています。すなわち、「自衛隊施設が周辺地域の水質を汚染する」ことを打ち消し、汚染に不安をもつ市民の声を抑え、自衛隊配備に反対する住民運動(写真右)をけん制する。そこに中山氏や市議会与党の狙いがあることは明らかです。
 したがって問題の核心は、「自衛隊施設が周辺地域の水質を汚染する」ことがはたして「誤った前提」なのかどうかです。

 自衛隊施設は言うまでもなくは軍事基地であり、なかでも石垣島に配備されようとしているのは対艦・対空ミサイル部隊です。軍事基地が周辺環境に重大な影響を及ぼし、とりわけ水資源の汚染が深刻であることは周知の事実です。

 たとえば沖縄タイムスは、「基地から汚水30万リットル 沼に流出」の見出しで、「青森県東部にある姉沼に2017年10月、隣接する米軍三沢基地から汚水30万リットルが漏れ出す事故があったことが分かった。…姉沼からは米軍が飲料水を取水している」(2月20日付)と報じました。
 沖縄の嘉手納基地においても、1998年から2015年にかけて基地内で計4万リットルのジェット燃料などの流出事故が発生していたことが、ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏の調査で明らかになっています。

  こうした環境・水質汚染は、軍事基地が平和に逆行するだけでなく、住民生活に深刻な影響を及ぼすものであることを示しています。

 日本会議と関係が深いといわれる中山市長とその与党が「あさイチ」を攻撃した狙いは、こうした実態を隠し自衛隊基地建設を強行するところにあります。「石垣島では、自衛隊配備について今後も議論されていくことだろう。今回のようなことがボディーブローのように効いていくことを(中山氏や与党は―引用者)意図しているのではないか」(砂川浩慶立教大教授、18日付琉球新報)と指摘されるゆえんです。

 時を同じくして、自衛隊基地増強が計画されている宮古島では、下地敏彦市長が「スラップ訴訟」で市民に圧力をかけようとしました(批判を浴びて一応撤回)。石垣島と宮古島で同時に起こったこうした事態は、自衛隊基地推進派が首長や議会の立場を悪用して基地反対の世論・運動を抑圧しようとするものであり、絶対に容認することはできません。


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