アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

若者の選挙争点意識にみるこの国の危うさ

2021年10月30日 | 政治・選挙

    

 選挙の若者の投票率を上げるため、飲食店で割引を受けられる「選挙割」などの取り組みが若者たち自身によって行われています(写真)。自主的な活動は貴重ですが、若者の投票行動については、もっと考えるべき問題があるのではないでしょうか。

 若者は今回の衆院選で何が争点だと考えているか―。それに関する1つの調査があります。日本財団がネットで、10代の有権者916人に「31項目」を示し、衆院選で重視する度合いを点数にして集計したものです。その結果、上位10位は次の通りです(21日付中国新聞=共同)。

①保健衛生②経済成長と雇用③子育て・少子化④災害対策・復興⑤子どもの貧困⑥教育・学校⑦子どもの権利・保護⑧税金・税制度⑨社会保障・ヘルスケア⑩成人・労働者の貧困

 その特徴は一目瞭然、すべて直接自分や家族の生活にかかわるものです。平和や近隣諸国との関係、在日朝鮮人や外国人実習生など在日外国人の人権に関する項目はありません。 

 もともと日本財団が挙げた「31項目」にそうした選択項目がなかったのかといえば、そうではありません。日本財団のHPで全項目を見ると、「外交政策・他国との関係」は26位、「日本へ移民・難民・就労・差別など」は28位となっています。

 この調査結果だけで断定することはできませんが、10代の有権者の政治的関心がきわめて内向き、生活保守主義的であることは確かでしょう。それは自身や家族の経済的窮状の反映にほかなりませんが、そうだとしても、これでいいのでしょうか。

 この傾向はもちろん、若者たちだけではありません。たとえば朝日新聞の世論調査(10月21日付)でも、「衆院選で最も重視するテーマ」の第1位は「社会保障」(29%)、2位「景気・雇用」(27%)、3位「新型コロナウイルス対策」(18%)で、「外交・安全保障」は9%にすぎません。これは近年の国政選挙に共通の傾向です。

 生活保守主義、内向き志向は日本人・日本社会全体の特徴であり、若者の意識はその反映にほかなりません。

 自民党政権による生活・雇用破壊から暮らしを守ることはもちろん重要です。しかし、国政選挙は本来、国の進路を問うものではないでしょうか。

 アメリカ従属の日米軍事同盟(安保条約)を強化し、中国、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)敵視をあおり、「戦争国家」へ突き進んでいる自民党政治に対し、それとは根本的に違う進路を示し、それを争点とする。それが国政選挙のあるべき姿ではないでしょうか。そうであってこそ、若者の政治的関心が高まり、投票率も上がるはずです。

 内向きの生活保守主義選挙を繰り返しても、日本の政治・社会の基底は変わらないと考えます。

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