アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「靖国見せしめ弾圧事件」の不当判決が示すもの

2019年10月14日 | 戦争の加害責任

     

 日本のメディアが無視あるいは軽視している重要問題は少なくありませんが、これもその1つです。

 昨年12月12日、靖国神社前で、「南京大虐殺を忘れるな 日本の虐殺の責任を追及する」と書いた横断幕を掲げて日本の軍国主義に抗議した香港の男性(郭紹傑<グオ・シウギ>さん、写真左)と、その姿をビデオ撮影していたジャーナリストの女性(嚴敏華<イン・マンワ>さん)が、「建造物侵入罪」で逮捕・起訴(10カ月勾留)された事件(「靖国抗議見せしめ弾圧」事件)の判決が、今月10日、東京地裁(野澤晃一裁判長)でありました。

 判決は、郭さんが懲役8月、嚴さんが懲役6月の「有罪判決」(執行猶予)でした。予想されたこととはいえ、きわめて不当な判決で、絶対に容認することはできません。

 2人は即日控訴しました。今は香港へ送還のため東京拘置所から品川入管に移されています

 「12・12靖国抗議見せしめ弾圧を許さない会」は10日、抗議声明を出しました。要旨はこうです。 

 被告人両名は、「正当な理由なく靖国神社の敷地内に侵入した」として起訴されたが、同神社外苑は、日常誰でも自由に出入りできる場所である。郭さんはそこで「南京大虐殺を忘れるな」と書かれた横断幕を広げて、日本軍国主義、南京大虐殺、靖国神社A級戦犯合祀に対する批判のアピールを行ったのであって、これは正当な言論・表現の自由に属する行為である。また嚴さんは、ジャーナリストとして事実を報道するために、郭さんの抗議行動をビデオで撮影していただけである。
 かれら2人の行為はなんらの犯罪をも構成せず、逮捕・起訴自体が不当だ。被告人両名は無罪である。

 しかし裁判所は、公判において、従来の同様の抗議行動で逮捕・起訴された事例がないことなどの重要な証拠を採用せず、いたずらに形式的な論理を用いて有罪判決を下した。さらに裁判所は、被告人両名に対する度重なる保釈申請をも却下し続けて、結果的に10カ月にわたって身柄を勾留し続けるという、重大な人権侵害を行った。この長期勾留は、人質司法・実質的な刑罰の先取りであり、決して許すことはできない。

 今回の2人への逮捕・起訴、長期勾留はまったく常軌を逸したものであった。それは、日本の侵略や植民地支配の歴史的事実を否定し、歴史修正主義の姿勢をますます強化する安倍政権の政治姿勢に対する、警察・司法による忖度だったと断じざるを得ない。本日の判決もまた、裁判所がそのことを追認したものである。われわれはこれを厳しく弾劾する。

 この事件の経過、問題点はこの声明に示されている通りですが、もう1つ見逃すことができない問題があります。それは、2人が香港(中国)人だということです。
 仮に日本人が同じことをしたら、はたして即座に逮捕・起訴され、10カ月も勾留されたでしょうか。今回の事件は2人が中国籍であることを抜きには考えられないでしょう。

 日本の国家権力(安倍政権とそれを忖度する警察・司法)は中国籍の2人なら、強引に逮捕・勾留しても抗議運動も起こらないだろうし、そもそも日本のメディア・市民もそんなに騒がないだろうと踏んだのではないでしょうか。市民の中にある“嫌中”を利用したともいえます。
 狙いは、日本における「南京大虐殺・侵略戦争・植民地支配」批判の声・運動の抑圧です。2人はそのための“見せしめ“なのです。

 そして現実は、彼らの思惑通りになろうとしています。日本のメディアは「2人の中国人」が靖国神社で逮捕・起訴され有罪判決を受けたと短く報じただけです(全国紙で10日の判決を報じたのは、「朝日」と「毎日」がともに第3社会面ベタで扱っただけ)。

 「南京大虐殺(写真右)を忘れるな」と自戒し、日本の侵略戦争・植民地支配を追及しなければならないのは、本来私たち日本人自身です。郭さんは私たちに代わってそれを訴え、嚴さんは日本のメディアに代わってそれを報道しようとしたのです。
 2人を支援し、連帯してたたかうことは、日本の歴史に責任を負うべき私たちの責務ではないでしょうか。


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