アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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日朝平壌宣言に背く安倍政権

2018年05月19日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)とアメリカの会談を前にして、安倍首相は相変わらず「拉致問題」を口実に朝鮮に「最大限の圧力を」と言い続け、朝鮮から「1億年たってもわれわれの神聖な地を踏むことはできない」(労働新聞)と猛反発されています。

 安倍首相によって日朝関係は最悪の状態に陥っていますが、安倍政権以前はそれほど険悪だったわけではありません。それどころか、国交正常化へ向けた重要な合意がなされたことがあります。小泉純一郎首相(当時)と金正日朝鮮国防委員会委員長(同)による「日朝平壌宣言」(2002年9月17日)です(写真右)。

  朝米会談を前にして、日本は何をすべきかを考えるとき、日朝平壌宣言を再評価することが重要ではないでしょうか。

 平壌宣言は前文、後文と4項目からなっています。その要点を抜粋します(太字は私)。

           日朝平壌宣言(2002年9月17日)(抜粋)

  両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。

 1、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとした。
 双方は、相互の信頼関係に基づき、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。

 2、日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
 双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道的支援等の経済協力を実施することが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
 双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。

 3、双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。

 4、双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
  双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。

  以上の平壌宣言の特徴は、次の3点だといえるでしょう。
 ①    日本側は過去の植民地支配を反省・謝罪し、国交正常化交渉での経済協力協議を約束(第2項)。
 ②    朝鮮側は「拉致」の事実を認め遺憾の意と再発防止を約束(第3項)。
 ③    すべての基本に「相互信頼」を置き、「対話」と「協議」によって日朝国交正常化と朝鮮半島の非核化、北東アジア地域の平和と安定をすすめることで合意。

 朝鮮側は平壌宣言を「近代100年の朝日間の歴史で初めての重大な出来事」(2002年10月30日の第12回日朝交渉で。高崎宗司著『検証 日朝交渉』平凡社新書)と高く評価し、「宣言で述べられている順序にしたがって、国交正常化と経済協力問題を優先的に討議・合意することを提案」(同)しました。

 ところが、「これに対して日本は、拉致問題と核問題は日本にとって最優先事項だと反論」しました。そして、「最後に、北朝鮮側は次回の日程について提案したが、日本は即答しなかった」(同)のです。

 平壌宣言に対してどちらが誠実な態度をとったかは明白でしょう。日本側の態度の急変ともいえるこうした背信の裏には何があったのでしょうか。

  「小泉首相が帰国すると、国民の最初の反応はよくやったというものであったが、八人が死んだという証拠があるのか検証せよ(注・朝鮮は拉致した13人にうち8人は死亡したと発表-引用者)という主張が運動団体(佐藤勝巳会長の「救う会」-引用者)から出されると、変化が起こった拉致問題を無視して日朝正常化を主張したと、国交正常化運動関係者を攻撃中傷する動きも起こった。田中均局長(平壌宣言を事前折衝した外務省アジア大洋州局長―引用者)は国賊とまで言われるにいたった」(和田春樹著『北朝鮮現代史』岩波新書)

 画期的な平壌宣言を反故にするような日本政府の言動。その背景には、反共・反朝鮮団体の扇動と、それへのメディア、世論の同調があったのです。

 以後、日朝交渉は難航し、安倍氏が小泉政権の官房長官となり(2005年10月)、さらに第1次安倍政権が誕生(06年9月)するに至って、国交正常化交渉も拉致問題も完全にデッドロックに乗り上げました。

 そして今、歴史的な好機が訪れようとしているにもかかわらず、「拉致問題が進展しない限り圧力をかけ続ける必要がある」と言い続ける安倍首相。それが日朝平壌宣言に反し、国交正常化に逆行していることは明白です。

  安倍首相を1日も早く退陣させ、日朝平壌宣言に立ち戻って、相互信頼に基づく国交正常化交渉を始める必要があります。

 

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