アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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翁長知事はなぜ今すぐ「撤回」しないのか

2017年03月27日 | 沖縄・翁長・辺野古

    

 翁長雄志知事が25日の「辺野古県民集会」に初めて参加し(これまで参加しなかったことが驚きですが)、「あらゆる手法をもって(埋め立て承認の)撤回を、力強く、必ずやる」(26日付琉球新報)と述べたことに対し、「屈しない決意の表明」として「高く評価」(同日付琉球新報社説)するという論調があります。果たしてそうでしょうか。

 最大のポイント(問題点)は、翁長氏が撤回の時期を明言していないことです。というより、直ちに撤回しようとしていないことです。「翁長氏は撤回時期については歯切れが悪く、すぐに踏み切れるかは不透明」(26日付中国新聞=共同配信)。琉球新報(同日付)も「今後の焦点となるのは、知事がどのタイミングで撤回に踏み切るかだ」としています。

 翁長氏が撤回に踏み切らないことに関連して、「実際に撤回に踏み切るには法的に妥当な根拠に基づくことが必要条件だ」(同琉球新報)とか、「焦点は撤回要件の確立と、処分へと踏み切る時期に移る」(26日付沖縄タイムス)など、撤回にはなにか新たな「根拠」「要件」が必要だとするの論調があります。これは誤りです。

 撤回に新たな「根拠」や「要件」は必要ありません。翁長氏がその気になれば直ちに可能です。

 それを再確認するために、「撤回問題法的検討会」(弁護士・新垣勉氏、沖縄大学長・仲地博氏ら5人)が翁長氏に提出した「意見書」(2015年5月1日)=写真右から、重要なポイントを挙げます(太字は引用者)。

 ☆「撤回」とは…「埋立承認後の事由を理由に、埋立承認の効力を消滅させる行政行為」

 ☆「埋立承認後の事由」とは…「『埋立承認後の事由』には、埋立承認後に就任した知事(以下、新知事)のなす新たな公益判断も含まれ、新知事は、埋立承認が撤回により生じる国の不利益を考慮しても、撤回により生じる沖縄県の公益が高いと認められるときには新たな公益判断に基づき、埋立承認を撤回することができる」

 ☆「公益」とは…「撤回されることにより生じる公益の中核は、新基地建設を断念することにより、辺野古の埋立海域の豊かな自然が保全される利益及び沖縄に長期間にわたって機能を強化された海兵隊基地が存続しないこととなる利益である。…沖縄における豊かな自然の多様性を保全することは、沖縄県の諸施策の中核をなすものであり、公益判断の重要な柱をなすものである」

 ☆結論…「沖縄県知事が行う埋立承認の撤回が公益適合性を有すること、撤回以外に沖縄県民の公益を保全する道がないことは、明白であるから、沖縄県知事が撤回判断をなすことにつき、法的障害は何ら存しない

 つまり、承認後に就任した新知事が、新基地の断念によって沖縄の自然を保全し、海兵隊基地を存続させないことが県民の利益に合致するという公益判断を行えば、撤回は法的に可能だということです。翁長氏は「辺野古新基地阻止」を公約して新知事になったのですから、その時点で「撤回」は可能なのです。それ以外の「根拠」や「要件」は必要ありません。

 「県民投票」は、「県民の民意を再度明確に示(す)」(新垣勉氏、21日付沖縄タイムス)ものではあっても、けっして「『撤回』を行うための不可欠の前提ではない」(同氏、同22日付)のです。

 安倍政権は「4月中にも辺野古の埋め立て工事を本格開始する見込み」(26日付琉球新報)です。撤回が遅れれば遅れるほど、工事は進み、「損害賠償」は膨らみ、「裁判で勝ち抜く環境」(新垣氏)は悪くなる一方です。「焦点は知事がどのタイミングで踏み切るか」などと悠長なことを言っている場合ではありません。
 翁長氏は今すぐ撤回を表明しなければなりません。それは法的に可能であり、それを行わないのは、知事選の公約違反です。

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